Safari Online

SEARCH

CULTURE カルチャー

2023.04.06


【ボブ・ディラン】世界中の人々を魅了し続ける男の実像とは!?

歌手として初のノーベル文学賞受賞でも話題となったボブ・ディラン。メッセージ性の高い詩的表現は今なお多くの人の心を捉え、81歳となる現在も第一線で活動し続けている。そんな伝説的ミュージシャンを、モーリーはどう見ている!?

【ボブ・ディラン】世界中の人々を魅了し続ける男の実像とは!?1968年、ニューヨーク州ウッドストックで撮影。芸術コロニーのバードクリフで、雑誌『サタデー・イブニング・ポスト』の撮影を行なった様子。1966年のバイク事故以降、ディランはこの地で静養を兼ねた隠居生活を送った

実はディランというのは、僕と一番遠いところにいるんです。会ったことのない父親のような感じ。疎遠だった主な理由は、ハーバード大学に通っていた頃に出会った、メンター的な先輩ですね。彼らは非常に政治性が強く、よくディランの話をしていた。初期こそが本物だとか、その後は商業化したとかね。ディランは’60年代の急進的な政治運動や、ビートの詩人や文学者に強い影響を受け、どんどん歌を生みだした。

大学の先輩が「初期のディランはよかった」というのは、ビート文学、ベトナム反戦、カウンターカルチャー、ビートルズ、それら全部を合わせて最高という話。そこにはノスタルジーがあるんです。僕が大学にいたのは’80年代なので、もう完全に後ろ向きな説教や教科書のようでね。僕らが若い人に「ブルーハーツも知らないのか」なんて語りだしたら、嫌ですよね。

ディランの時代になにが起こったのかを整理すると、彼は時代の共鳴点に立つのだけど、ベトナム反戦や公民権運動がヒートアップする中で、自分ではコントロールできない力に翻弄される。そして人気者の自分に全方位的に便乗され、なにかの象徴にされていく。彼はいったんすべてから距離を置き、サウンドを聴かせる人になる。それでライブをやったところ、昔のようにギターをかき鳴らして歌わないということで非難された。そんな経緯もあり、僕らの頃のディランは、もはや世捨て人のようになっていました。

ディランが影響を受けたビート文学というのは非常に巨大です。バロウズ、ケルアック、ギンズバーグは、これからもずっと音楽家のバイブルであり続けるはず。それを商業的に進めたのが当のギンズバーグ。世の中の流行に乗せてうまくプロモートしました。それでディランにも近づく。ビートは全盛期をかなり過ぎて、反戦運動の流れで再評価された。実は僕の在学中にも再評価の波がありました。当時つき合っていた女性が大学の新聞記者をやっていて、ギンズバーグにインタビューする機会があって、すっかり感化されて、夏の休暇の間に自分もビート体験をするといいだした。それでドラッグ漬けになって帰ってきて、とんでもないことになりました。だから僕にとっては、それらすべてがおぞましいものに見える。運命の巡り合わせか、悪い形でしかディランに接していないんです。

ただ、ディランも苦悩したはず。ある時代の最先端に押し出され、降りようとしても降りられない。演奏がヘタだとか、自分を疑う要因もいろいろと出てくる。この50年、ずっと苦しみの中で生きてきたんじゃないかな。彼のある種の厭世的な立ち位置というのは、ソローのようなアメリカ文学の伝統を受け継いでいるところがあります。つまり都会の便利な生活を離れ、自給自足で暮らすアメリカニズム。そこには当然、プロテスタントの信仰があります。貧困や迫害から逃れて移民した人々が、神のプランに基づいて人生を全うする。アメリカの建国以来共有されている使命感ですね。ところが語られないのは、そこにはカトリックやユダヤ人の排除があった。ディランもユダヤ人だから、二面性があるわけです。同様に、商業主義を批判しつつ、レコードを売って儲けているという矛盾もある。

彼はある時点で「俺はもう善悪じゃない」といっています。おそらく素直な気持ちだったと思うんです。なにからなにまでインチキだ、俺だってインチキじゃないか、という自己嫌悪が強くあった。その点で、彼は真の詩人ですよね。自己嫌悪できる人は少なく、どちらかというと流れに乗ってしまう人がほとんど。ギンズバーグはそういう人だったけど、ディランはそれをいっさいやらず、ある意味で高潔でした。彼にとって幸運だったのは、早い時期に自分の名声が虚しいものだと気づいたこと。溺れてしまう人も多いのに、そこは本当に尊敬できますよね。

様々なアーティストに
影響を受け、そして与えた!


【ボブ・ディラン】世界中の人々を魅了し続ける男の実像とは!?1965年に撮影された“フォークの女王”ジョーン・バエズとの写真。ディランが有名になる前から親交があり、最大の理解者であり、恋人でもあった

【ボブ・ディラン】世界中の人々を魅了し続ける男の実像とは!?元ビートルズのジョージ・ハリスンとディラン。1988年に撮影。同年には2人を含む覆面バンド“トラヴェリング・ウィルベリーズ”が結成された

オバマ大統領から
勲章を授与されたことも!


【ボブ・ディラン】世界中の人々を魅了し続ける男の実像とは!?2012年、ホワイトハウスに招かれ、当時の大統領バラク・オバマから大統領自由勲章を授与された。米国の国益、世界平和、文化活動などに貢献した人物に贈られるもので、アメリカでは最高位の勲章

 ボブ・ディランの歴史 

【ボブ・ディラン】世界中の人々を魅了し続ける男の実像とは!?ディランはもともとユダヤ人・ユダヤ教徒として生まれたが、1970年代末に一時、新興キリスト教団体の福音派に改宗している(数年でユダヤ教に回帰)。ファンからはブーイングを浴び、ジョン・レノンなどからも公に反対された。

気になる話題!
待望の来日公演がいよいよ間近に迫る!

【ボブ・ディラン】世界中の人々を魅了し続ける男の実像とは!?初来日から45年となる今年、ワールドツアーの一環として4月に来日。大阪・東京・愛知で合計11公演というのは、彼の年齢を考えると異例のこと。来日は2018年のフジロック以来。新作を発表した2020年に来日公演がコロナ禍により中止となっていた。

【スティーブ・ジョブズ】カリスマの“魔法”は世界をどう変えたのか!?教えてくれたのは
[モーリー・ロバートソン]
Morley Robertson
1963年、NY生まれ。日米双方の教育を受け、東京大学とハーバード大学に現役合格。現在はタレント、国際ジャーナリスト、音楽家、DJとして幅広く活動中。膨大な知識と縦横無尽な思考に加え、ユニークなキャラクターでも人気。

この偉人になりたい度数
33/100
接点は少ないけど見習うべき点も多い!
「知れば知るほど痛々しい部分が見えてきちゃう。ただ、60年以上の息の長い活動に敬意を表して33点です。同じ人生は送りたくないけど、見習いたい部分も多い人物ですよね」

前回の“アメリカ偉人伝”は
【マイケル・ジャクソン】世界中に多大な影響を与えた真のすごさとは!?

 
Information

雑誌『Safari』5月号 P242~243掲載

“アメリカ偉人伝!”の記事をもっと読みたい人はコチラ!

●『Safari Online』のTikTokがスタート!
こちらからアクセスしてみて!

文=野中邦彦
text : Kunihiko Nonaka(OUTSIDERS Inc.)
photo by Elliott Landy/Magnum Photos/AFLO
photo by AFLO
きっかけは〈MINI〉!“新しい自分”に出会える特別なオーナー体験、募集開始!
SPONSORED
2025.09.04

きっかけは〈MINI〉!
“新しい自分”に出会える特別なオーナー体験、募集開始!

「今とは“違う自分”に出会ってみたい」あるいは「本当の自分を発見したい」。そんなアナタに必要なのが“遊び心あふれる新しい自分”を探す旅。とはいえ今回は、リゾート地や最果ての土地を目指すのとは違って、“新しい自分”に出会うために新しいクルマ…

いつでもどこでも〈ロンハーマン〉が相棒!オンラインストア5周年記念のスペシャルアイテムは力作揃い!
SPONSORED
2025.09.03

いつでもどこでも〈ロンハーマン〉が相棒!
オンラインストア5周年記念のスペシャルアイテムは力作揃い!

こだわりの強い男は、ファッションもインテリアも、実際に触れてみてから手に入れたいと思う人は多い。自分の目で確かめることは大切だからね。でも、その目を先見の明を持つ〈ロンハーマン〉がすでにしてくれているとなれば話は違う。要は、その信頼があれ…

TAGS:   Fashion
普段使いにちょうどいい限定バッグ発見!ヴィンテージ感漂う作りで、秋スタイルに男らしさをプラス!
SPONSORED
2025.09.02

普段使いにちょうどいい限定バッグ発見!
ヴィンテージ感漂う作りで、秋スタイルに男らしさをプラス!

休日にウィンドウショッピングに行ったり、彼女と映画デートに出かけたり。こんなふうに気軽に街に出るときは、嵩張らずさっと肩掛けできるようなバッグが便利。といっても、せっかくのお出かけスタイルにそぐわないものでは本末転倒……。というわけで、使…

TAGS:   Fashion
即完売〈ロンハーマン〉の別注アイテム! 大人好みの人気ブランドが、特別仕様になって登場! 
SPONSORED
2025.09.01

即完売〈ロンハーマン〉の別注アイテム! 
大人好みの人気ブランドが、特別仕様になって登場! 

大人には、見た目の落ち着きと品だけでなく、上質な素材による肌触りのよさも大切。その風合いのよさは、醸し出す雰囲気までグッと格上げてくれるから、モノ選びをするときには外せない点。それはカジュアルなアイテムであればあるほど、大事になってくる。…

TAGS:   Fashion
〈フランク ミュラー〉×〈ダナー〉の最新ブーツがお目見え!ワザありデザインが目を引く意外なコラボの1足!
SPONSORED
2025.08.25

〈フランク ミュラー〉×〈ダナー〉の最新ブーツがお目見え!
ワザありデザインが目を引く意外なコラボの1足!

昨年、驚きとともにユニークな取り組みと評判を呼んだ、〈フランク ミュラー〉と〈ダナー〉のコラボブーツ。早くも登場した第2弾はキャラ立ち必至なデザインはそのままに、カラーやディテールでグレードアップ! 質実剛健なアウトドアブーツを、アートな…

TAGS:   Fashion
俳優・竜星 涼がまとう〈ベル&ロス〉の新作!強く輝きを放つ黒スケルトン!
SPONSORED
2025.08.25

俳優・竜星 涼がまとう〈ベル&ロス〉の新作!
強く輝きを放つ黒スケルトン!

航空計器からインスパイアされた四角と丸の組み合わせで唯一無二の地位を築き上げている〈ベル&ロス〉。特に現代的なデザインが人気の"BR-05"シリーズに新加入したのが、シャープな輝きと力強さを秘めたセラミック製の黒スケルトンだ。年々深みを増…

TAGS:   Fashion Watches
屈指の“メイド・イン・ジャパン”デニム〈デンハム〉白澤社長もお気に入り!ヴィンテージ感漂う大人のワイドデニム!
SPONSORED
2025.08.25

屈指の“メイド・イン・ジャパン”デニム〈デンハム〉白澤社長もお気に入り!
ヴィンテージ感漂う大人のワイドデニム!

太めのダメージデニムはストリートなイメージが強く、若者が穿くものと思っている人も意外と多いのでは!? そこでおすすめしたいのが、〈デンハム〉のワイドデニム“ジャンボ”。膝に入った適度なクラッシュや、腿に施された絶妙なバランスのヒゲなど、ま…

TAGS:   Fashion Denim
遊びも食も宿泊も充実の〈インスパイア〉リゾートへ!週末を遊び尽くす大人の韓国!
SPONSORED
2025.08.25

遊びも食も宿泊も充実の〈インスパイア〉リゾートへ!
週末を遊び尽くす大人の韓国!

羽田空港や成田空港から約2時間で行ける〈インスパイア・エンターテインメント・リゾート〉。迫力のウォーターアトラクションを楽しめるプールや贅沢な5ツ星ホテル、きらびやかな韓国最大級カジノ、食欲をそそる韓流の肉料理など、多彩な魅力が集まってい…

TAGS:   Gourmet Stay&Travel
【時計】ブランド刷新の仕掛け人CEOが語る〈オリス〉は、イタリアにおける“ピアッツァ=広場”でありたい
SPONSORED
2025.08.22

【時計】ブランド刷新の仕掛け人CEOが語る
〈オリス〉は、イタリアにおける“ピアッツァ=広場”でありたい

グループに属さない独立系時計ブランドならではの自由な時計作りで、存在感を放つ〈オリス〉。スイスの機械式時計の文化継承に多大な貢献を果たしてきた“正統派の後継者”である一方、1980年代に趣味的な高級品に留まっていた機械式時計を身近な存在に…

TAGS:   Watches
即完売〈ロンハーマン〉の別注アイテム! 大人カジュアル必携の人気のブラックアイテム!
SPONSORED
2025.08.18

即完売〈ロンハーマン〉の別注アイテム! 
大人カジュアル必携の人気のブラックアイテム!

大人になると色あざやかなアイテムを組み合わせてコーデするということを避け、ベーシックカラーを好むようになってくる。そのなかでも黒は、精悍でスマートに見せてくれるから、アラフォーにとって万能色といえるだろう。さらに季節が秋冬に向かえば、それ…

TAGS:   Fashion

NEWS ニュース

More

loading

ページトップへ