Safari Online

SEARCH

LIFESTYLE ライフスタイル

2024.06.01


【モハメド・アリ】伝説的ボクサーが名試合以外に残した価値とは!?

ヘビー級のボクサーとして数々の名試合を繰り広げ、“歴史上、最も偉大なアスリート”ともいわれるモハメド・アリ。黒人解放の象徴としての存在感を含めて、今なお多くの人々に熱く支持されている。この伝説的な男を、モーリーはどう見ている!?

【モハメド・アリ】伝説的ボクサーが名試合以外に残した価値とは!?1970年に撮影された、マイアミビーチでトレーニング中のアリ。当時は徴兵拒否による裁判中で、プロライセンスも剥奪されていたが、10月の復帰戦では世界ヘビー級1位のジェリー・クォーリーにTKO勝ちを収めた

先日、格闘ファン向けのチャンネルにトランプ前大統領が出演しているのを見たのですが、非常に知的で穏やかな話しぶりに驚きました。アリもそんな人だったようで、対談した五木寛之が「非常に知的な紳士」と印象を語っています。つまりトランプのヘイトを煽るようなやり方は、アリのパフォーマンスと同じ。人間同士の会話では、そうした仮面を被らなくていいのでしょう。アリはラップ調で相手をこき下ろし、“ホラ吹きクレイ”と呼ばれました。当時の黒人ボクサーはたいてい大人しく、あまり自己主張をしない。でもアリは「俺はハンサムだ、プリティだ」と笑いを取りつつ、相手をこき下ろして試合を盛り上げました。

彼にはとにかく選択肢が少なかった。故郷のケンタッキーにはなにもないし、人種差別もきつい。そんなときにネーション・オブ・イスラム(NOI)に触れました。ある種の新興宗教で、中東のイスラムの系譜ではありません。現在も分派が存在しますが、当初から問題が多く、黒人向けのポピュリズムですね。アリがリクルートされた頃には、かなりの勢いがありました。NOIとの関わりの中でアリはマルコムXに出会います。実質的にNOIを広めていたのはマルコムで、彼の演説や物怖じしない姿勢が人を惹きつけた。マルコムは試合直前にアリの控え室に来て、「神の力とともにリングに上がっていると思ってほしい」といったそうです。アリは白人社会の中で暴れん坊のように振るまうのではなく、黒人を解放する使命感の中で戦うという物語を自分の中で作り、それが精神統一に役立った。思想的なバックボーンというか、生きるマニュアルを得たのだと思います。

その後、ある事情からマルコムXはNOIを破門され、代わりにアリが広告塔の位置に据えられます。教祖の教えに心酔していき、結果としてベトナム戦争への徴兵を拒否する。国と裁判になり、3年間のブランクが生じました。その後、悪名高いプロモーターのドン・キングが仕掛けたのがザイール(現コンゴ)での試合。“キンシャサの奇跡”です。モブツという大統領がひどい独裁者で、イメージアップに寄与すると売り込んだら、莫大な資金が出た。そしてジェームズ・ブラウンなどの黒人ミュージシャンも集め、黒人解放というアリのメッセージや公民権運動などをひっくるめて、パッケージとして大ヒットさせました。

アリが全世界の黒人に支持されたかったのか、それとも公民権を支持した白人にも連帯感があったのか、そのあたりは曖昧です。でもむしろ、そこに彼の純朴さみたいなものが垣間見える。商売人なら打算が働きますから。彼が集中したのは試合であり、後にも先にも格闘家であり続けました。世界に認められてからの彼は次第に変わっていきます。マルコムの弟分から教祖の子分になり、最後に自立したと考えるなら、その成長過程で、自分ができるのは群衆を先導することではないと気づいたのでしょう。そうではなく、黒人たちに「自分の力で奇跡を起こせる」というメッセージを送った。当時、すべての黒人が「アリができるなら自分もできる」と思う瞬間があったそうです。あるがままだったアリは、まるで親戚のように身近な存在だったんです。

彼はカシアス・クレイというのは奴隷の名だという。それで改名したのですが、イスラムの教義以前に、奴隷制の爪痕から自分を解放する意味がありました。つまり制度や法律が変わるのを待たなくても、自分で大爆発を起こして人生を変えられるというインスピレーション。これが黒人社会におけるアリの存在感に繋がります。黒人の貧困問題は現在進行形ですが、そこでのアリやマルコムXへの評価は、我々とはアングルが違います。つまり自分の物語として、感情がこもっている。だから現代においても、アリは熱いアイコンであり続けるのです。

多くの名勝負を
繰り広げてきた!


【モハメド・アリ】伝説的ボクサーが名試合以外に残した価値とは!?1974年にマディソン・スクエア・ガーデンで行われた、ジョー・フレージャーとの試合。3年前に敗れた相手に雪辱を果たし、ジョージ・フォアマンへの挑戦権を手にした

【モハメド・アリ】伝説的ボクサーが名試合以外に残した価値とは!?’76年にヤンキー・スタジアムで行われたケン・ノートンとのWBC/WBA世界ヘビー級タイトルマッチ。判定勝ちで8 度めの王座防衛に成功。アントニオ猪木との“世紀の一戦”から、わずか3カ月後だった

リングの外でも
戦い続けた!


【モハメド・アリ】伝説的ボクサーが名試合以外に残した価値とは!?番狂わせで大勝利したソニー・リストン戦の数日後、マルコムXとともにブロードウェイを訪れたアリ。当時22歳のアリにとって、彼の影響は大きかった

モハメド・アリの歴史  


【モハメド・アリ】伝説的ボクサーが名試合以外に残した価値とは!?

イスラムの教えに従い、積極的に寄付や社会貢献をしたことでも知られる。慈善団体などに数百万ドルを寄付したほか、国連平和大使として飢餓や貧困に苦しむ人々を救う活動にも従事。強さだけではなく、こうした活動でも多くの尊敬を集めた。

気になる話題!
格闘史に残る伝説の一戦!

【モハメド・アリ】伝説的ボクサーが名試合以外に残した価値とは!?今から48年前の1976年6月26日、アントニオ猪木 vs モハメド・アリの異種格闘技戦が日本武道館で実現。3分15回の特別ルールで行われたが、結果は引き分け。終始リングに寝て戦う猪木の姿に、会場内外が騒然となった。

【スティーブ・ジョブズ】カリスマの“魔法”は世界をどう変えたのか!?教えてくれたのは
[モーリー・ロバートソン]
Morley Robertson
1963年、NY生まれ。日米双方の教育を受け、東京大学とハーバード大学に現役合格。現在はタレント、国際ジャーナリスト、音楽家、DJとして各方面で幅広く活動している。最近はジャズコードを中心にギターの腕前をアップデイト中。

この偉人になりたい度数
15/100
アリのトレーニングはやってみたいかも!?
「新興宗教の看板になるのは嫌ですね。でも、もしアリのボクシング学校があったら、1カ月くらいお試し入会してみようかな。彼のトレーニングはすごかったですから」

 

 “アメリカ偉人伝”のラインナップ
【ジョン・レノン】今も絶大な影響力をもつレジェンドの実像とは!?
【ジェームス・ブラウン】音楽史に輝くファンクの帝王の光と陰とは!?
【エイブラハム・リンカーン】アメリカ史に輝く偉大な大統領の意外な影響とは!?
【ビリー・アイリッシュ】今を象徴するアーティストの行き着く先とは!?
【ウディ・アレン】映画を変えたレジェンドの真実の姿とは!?
【ビル・ゲイツ】ITの新時代を拓き巨万の富を得た男の目指すものとは!?
【マーティン・ルーサー・キング・ジュニア】人種差別の解消に尽力した偉人の語られざる顔とは!?
【アーネスト・ヘミングウェイ】タフで男らしい文豪の隠された真の姿とは!?
【マーク・ザッカーバーグ】IT界を牽引する若き天才はどう世界を変えた!?
【マドンナ】お騒がせなポップの女王の正体とは!?
【クエンティン・タランティーノ】映画ファンの心を掴んだ男の本当のすごさとは!?
【カート・コバーン】カリスマの音楽はどのようにして生まれてきた!?
【マイケル・ジョーダン】バスケを愛しバスケに愛された男の時代性とは!?
【ボブ・ディラン】世界中の人々を魅了し続ける男の実像とは!?
【マイケル・ジャクソン】世界中に多大な影響を与えた真のすごさとは!?
【スティーヴン・スピルバーグ】世界的巨匠が作品世界に込めた“ある視点”とは!?
【ホイットニー・ヒューストン】不世出の歌姫が後世に遺した大きな希望とは?
【マリリン・モンロー】世界を魅了したセックスシンボルの光と影とは!?
【ウォルト・ディズニー】夢と希望の国を作り出した偉人が遺したものとは!?
【スティーブ・ジョブズ】カリスマの“魔法”は世界をどう変えたのか!?
【アンディ・ウォーホル】ポップアートの奇才はなにを企み、なにを夢見たか!?
【ジョン・F・ケネディ】第35代アメリカ合衆国大統領の真実の顔とは!?
【イーロン・マスク】壮大すぎる夢追い人は救世主かペテン師か!?
【エルヴィス・プレスリー】アメリカの光と影を映し出すロックの王様!

 
Information

雑誌『Safari』7月号 P206〜207掲載

“アメリカ偉人伝!”の記事をもっと読みたい人はコチラ!

●雑誌・WEB『Safari』の公式TikTokは
こちらからアクセスしてみて!

文=野中邦彦
text : Kunihiko Nonaka(OUTSIDERS Inc.)
photo by AFLO
〈オメガ〉の“プロフェッショナルライン”に注目。復活した“レイルマスター”と 新色の“シーマスター”、心躍るふたつの名作。
SPONSORED
2025.06.27

〈オメガ〉の“プロフェッショナルライン”に注目。
復活した“レイルマスター”と 新色の“シーマスター”、心躍るふたつの名作。

〈オメガ〉を象徴するコレクションとして、1957年に創設された“プロフェッショナルライン”3部作。その中でも“レイルマスター”は、鉄道職員や電気技師といった強い電磁場が発生する場所で作業する人々を耐磁性の高さで支えた名作。そして、“シーマ…

TAGS:   Urban Safari Watches
〈ブランパン〉の名シリーズから新作登場。大人の休日にはシックなダイバーズを。
SPONSORED
2025.06.27

〈ブランパン〉の名シリーズから新作登場。
大人の休日にはシックなダイバーズを。

時計の人気トレンドにヴィンテージスタイルがある。1953年に誕生し、基本デザインを継承する“フィフティ ファゾムス”もそのひとつかもしれない。だがそこに懐古趣味はなく、常に新鮮な魅力を感じさせる。機能美という不変の価値があるからだろう。新…

TAGS:   Urban Safari Watches
リーダーにふさわしい〈グラスヒュッテ・オリジナル〉の一本。端正な機械式時計で仕事にも優雅さを。
SPONSORED
2025.06.27

リーダーにふさわしい〈グラスヒュッテ・オリジナル〉の一本。
端正な機械式時計で仕事にも優雅さを。

クルマやカメラなどドイツの工業製品の高い機能と品質は世界的に知られる。時計も例外ではない。〈グラスヒュッテ・オリジナル〉はその代表格だ。クラシカルなスタイルに決して派手さはない。だが漂う気品は、伝統に培われた揺らがぬ時計作りの哲学と美学を…

TAGS:   Urban Safari Watches
〈パネライ〉の傑作がさらなる進化。タフさと品格を併せ持つエレガントダイバーズ。
SPONSORED
2025.06.27

〈パネライ〉の傑作がさらなる進化。
タフさと品格を併せ持つエレガントダイバーズ。

歴史に裏打ちされた信頼性と機能。そして、存在感を放ちながら、品を保つデザイン性。そのすべてを兼ね備えた〈パネライ〉の“ルミノール マリーナ”は、知性と余裕をまとう大人にふさわしい腕時計だ。その傑作コレクションが今年、大胆な進化を遂げたとい…

TAGS:   Urban Safari Watches
〈エドックス〉の人気ダイバーズ時計が日本限定で登場!“とろやわ”ストラップで夏のビーチを満喫!
SPONSORED
2025.06.25

〈エドックス〉の人気ダイバーズ時計が日本限定で登場!
“とろやわ”ストラップで夏のビーチを満喫!

煌めく太陽に、白い砂浜、青い海。夏のビーチ遊びの季節がやってくる! ラフなビーチコーデの手元だって、やっぱり快適さを求めておきたい。そんな海遊びにはラバーストラップのダイバーズ時計が最適だ。そこでプッシュしておきたいのが〈エドックス〉の日…

TAGS:   Fashion Watches
〈ザ・ブセナテラス〉で過ごす憩いの時間!沖縄バカンスは贅沢でリラクシングなステイを!
SPONSORED
2025.06.25

〈ザ・ブセナテラス〉で過ごす憩いの時間!
沖縄バカンスは贅沢でリラクシングなステイを!

〈ザ・ブセナテラス〉は、日々の疲れを癒し、日常では味わえない贅沢な時間を過ごせる。充実したホテルの設備・サービス、海に面した立地を生かしたマリンアクティビティプログラム。ここは1泊2日くらいでは気づけない、魅力を秘めている。パートナーとと…

TAGS:   Stay&Travel
これでライフスタイルが見違える!新鮮アイテムでいつもの夏をアップデイト!
SPONSORED
2025.06.25

これでライフスタイルが見違える!
新鮮アイテムでいつもの夏をアップデイト!

いよいよ待ちに待った夏。バカンスを楽しみにしている人も多いだろう。たとえ予定がなくても、気温の上昇とともに気分をぐっと上げていきたい。そんなときに必要なのが、ライフスタイルをアップデイトするためのアイテムだ。これさえあれば、いつもとはひと…

サンダルは履き心地と見た目のよさで選ぶ!夏に大活躍するサンダルは、〈ロンハーマン〉別注が優秀!
SPONSORED
2025.06.23

サンダルは履き心地と見た目のよさで選ぶ!
夏に大活躍するサンダルは、〈ロンハーマン〉別注が優秀!

夏がやってくると気分も開放的になり、休日はお出かけモードに。街にショッピングに行くのもいいし、たまにはアウトドアで自然の中に身を置くのも気持ちよさそうだ。もちろん、ご近所を散歩する程度で、家でゆっくり過ごすというのも幸せ。で、そのどんなシ…

TAGS:   Fashion
〈ジラール・ペルゴ〉夏の限定モデルが登場!サマーバカンスの相棒は“懐色”の復刻ダイバーズで!
SPONSORED
2025.06.20

〈ジラール・ペルゴ〉夏の限定モデルが登場!
サマーバカンスの相棒は“懐色”の復刻ダイバーズで!

マニュファクチュール=自社一貫生産体制を2世紀以上も貫き続けるスイス、ラ・ショー・ド・フォンの名門時計ブランド〈ジラール・ペルゴ〉。そのコレクションはどれもクラシカルかつドレッシーで気品に満ちたもの。そんなイメージを、文字どおりあざやかに…

TAGS:   Fashion Watches

NEWS ニュース

More

loading

ページトップへ