Safari Online

SEARCH

CULTURE カルチャー

2024.07.23


【フランシス・フォード・コッポラ】尽きない情熱で映画に携わる巨匠の業とは!?

『ゴッドファーザー』や『地獄の黙示録』などの名作で知られる映画監督、フランシス・フォード・コッポラ。アカデミー作品賞・監督賞をはじめ数々の受賞歴をもち、85歳となった今も精力的に新作を手掛ける偉人を、モーリーはどう見ている!?

【フランシス・フォード・コッポラ】尽きない情熱で映画に携わる巨匠の業とは!?2007年、ローマ国際映画祭で開催された新作『Youth Without Youth(邦題:コッポラの胡蝶の夢)』のワールドプレミアに出席したコッポラ。10年ぶりの監督作品ということもあり、サインを求めて多くの人が殺到した

コッポラは新作のために、所有していたワイナリーを売却して資金を作った。彼はこういう大博打を何度もやっていて、当たるも外れるも平気な人。ルーカスなどとも仲がよく、俺たちが映画を変えるという'60年代型の理想がありました。彼のほとんどの作品にはなんらかの自叙伝性があり、自分は何者なのかを問う行為と映画を撮ることが一致しています。試行錯誤は覚悟のうえ。バジェットも気にしない。デジタルを信じておらず、アナログな手作業にこだわる。ただ、今回は『地獄の黙示録』にフォーカスしたいと思います。やはり画期的だし、現代に通じるすごみを感じる作品です。

少し技術的な話ですが、コッポラは学生の頃、ソ連の映画監督のエイゼンシュテインという人を研究し、大きな影響を受けています。偶然にも、僕も大学で学びました。ロシア語を直訳したような、非常に分厚くて読みづらい理論書があってね。彼が提唱したモンタージュ理論というのをコッポラも実践しました。モンタージュは、ショットを編集して繋ぎ合わせることで、人の無意識に訴えかける手法。そうすることで、心の奥底にあるエネルギーに触れられるから。ただ、人間の無意識を動かすことは地球の歴史を動かすこと……といった誇大妄想的な話にも繋がっていく。ヒトラーのプロパガンダ映像などは、これに多大な影響を受けています。ハリウッド作の反共映画やヒッチコックも多用しました。コッポラもこれを全力でやった。しかも時代的にサイケデリックです。LSDのような薬による幻覚体験と、映像が見せる幻影というのは、当時は完全に繋がっていました。

コッポラは『地獄の黙示録』で幻影を作ろうとします。ドキュメンタリーのように社会の現実を訴えるのではなく、全くの絵空事を通してなんらかの真理を描こうとした。それでデニス・ホッパーのような薬漬けの狂気的な人を連れてくる。マーティン・シーンを追いつめ、泣き喚きながら演技させたりもした。そういうカオスやサイケデリックによって、コッポラ自身の時間の流れや感覚を歪めようとしたんです。そこから垣間見えるものを見たいわけです。

彼はナラティブ(物語)を積極的に破壊し、それによって別の感覚を生み出します。時間の流れや感覚を遮ることで、幻影のように別の感覚を引き起こしている。映画の初期にエイゼンシュテインが編み出した手法を熟成させ、ヒッチコックとも違う形で実践した。そこに彼の作家性みたいなものが出てきます。

ベトナム戦争を描くにあたって、当時のアメリカ社会には、これ以上は不快という一線があったと思います。コッポラも商業映画の監督としてよくわかっている。そのスレスレを美しく見せ、観客を惹きつけていく。本当の戦争はもっと残酷だけど、映画では彼の美意識で取捨選択されています。少ない素材で残酷さや狂気を演出し、観客にそう感じさせる。非常に幻影的です。また、彼は戦争の告発ではなく、人に内在する普遍的な狂気を描いた。非常に自叙伝的です。

コッポラはいくつになっても、最初の頃と同じような無茶苦茶ぶりで映画を作る。でも、もしかしたらアメリカだから可能なのかもしれません。普通はお金が集まらない。そういう意味では、合理化が進む業界における最後のアナログ人。野太くクレイジーで、芯が通っていて、最後までフィルムを追求している。最近の記者会見では「映画の歴史なんて短い。まだまだはじまったばかりだ」といっていました。そんな雄大なことをいえる人、たぶんほかにいない。きれいごとばかりの時代に、毒を含んだコッポラ作品を観ることは、逆説的に癒しになるような気がします。おぞましいのだけど、一貫して美しい。それとやはり出演している俳優がいい。人間が人間を描く以上、それがあってこそと改めて感じます。

数多くの名シーンを
作り出してきた!


【フランシス・フォード・コッポラ】尽きない情熱で映画に携わる巨匠の業とは!?映画『地獄の黙示録』のワンシーン。マーティン・シーンによるこの場面は、2020年に公開されたファイナル・カット版のメインビジュアルになった

【フランシス・フォード・コッポラ】尽きない情熱で映画に携わる巨匠の業とは!?映画『ゴッドファーザー』の撮影風景。中心にいる2人はマーロン・ブランド(右)とコッポラ

娘のソフィアも
映画監督として活躍!


【フランシス・フォード・コッポラ】尽きない情熱で映画に携わる巨匠の業とは!?2004年の第76回アカデミー賞でのコッポラと娘のソフィア。ソフィアが映画『ロスト・イン・トランスレーション』で脚本賞を受賞した。その兄のロマンも、監督・脚本・プロデューサーとして映画界に携わる。長兄は若くして事故で亡くなっている

フランシス・フォード・コッポラの歴史  


【フランシス・フォード・コッポラ】尽きない情熱で映画に携わる巨匠の業とは!?映画『地獄の黙示録』の製作過程を捉えたドキュメンタリー作品『ハート・オブ・ダークネス コッポラの黙示録』は、まさに狂気というべきスリリングな舞台裏を垣間見ることができる。是非、本編と合わせて視聴したい。

気になる話題!
40年かけて構想を練った新作映画がついに完成!

【フランシス・フォード・コッポラ】尽きない情熱で映画に携わる巨匠の業とは!?最新作『メガロポリス』がついに完成し、カンヌでプレミア上映された。NYを思わせる荒廃した都市を舞台に、建築家(アダム・ドライバー)が未来的なユートピアの再建を目指して奮闘するSF大作。その評価は賛否両論で、まだ配給元も未定だ。

【フランシス・フォード・コッポラ】尽きない情熱で映画に携わる巨匠の業とは!?教えてくれたのは
[モーリー・ロバートソン]
Morley Robertson
1963年、NY生まれ。日米双方の教育を受け、東京大学とハーバード大学に現役合格。現在はタレント、国際ジャーナリスト、音楽家、DJとして各方面で幅広く活動している。最近はジャズコードを中心にギターの腕前をアップデイト中。

この偉人になりたい度数
75/100
ピリピリした現場をちょっと覗きたい!?
「憧れはあるけど、あの作業と重圧に胃が痛くなってリタイアしそう。末端の業務を請け負うくらいがちょうどいいかな。撮影現場にケータリングを届ける人とか」

 

 “アメリカ偉人伝”のラインナップ
【モハメド・アリ】伝説的ボクサーが名試合以外に残した価値とは!?
【ジョン・レノン】今も絶大な影響力をもつレジェンドの実像とは!?
【ジェームス・ブラウン】音楽史に輝くファンクの帝王の光と陰とは!?
【エイブラハム・リンカーン】アメリカ史に輝く偉大な大統領の意外な影響とは!?
【ビリー・アイリッシュ】今を象徴するアーティストの行き着く先とは!?
【ウディ・アレン】映画を変えたレジェンドの真実の姿とは!?
【ビル・ゲイツ】ITの新時代を拓き巨万の富を得た男の目指すものとは!?
【マーティン・ルーサー・キング・ジュニア】人種差別の解消に尽力した偉人の語られざる顔とは!?
【アーネスト・ヘミングウェイ】タフで男らしい文豪の隠された真の姿とは!?
【マーク・ザッカーバーグ】IT界を牽引する若き天才はどう世界を変えた!?
【マドンナ】お騒がせなポップの女王の正体とは!?
【クエンティン・タランティーノ】映画ファンの心を掴んだ男の本当のすごさとは!?
【カート・コバーン】カリスマの音楽はどのようにして生まれてきた!?
【マイケル・ジョーダン】バスケを愛しバスケに愛された男の時代性とは!?
【ボブ・ディラン】世界中の人々を魅了し続ける男の実像とは!?
【マイケル・ジャクソン】世界中に多大な影響を与えた真のすごさとは!?
【スティーヴン・スピルバーグ】世界的巨匠が作品世界に込めた“ある視点”とは!?
【ホイットニー・ヒューストン】不世出の歌姫が後世に遺した大きな希望とは?
【マリリン・モンロー】世界を魅了したセックスシンボルの光と影とは!?
【ウォルト・ディズニー】夢と希望の国を作り出した偉人が遺したものとは!?
【スティーブ・ジョブズ】カリスマの“魔法”は世界をどう変えたのか!?
【アンディ・ウォーホル】ポップアートの奇才はなにを企み、なにを夢見たか!?
【ジョン・F・ケネディ】第35代アメリカ合衆国大統領の真実の顔とは!?
【イーロン・マスク】壮大すぎる夢追い人は救世主かペテン師か!?
【エルヴィス・プレスリー】アメリカの光と影を映し出すロックの王様!

 
Information

雑誌『Safari』8月号 P188〜189掲載

【ブライアン・J・スミス】ドラマ、映画、舞台に自身監督作品まで、ハリウッドに新しい風を吹き込む男!

ブライアン・J・スミスが表紙を飾る
雑誌『Safari』8月号が好評発売中!

『Safari』8月号の購入はコチラ
『Safari』定期購読はコチラ


“アメリカ偉人伝!”の記事をもっと読みたい人はコチラ!

●雑誌・WEB『Safari』の公式TikTokは
こちらからアクセスしてみて!

文=野中邦彦
text : Kunihiko Nonaka(OUTSIDERS Inc.)
photo by AFLO
〈オメガ〉の“プロフェッショナルライン”に注目。復活した“レイルマスター”と 新色の“シーマスター”、心躍るふたつの名作。
SPONSORED
2025.06.27

〈オメガ〉の“プロフェッショナルライン”に注目。
復活した“レイルマスター”と 新色の“シーマスター”、心躍るふたつの名作。

〈オメガ〉を象徴するコレクションとして、1957年に創設された“プロフェッショナルライン”3部作。その中でも“レイルマスター”は、鉄道職員や電気技師といった強い電磁場が発生する場所で作業する人々を耐磁性の高さで支えた名作。そして、“シーマ…

TAGS:   Urban Safari Watches
〈ブランパン〉の名シリーズから新作登場。大人の休日にはシックなダイバーズを。
SPONSORED
2025.06.27

〈ブランパン〉の名シリーズから新作登場。
大人の休日にはシックなダイバーズを。

時計の人気トレンドにヴィンテージスタイルがある。1953年に誕生し、基本デザインを継承する“フィフティ ファゾムス”もそのひとつかもしれない。だがそこに懐古趣味はなく、常に新鮮な魅力を感じさせる。機能美という不変の価値があるからだろう。新…

TAGS:   Urban Safari Watches
リーダーにふさわしい〈グラスヒュッテ・オリジナル〉の一本。端正な機械式時計で仕事にも優雅さを。
SPONSORED
2025.06.27

リーダーにふさわしい〈グラスヒュッテ・オリジナル〉の一本。
端正な機械式時計で仕事にも優雅さを。

クルマやカメラなどドイツの工業製品の高い機能と品質は世界的に知られる。時計も例外ではない。〈グラスヒュッテ・オリジナル〉はその代表格だ。クラシカルなスタイルに決して派手さはない。だが漂う気品は、伝統に培われた揺らがぬ時計作りの哲学と美学を…

TAGS:   Urban Safari Watches
〈パネライ〉の傑作がさらなる進化。タフさと品格を併せ持つエレガントダイバーズ。
SPONSORED
2025.06.27

〈パネライ〉の傑作がさらなる進化。
タフさと品格を併せ持つエレガントダイバーズ。

歴史に裏打ちされた信頼性と機能。そして、存在感を放ちながら、品を保つデザイン性。そのすべてを兼ね備えた〈パネライ〉の“ルミノール マリーナ”は、知性と余裕をまとう大人にふさわしい腕時計だ。その傑作コレクションが今年、大胆な進化を遂げたとい…

TAGS:   Urban Safari Watches
〈エドックス〉の人気ダイバーズ時計が日本限定で登場!“とろやわ”ストラップで夏のビーチを満喫!
SPONSORED
2025.06.25

〈エドックス〉の人気ダイバーズ時計が日本限定で登場!
“とろやわ”ストラップで夏のビーチを満喫!

煌めく太陽に、白い砂浜、青い海。夏のビーチ遊びの季節がやってくる! ラフなビーチコーデの手元だって、やっぱり快適さを求めておきたい。そんな海遊びにはラバーストラップのダイバーズ時計が最適だ。そこでプッシュしておきたいのが〈エドックス〉の日…

TAGS:   Fashion Watches
〈ザ・ブセナテラス〉で過ごす憩いの時間!沖縄バカンスは贅沢でリラクシングなステイを!
SPONSORED
2025.06.25

〈ザ・ブセナテラス〉で過ごす憩いの時間!
沖縄バカンスは贅沢でリラクシングなステイを!

〈ザ・ブセナテラス〉は、日々の疲れを癒し、日常では味わえない贅沢な時間を過ごせる。充実したホテルの設備・サービス、海に面した立地を生かしたマリンアクティビティプログラム。ここは1泊2日くらいでは気づけない、魅力を秘めている。パートナーとと…

TAGS:   Stay&Travel
これでライフスタイルが見違える!新鮮アイテムでいつもの夏をアップデイト!
SPONSORED
2025.06.25

これでライフスタイルが見違える!
新鮮アイテムでいつもの夏をアップデイト!

いよいよ待ちに待った夏。バカンスを楽しみにしている人も多いだろう。たとえ予定がなくても、気温の上昇とともに気分をぐっと上げていきたい。そんなときに必要なのが、ライフスタイルをアップデイトするためのアイテムだ。これさえあれば、いつもとはひと…

サンダルは履き心地と見た目のよさで選ぶ!夏に大活躍するサンダルは、〈ロンハーマン〉別注が優秀!
SPONSORED
2025.06.23

サンダルは履き心地と見た目のよさで選ぶ!
夏に大活躍するサンダルは、〈ロンハーマン〉別注が優秀!

夏がやってくると気分も開放的になり、休日はお出かけモードに。街にショッピングに行くのもいいし、たまにはアウトドアで自然の中に身を置くのも気持ちよさそうだ。もちろん、ご近所を散歩する程度で、家でゆっくり過ごすというのも幸せ。で、そのどんなシ…

TAGS:   Fashion
〈ジラール・ペルゴ〉夏の限定モデルが登場!サマーバカンスの相棒は“懐色”の復刻ダイバーズで!
SPONSORED
2025.06.20

〈ジラール・ペルゴ〉夏の限定モデルが登場!
サマーバカンスの相棒は“懐色”の復刻ダイバーズで!

マニュファクチュール=自社一貫生産体制を2世紀以上も貫き続けるスイス、ラ・ショー・ド・フォンの名門時計ブランド〈ジラール・ペルゴ〉。そのコレクションはどれもクラシカルかつドレッシーで気品に満ちたもの。そんなイメージを、文字どおりあざやかに…

TAGS:   Fashion Watches

NEWS ニュース

More

loading

ページトップへ