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CULTURE カルチャー

2025.08.16


アナ・デ・アルマス単独インタビュー! 「21歳での来日体験は信じられないくらい素晴らしものだったわ」



キアヌ・リーヴス主演で、過去4本が作られた人気シリーズ『ジョン・ウィック』が、主人公を変えて新たな作品を完成させた。『バレリーナ:The World of John Wick』で“復讐の女神”として登場するのがイヴ。幼い頃に父親が殺され、ジョン・ウィックも送り出した組織で、彼女は殺し屋のテクニックを学んでいく。イヴを演じたのは、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』でジェームズ・ボンドを助ける超キュートな(なのに強い!)諜報員のパロマ役で大ブレイクし、マリリン・モンローを演じた『ブロンド』ではアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたアナ・デ・アルマス。キューバ出身で、いまハリウッドで最も注目を集める彼女が、最強の殺し屋として過激なアクションに挑む。大人気シリーズにアナはどう向き合ったのか。そしてキアヌの作品への貢献は? 日本での公開を前に、一緒に来日したレン・ワイズマン監督を交えての単独インタビューを行った。

ーー4年前、あなたが世界中の観客を夢中にしたのが、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』でのパロマ役です。あの時、アクションの自信もついたのでは?

アナ「はい……と答えたいんですけど、撮影時はモニターで自分の動きを確認しながら、まったく満足できませんでした。とにかくアクションに身体が“慣れていく”感覚だったんです。『007』はコロナのパンデミックの影響で、撮影から完成まで約2年かかったのですが、完成された映像を観て『私、そんなに悪くない』と、少し見直したかも(笑)。その自信が、アクション映画を続けるという欲求に変わった気がします」

レン「あなたのパロマは、まさに映画をスパークさせる役割でしたよ。いつものジェームズ・ボンドの映画と違う、新鮮なエネルギーを僕も感じましたから。楽しくてパワフル。スイートでカッコいい。初の任務での無邪気な感じも出ていて、後半にまた出てくるかと期待していたら、キューバのシーンだけだったのが残念でした。あのキャラクターは脚本どおりなの?」

アナ「キャリー(監督のキャリー・フクナガ)と私で作り上げた感じです」

ーー今回、『ジョン・ウィック』の世界の一員になって、どんな気分ですか?

アナ「過去のシリーズを観て、“なんてクールなの! アクションが素晴らしい”と感激していたので、心から興奮しました。キアヌと再び共演できるのも楽しみでしたし、何より、このシリーズを女性の視点で描くところに興味がありました。組織の中で、人がどのように暗殺者として育てられるのか。それが何を意味して、どんな結末が待っているのか。それを自分の演技で語れることがうれしかったですね」

レン「僕はアクション映画にこだわりがあり、とにかくユニークな表現、限界への挑戦を自分に課しています。『ジョン・ウィック』の世界に参加することで、そんな僕の“執着”を理解してもらえると信じていました」

ーーアナは2015~2016年の『ノック・ノック』、『エクスポーズ 暗闇の迷宮』以来のキアヌ・リーヴスとの共演ですが、当時のキアヌと今回の彼はどう変わっていましたか?

アナ「何も変わってません(笑)。10年前の初共演の際は、私はあまり英語が話せず、野心があるわりにシャイだったりして、キアヌには仕事の現場で必死についていく感じでした。今回は関係性もずいぶん変わり、おたがいへの友情やリスペクトが高まった気がします。私も10年間でたくさんの経験をしてきたし、素直に再共演を楽しめたんです」

ーー『ジョン・ウィック』シリーズのエキスパートとも言えるキアヌなので、彼の存在は監督としても心強かったのでは?

レン「最も驚いたのは、脚本の確認でのキアヌの判断です。彼はどんどんセリフを削り、表情だけで演じることを選択します。撮影中、彼をローアングルで撮った時、かなりカッコいい映像になりました。ただ、そのアングルのままキアヌがカメラに顔を向けてセリフを言ったら、彼のカッコよさは失われる。どうしようか迷っていたら、キアヌは“俺はどうでもいい。映像がカッコよくなればいいんじゃない”と言うので、そのまま撮ることに。そんな感じでスターが相手というより、僕らは映画少年同士のように楽しく撮影しました」

ーーアナは全編でハードなアクションをこなしています。もちろんスタントダブルの助けもあったと思いますが、あなた自身、どこまでチャレンジしているのですか?

アナ「ほぼ100%と言っていいです。すべて自分でこなすことが、私のリクエストでした。そのために厳しいトレーニングにも本気で取り組みましたよ。だってイヴは、“ババヤガ(悪魔や闇の者)”の異名を持つジョン・ウィックの跡を受け継ぐわけで、私もキアヌと同じレベルのアクションを見せる必要があるんです。“キアヌがやれるんだったら私にも”っていうチャレンジ精神で、ほとんどのスタントをかなりうまくこなせたんじゃないかしら」

レン「そう、現場ではスタントチームがアナの代わりに演じるのではなく、一緒にアクションシークエンスを考える雰囲気でした。“アナをどう動かすか”という課題に挑んだわけです」

アナ「チームのおかげで、スタントがぎこちなくなることなく、長めのシーンも一気に撮影できました。もちろん映画を観る人の目をうまくごまかす手段はあります。でも私は、本当に自分では耐えられなくなるまで動き通し、それを楽しんでました。むしろ撮影の4カ月間、体力を維持することが大変でしたね」

レン「映画を観る人の目は肥えていますから、好きな俳優が本当に自分で演じているかどうかは重要なんです。本人が過酷なスタントをこなすことで感情移入し、危険な立場に共感しやすくなる。その感覚は、本人かスタントダブルかで雲泥の差になりますから」

ーー本作のアクションの見どころとして、中盤のレストランでの戦いが強いインパクトを残します。イヴが手元にある料理道具や食器を使い、凄まじい応戦を披露します。

レン「出発点は“キッチンで何を使えるか”でした。そこから皿をいっぱい使うアイデアにたどり着いたのです。最初に皿を壊すアクションをはじめたところ、“これを頭上から撮ったらスゴいかも”となって、イヴと敵対する相手が皿で攻撃し合う戦いに発展しました。冷静に考えればバカげた戦いですが、やってるうちにどんどん長くなったよね(笑)」

アナ「戦ってる者同士が“いま自分は何をやってるの?”、“どこにいるの?”と迷ってる感じもあって、観る人にとっては、笑えたり、興奮したり、ホッとしたり、いろんな感情が呼び起こさせる名シーンです。でも演じる側にとっては大変。だって、あの皿は砂糖を固めて作られていたから(笑)」

レン「“皿を持ち上げる時はデリケートに。そして割る時には思い切り”と指示した記憶が……」

アナ「持つ時に力を入れると、すぐに割れてしまうんです。あらゆる情報を処理しながら、本当に気を遣うアクションシークエンスでした」

レン「小道具チームは、砂糖の皿を100枚くらい用意してくれたんだけど、それでも足りなくて、割れた皿を接着剤で復元してました。辺りはガラスの破片、粉々になった砂糖で、現場は散らかりまくってましたよ」
 

  

 

1988年キューバ生まれ。18歳でキューバからスペインに国籍を移し、スペインでドラマや映画への出演を重ねる。キアヌ・リ—ヴスと共演した『ノック・ノック』(2015年)でハリウッド映画デビュー

ーーアナが最初に日本に来たのは、今から16年前の2009年ですが、その当時、ここまで大スターになることを想像していましたか?

アナ「初めて日本に来たことは、今も鮮明に覚えています。“ラテンビート”というスペイン語圏の作品を上映する映画祭で、私は出演したスペイン映画のゲストで来日しました。まだ私は21歳だったので、信じられないくらい素晴らしい体験として、記憶にやきついているんです。確かに当時、現在の私の姿は想像していなかったでしょう。できることなら、あの時代に戻って“今のままで頑張ればうまくいくわよ”と自分に伝えたい(笑)」

レン「私も16年前に君に会っていたら“将来、スターになる”と保証しただろう(笑)。『ブレードランナー 2049』で“彼女は誰だ?”と映画業界がザワつきましたが、私自身は『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』でアナを意識し、『007』のパロマ役で打ちのめされた感じです。アナは内面からウィットに富んだ表現ができる人で、今回の『バレリーナ』でも、微笑む瞬間、その魅力を最大限に引き出しているんです」

アナ「『ナイブズ・アウト』は私にとっても重要な作品でした。共演者も名優ぞろいで、“これが私の仕事だ”と自覚できたからです。ただ映画業界からは“彼女の奥深い演技もこれが限界だろう”と反応された気がして、そこは悩みましたけど」

ーーでもその後、『ブロンド』の演技が評価され、見事にアカデミー賞ノミネートを達成しました。現在の仕事に対するスタンスは?

アナ「毎回、新しい仕事で自分をリセットする際に、心の中の葛藤と闘っています。キャリアにおける選択がつねに正しいことが理想ですが、自分の能力と情熱のすべてを注ぎ込める作品に一つでも多く巡り会えること。それを待ち望んでいるのが、今の私の感覚ですね」

『バレリーナ The World of John Wick』8月22日公開
製作総指揮・出演/キアヌ・リーヴス 監督/レン・ワイズマン 脚本/シェイ・ハッテン 出演/アナ・デ・アルマス、アンジェリカ・ヒューストン、ガブリエル・バーン、ランス・レディック 配給/キノフィルムズ
2025年/アメリカ/上映時間125分

 

  

 

 
取材・文=斉藤博昭 text : Hiroaki Saito
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