【マーク・ザッカーバーグ】IT界を牽引する若き天才はどう世界を変えた!?
10億人を超えるユーザーを抱えるSNSサイト“フェイスブック”の創始者で、メタ社の共同創業者、会長、CEOを務めるマーク・ザッカーバーグ。若くして成功を収めた天才は、はたしてどんな世界を目指しているのか。モーリーはどう見ている!?
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2013年、カリフォルニアで開催されたフェイスブックのプレスイベントで、新アプリについて発表するザッカーバーグ。当時まだ28歳だったが、フェイスブックの月間アクティブユーザー数は、すでに10億人に迫っていた
彼はシリコンバレーの理想主義を、そのまま体現した人ですね。彼らはポストベビーブーマーで、政治や社会への責任感はなく、反権力的。そして根底にあるのは、“テクノロジーがなんでも解決する未来が訪れる”という絶対的な信念。その先陣を切るのは俺たちだという絶大な自信がありました。大学の友達同士ではじめた“フェイスブック”は、全世界にリーチした。ただ、収益はずっと横ばいでした。そこで保有しているプライバシー情報を換金する道を探します。
メタ情報と位置情報を関連づけ、個人の購買行動やパターンを分析・把握した。これにより、従来はターゲットできなかった精度の広告を送れるようになりました。ただ、情報の集め方に問題があった。たとえば「このホテルで誕生会をやりました」と公開すれば、所得がわかる。つまり本人が意図せずに公開した情報です。また個人間のやり取りは、本人が消した後もサーバーに残ります。消せるのは中の人だけ。そのあたりの基準も曖昧なまま、プライバシー情報を大量に集め、広告業者に売ったわけです。
収益を最大化する近道は、とにかくクリックさせ続けること。広告費が入るから。だんだん依存性が増して、私生活との境界も曖昧になっていく。そして僕が勝手に“アルゴリズム至上主義”と名づけた状況が起きてきます。個人の感情が不安や怒り、ヘイトなどに自然に、あるいは意図的に寄っていく。つまり負の感情を導入するようになった。これはアルゴリズムがひとり歩きしたのか、それとも経営判断なのかは、誰も口を開かないのでわかりません。これまで政府の公聴会に6人の幹部が呼ばれていますが、全員が同じ答え方で、そこは曖昧なままです。
不安や怒りで感情を刺激され、極端な情報に反応し、憤りを書き込む。その一方で、自分の主張には誰かからの肯定・承認を求める。要するに幼稚です。アルゴリズムが最適化された結果、ユーザーはほのぼのした子猫の動画を眺め、悪事を働いた社長や不倫のニュースを見て憤り、また子猫を見る。これがニュースフィード。いまやアメリカの過半数の人が、1日の最初に見るニュースがこれです。
実はこの先が興味深くて、“アラブの春”と呼ばれる中東の民主化運動とその後の混乱、プーチンやプリゴジンが絡むウクライナ紛争、トランプのアメリカ大統領選、アジアの独裁政権などにもフェイスブックが関連します。トランプの情報参謀だった人物によれば、彼らは多額の広告費を払って、堂々とアルゴリズムを教えてもらったそうです。そして移民などへの憎しみを煽る膨大な偽情報を流した。大統領選後、政府の情報機関の指示でフェイスブックがデータを分析し、明るみに出ました。それでザッカーバーグが公聴会に呼ばれたわけです。
彼はフェイスブックが原因で問題が起きていると指摘されると、「いや、むしろフェイスブックが足りない」という。全世界の人々がもっと使えば、問題は自然に治癒すると。世の中をよくしているという信念があるから、引くことを知りません。天才で固めた同質的なチームで、挫折を知らずに若くして大成功した。だから「俺たちが世界を変えている」という自負が非常に強いんです。
もちろん彼の愛すべきところも多くて、まず薬物や暴力のようなものとは無縁です。それから、やっぱりフェイスブックには期待感がある。有名になれるとか、収入源になるとか。また、インドなどの新興国から出てくるIT系の人にとって、希望の星になりえる。アイデアで世の中を変えられる、という希望です。だから彼はナイーブな天才で、紐で縛っておけという単純な話ではありません。大事なのは、ユーザーである我々全員が、自分を省みる機会を与えられているということ。不都合なことにも向き合って、自分で判断することだと思います。
注目の的!?
ハーバード大学の同窓生だったプリシラ・チャンと2012年に結婚。結婚式はザッカーバーグの自宅の裏庭で慎ましく行われた。現在2人の子供がいる
別荘のあるハワイでウォータースポーツに興じるザッカーバーグ。彼は総合格闘技やブラジリアン柔術にも本格的に取り組むなど、かなりアクティブな側面があるのは意外!? 2020年に撮影
時代の寵児に!?
カリフォルニア州パロアルトのスタンフォード・リサーチ・パーク内にあった旧本社で2006年に撮影。“シリコンバレーの震源地”と呼ばれるテクノロジーパークで、現在もテスラなどの本社がある
ザッカーバーグは公聴会で、問題を見落としたことについて謝罪している。その後、問題のあるアカウントの削除などを進めたが、この7月にはトランプ支持者などから「フェイスブックは言論を検閲している」との動議を起こされている。
新SNS“スレッズ”が史上最速で成長中!
今年7月、メタ傘下のインスタグラムから新しいテキストベースSNS“スレッズ”をリリース。ライバルであるツイッター(現X)のもたつきに乗じて、驚異的な勢いで登録者数を伸ばした。イーロン・マスクとのバチバチなバトルぶりにも関心が集まっている!?
教えてくれたのは
[モーリー・ロバートソン]
Morley Robertson
1963年、NY生まれ。日米双方の教育を受け、東京大学とハーバード大学に現役合格。現在はタレント、国際ジャーナリスト、音楽家、DJとして各方面で幅広く活動している。最近はモーション・グラフィックスなどの映像加工にハマり中。
-5/100
後戻りせず進む姿にある種の怖さを感じる
「彼についてはなにか嫌な感じがして、なるべく見ないように努力してきました。とうとう向き合ったわけですが、示唆に富んでいましたね。初のマイナス評価になりました」
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◆【イーロン・マスク】壮大すぎる夢追い人は救世主かペテン師か!?
◆【エルヴィス・プレスリー】アメリカの光と影を映し出すロックの王様!
雑誌『Safari』10月号 P218~219掲載
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text : Kunihiko Nonaka(OUTSIDERS Inc.)
photo by AFLO