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CULTURE カルチャー

2025.08.17


スキージャンプ界の“生ける伝説”【葛西紀明】敗北からの気づきが成長するための力に!

41歳での最年長メダル獲得を筆頭に、輝かしい実績を誇る葛西紀明。52歳にして、4シーズンぶりにW杯代表メンバーに復帰したスキージャンプ界のレジェンドが、人生観が変わる契機となった敗北について語ってくれた。

スキージャンプ選手 葛西紀明
1972年、北海道生まれ。1992年のアルベールビル五輪に19歳で初出場。史上最多8回の冬季五輪など国際大会に多数出場し、ソチ五輪で個人ラージヒル銀、団体銅を獲得。土屋ホームスキー部の選手兼監督を務める。


開催まであと6カ月に迫ったミラノ・コルティナ2026冬季五輪において、9度めの五輪出場を目指す葛西紀明。W杯最年長優勝や冬季五輪スキージャンプ最年長メダリストを含む、7つのギネス記録ホルダーでもあるスキージャンプ界のレジェンドが分岐点として語ってくれたのは、2002年のソルトレイクシティ五輪。ラージヒルで100mジャンプを2本飛んだのは葛西を含めて2人だけではあったが、ラージヒル、ノーマルヒルともに40位台と表彰台から大きく遠のく結果に終わり、大きな挫折を経験することになった。

「最高潮の状態にカラダを作り上げ、完璧といえる状態で挑んだ五輪でした。しかし、肝心のジャンプが大きく崩れてしまった。全力を尽くしたにもかかわらず、すべてが空回りしてしまった状態。散々な結果で、“もう自分にはこれ以上進歩はないのかもしれない”とモチベーションを失ってしまうほど、大きな挫折でした。ノーマルヒルのときは、最後の最後で飛距離を伸ばそうと思ってテレマーク姿勢を取ろうとしたのですが、それがうまくいかずに転倒してしまい。“うわっ、こんなに大きな舞台で転倒なんてめちゃくちゃ恥ずかしいな”って思い、その恥ずかしさは今でも脳裏に焼きついています」

1998年の長野五輪で団体戦メンバーから外れ、悔しい経験をしてから挑んだ五輪ゆえモチベーションは高かった。しかし、競技に向き合う環境としては所属チームの相次ぐ廃部をはじめ、大きな変化を経て挑んだ大会でもあった。

「1998年の地崎工業のスキー部廃部を経て移籍したマイカルが3年後に廃部。その前には母親が亡くなるなど、いろいろなことがあって思い詰めるような状態で出場した大会でした。そこで打ちのめされたわけですが、打ちのめされたからこそ、もう一度ゼロからやり直そうという気持ちになり、新しいものを受け入れてみる気持ちになったのです」

そんな気持ちの面でのターニングポイントが訪れた理由としては、環境の変化とそこでの気づきが大きかったという。

「2001年に現在所属する土屋ホームがスキー部を創部し、僕を受け入れてくれたのですが、そこで土屋公三会長による“成功への十訓”というものに出会いました。その中にある“ものの見方、考え方を変えると人生が変わる”という言葉を聞いて衝撃が走りまして……。これは、まさに今の自分のことを言っているんだなと思ったわけです。今思うとあの頃の僕は、競技生活が長かったこともあって、自分がやっていることがすべてと思い込み、練習方法なども自分のやり方を変えずひとつの価値観に縛られてしまっている部分がありました。今、自分が変わらないとこのままずっと変わることはできない。そんな思いに至ったことで、救われた部分が非常に大きかったのです」

自分を変えるために、新たにフィンランド人のコーチを招聘し、新しい練習メニューを積極的に取り入れた。

「考え方を変えたら、自分を変えられると思ったので、ものすごく頑固な僕がコーチがいうことをすべて聞こうという気持ちになれたんです。それ以前の僕だったら、年下のコーチに教えられるなんてイヤだなって思ってたと思います(笑)。そこでフィンランド式のトレーニングをすべて学ばせてもらい、2003年の世界選手権でメダルを獲ることができた。考え方を変えるとこういうことが起きるんだということに、気づかされたんです」

ターニングポイントを経た葛西は目覚ましい活躍を見せ、2014年のソチ五輪では個人ラージヒル銀、団体銅のふたつのメダルを獲得。その後、2019-20シーズン途中からW杯の試合に出場しなかった期間を経て、2023-24シーズンは4季ぶりにW杯代表に復帰を果たした。2023-24シーズンのW杯札幌大会において史上最年長(51歳)でW杯ポイントを獲得したことで海外遠征メンバーに復帰。9度めの五輪出場という新たな目標に挑むことになった。

「国内外の様々なところでレジェンドと呼んでいただき、応援してくれる方が増えました。五輪で獲れていない金メダルはもちろん今でも獲りたいと思っていますが、それよりも応援してくれる方がいることの大きさを感じたことが復帰の一番の理由であり、力になっています。レジェンドと呼んでいただけることは、これ以上のものがないと思うくらい嬉しいこと。これから先もそう呼んでもらえるような活躍をしていかなければならない。そう思って競技と向き合っています」

アーティスト 田村大
1983年、東京都生まれ。2016年にアリゾナで開催された似顔絵の世界大会であるISCAカリカチュア世界大会で、総合優勝。アスリートを描いた作品がSNSで注目を集め、現在のフォロワーは10万人以上。その中にはNBA選手も名を連ねる。Instagram:@dai.tamura

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Information

※『Safari』9月号174〜175ページ掲載

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イラスト=田村 大 構成&文=遠藤 匠
illustration : Dai Tamura composition&text : Takumi Endo
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