Safari Online

SEARCH

CULTURE カルチャー

2023.11.17


【マーティン・ルーサー・キング・ジュニア】人種差別の解消に尽力した偉人の語られざる顔とは!?

「I have a dream」の一節で知られる名演説を行い、人種差別の解消を求める公民権運動の指導者として歴史に名を残すマーティン・ルーサー・キング・ジュニア。1968年に39歳の若さで暗殺されてしまったキング牧師を、モーリーはどう見ている!?

【マーティン・ルーサー・キング・ジュニア】人種差別の解消に尽力した偉人の語られざる顔とは!?1963年8月28日、首都ワシントンで開催された奴隷解放宣言100周年を記念する大集会で、あの伝説的なスピーチが行われた。この日に実施されたワシントン大行進には、20万人を超える参加者が集まったという

彼について語るには、少し背景を知っておいたほうがいいですね。まず初期のアメリカ憲法では、奴隷制が容認されていました。州の自治権としてね。南部には奴隷州がたくさんあり、州によっては白人の数のほうが少ない。まともに選挙をすれば、白人の議員が減ってしまう。そこで全13州の間で妥協したのが、選挙では黒人を0.6人として数えるということ。すべての人間の平等を憲法で謳っているにもかかわらず。つまり大前提として、アメリカの憲法には奴隷州の利益が組み込まれていたということ。長期的な理想が謳われており、それが長いこと現実と矛盾してきたわけです。奴隷制度は建前上なくなったけど、あらゆる面で黒人を隔離し、貧しいままにしておく構造は変えたくない。こうして政治的な利害が構造に組み込まれたんです。

そしてもうひとつ。キリスト教の福音派が、宗教観に基づく黒人隔離を熱烈に広めた。黒人は道徳を守らず、堕落的だと。道徳という言葉が盛んに使われ、それはつまり黒人を隔離しろという意味でした。ところが、これが崩れはじめる。牧師たちが聖書を引用し、そんなことはどこにも書いていないと論破した。道徳の第一線が突破され、そうなれば政治家や資本家も動きます。たとえば、黒人はバスの席を白人に譲らなければならなかったのですが、それは嫌だという黒人が出てくる。バス会社も客が不愉快なのは困るから、利害が一致するわけです。

そこに出てきたのがキング牧師。彼の影響が強まるのを見たFBIは、ソビエトの壮大な謀略だといいだした。ところが、いくら調べても共産主義の影がない。そこで「じゃあ女だ」と調べたら、もうたくさん出てきた。彼はアイドルでモテたから、至るところに愛人がいたんです。FBIは録音を匿名でキングに送り、早く自殺しろと脅迫した。有名な伝記作家の話によれば、脅された彼はパニックで過呼吸になったそうです。カリスマ的に世の中を変えようとすることで受けていたストレスを癒すために、あちこちのファンに手を出していたと。彼はもともとおとなしい性格で、人前に出て闘うタイプではありませんでした。

その後、ワシントンでの有名な演説があります。これも伝記作家がいうには、編集版ではなく全文を読んだほうがいいと。僕も読んでみました。敵対勢力への批判をかなりしていて、格好いい面との両面性がある。彼のそうした面や、大きなプレッシャーを抱え、愛人を作っていた部分も含めて見ないと、ただの偶像になってしまうんです。敵対する人が揚げ足を取れば、公民権運動全体を否定できてしまう。そうならないためにも、きちんと検証するべきだと、その作家は語っています。いろいろな面のある1人の人間が、プライバシーや命を賭けて語ったのが、あの演説だった。そう見たほうが、彼の人物像を立体視できると思います。

現代社会に起きているのは、格差や環境、人種やジェンダーの平等といったことを連結して考えるZ世代と、黒人コミュニティを含む保守性とのせめぎ合い。だからこそ、キングの抱えていた強さと弱さから普遍性を見出すことが必要ではないでしょうか。ただ、彼はある意味アンタッチャブルで、不都合な部分が語られにくい。そこをどう超えていくか。

彼の亡くなった後が、また大変でした。暗殺の翌年から、誕生日を祝日にしようという動議が毎年出され、否決され続けた。南部の州が結託すればなんでも否決できるんです。それを見かねたのがスティービー・ワンダー。3年ほど芸能活動を休んで、記念日制定のデモをやった。動議は通りました。しかも保守的なレーガンの署名でね。白人にも人気のあったスティービーのような人が、この運動を後押しした。これが実は、ホイットニーがハーフタイムショーで国歌を歌ったことにも繋がります。そしてオバマにも。

公民権運動のリーダーとして
大きな影響を与えた!


【マーティン・ルーサー・キング・ジュニア】人種差別の解消に尽力した偉人の語られざる顔とは!?1963年のワシントン大行進中に、ケネディ大統領およびジョンソン副大統領と会談するキング牧師。テキサス州出身のジョンソンが、強く公民権法を支持していた

【マーティン・ルーサー・キング・ジュニア】人種差別の解消に尽力した偉人の語られざる顔とは!?キングはキリスト教バプテスト派の牧師。マーティンという名前は、宗教改革を行ったマルティン・ルターから命名された。ちなみに父親も牧師で、同じ名前

非暴力主義が
モットーだった!


【マーティン・ルーサー・キング・ジュニア】人種差別の解消に尽力した偉人の語られざる顔とは!?アラバマ州のセルマからモンゴメリーへのデモ行進。帽子を被っているのがキングで、その右が妻のコレッタ。右端のジョン・ルイスはワシントン大行進を主導したうちのひとり

 マーティン・ルーサー・キング・ジュニアの歴史 

【マーティン・ルーサー・キング・ジュニア】人種差別の解消に尽力した偉人の語られざる顔とは!?キング牧師が暗殺されたのは、メンフィス市内のモーテル〈ロレアンヌ〉のバルコニー。一緒に泊まっていたのは、はじめて会った女の子だったという。FBIによる彼への調査の内部資料は、2027年に公開される見込みとなっている。

映画公開情報
キング牧師とともに闘ったある活動家に迫る話題作!

【マーティン・ルーサー・キング・ジュニア】人種差別の解消に尽力した偉人の語られざる顔とは!?ワシントン大行進の立役者でありながら、長く忘れられてきた公民権活動家バイヤード・ラスティンに光を当てる意欲作。ある意味でタブーに斬り込む内容ともいえ、なにをどう見せてくれるのか気になるところ。
『ラスティン: ワシントンの「あの日」を作った男』
監督:ジョージ・C・ウルフ
出演:コールマン・ドミンゴ、クリス・ロック
11月17日(金)よりネットフリックスにて独占配信

【スティーブ・ジョブズ】カリスマの“魔法”は世界をどう変えたのか!?教えてくれたのは
[モーリー・ロバートソン]
Morley Robertson
1963年、NY生まれ。日米双方の教育を受け、東京大学とハーバード大学に現役合格。現在はタレント、国際ジャーナリスト、音楽家、DJとして各方面で幅広く活動している。最近はモーション・グラフィックスなどの映像加工にハマり中。

この偉人になりたい度数
80/100
彼になっても、強く出られるかは別問題!
「彼になったとして、僕がテレビで強くなにかを非難したところで、全部カットされ、次から呼ばれなくなるだけ。だから僕は沈黙を守り、またテレビに出してもらいます」

“アメリカ偉人伝”のラインナップ
【アーネスト・ヘミングウェイ】タフで男らしい文豪の隠された真の姿とは!?
【マーク・ザッカーバーグ】IT界を牽引する若き天才はどう世界を変えた!?
【マドンナ】お騒がせなポップの女王の正体とは!?
【クエンティン・タランティーノ】映画ファンの心を掴んだ男の本当のすごさとは!?
【カート・コバーン】カリスマの音楽はどのようにして生まれてきた!?
【マイケル・ジョーダン】バスケを愛しバスケに愛された男の時代性とは!?
【ボブ・ディラン】世界中の人々を魅了し続ける男の実像とは!?
【マイケル・ジャクソン】世界中に多大な影響を与えた真のすごさとは!?
【スティーヴン・スピルバーグ】世界的巨匠が作品世界に込めた“ある視点”とは!?
【ホイットニー・ヒューストン】不世出の歌姫が後世に遺した大きな希望とは?
【マリリン・モンロー】世界を魅了したセックスシンボルの光と影とは!?
【ウォルト・ディズニー】夢と希望の国を作り出した偉人が遺したものとは!?
【スティーブ・ジョブズ】カリスマの“魔法”は世界をどう変えたのか!?
【アンディ・ウォーホル】ポップアートの奇才はなにを企み、なにを夢見たか!?
【ジョン・F・ケネディ】第35代アメリカ合衆国大統領の真実の顔とは!?
【イーロン・マスク】壮大すぎる夢追い人は救世主かペテン師か!?
【エルヴィス・プレスリー】アメリカの光と影を映し出すロックの王様!

 
Information

雑誌『Safari』12月号 P234~235掲載

“アメリカ偉人伝!”の記事をもっと読みたい人はコチラ!

●『Safari Online』のTikTokがスタート!
こちらからアクセスしてみて!

文=野中邦彦
text : Kunihiko Nonaka(OUTSIDERS Inc.)
photo by AFLO
〈オメガ〉の“プロフェッショナルライン”に注目。復活した“レイルマスター”と 新色の“シーマスター”、心躍るふたつの名作。
SPONSORED
2025.06.27

〈オメガ〉の“プロフェッショナルライン”に注目。
復活した“レイルマスター”と 新色の“シーマスター”、心躍るふたつの名作。

〈オメガ〉を象徴するコレクションとして、1957年に創設された“プロフェッショナルライン”3部作。その中でも“レイルマスター”は、鉄道職員や電気技師といった強い電磁場が発生する場所で作業する人々を耐磁性の高さで支えた名作。そして、“シーマ…

TAGS:   Urban Safari Watches
〈ブランパン〉の名シリーズから新作登場。大人の休日にはシックなダイバーズを。
SPONSORED
2025.06.27

〈ブランパン〉の名シリーズから新作登場。
大人の休日にはシックなダイバーズを。

時計の人気トレンドにヴィンテージスタイルがある。1953年に誕生し、基本デザインを継承する“フィフティ ファゾムス”もそのひとつかもしれない。だがそこに懐古趣味はなく、常に新鮮な魅力を感じさせる。機能美という不変の価値があるからだろう。新…

TAGS:   Urban Safari Watches
リーダーにふさわしい〈グラスヒュッテ・オリジナル〉の一本。端正な機械式時計で仕事にも優雅さを。
SPONSORED
2025.06.27

リーダーにふさわしい〈グラスヒュッテ・オリジナル〉の一本。
端正な機械式時計で仕事にも優雅さを。

クルマやカメラなどドイツの工業製品の高い機能と品質は世界的に知られる。時計も例外ではない。〈グラスヒュッテ・オリジナル〉はその代表格だ。クラシカルなスタイルに決して派手さはない。だが漂う気品は、伝統に培われた揺らがぬ時計作りの哲学と美学を…

TAGS:   Urban Safari Watches
〈パネライ〉の傑作がさらなる進化。タフさと品格を併せ持つエレガントダイバーズ。
SPONSORED
2025.06.27

〈パネライ〉の傑作がさらなる進化。
タフさと品格を併せ持つエレガントダイバーズ。

歴史に裏打ちされた信頼性と機能。そして、存在感を放ちながら、品を保つデザイン性。そのすべてを兼ね備えた〈パネライ〉の“ルミノール マリーナ”は、知性と余裕をまとう大人にふさわしい腕時計だ。その傑作コレクションが今年、大胆な進化を遂げたとい…

TAGS:   Urban Safari Watches
〈エドックス〉の人気ダイバーズ時計が日本限定で登場!“とろやわ”ストラップで夏のビーチを満喫!
SPONSORED
2025.06.25

〈エドックス〉の人気ダイバーズ時計が日本限定で登場!
“とろやわ”ストラップで夏のビーチを満喫!

煌めく太陽に、白い砂浜、青い海。夏のビーチ遊びの季節がやってくる! ラフなビーチコーデの手元だって、やっぱり快適さを求めておきたい。そんな海遊びにはラバーストラップのダイバーズ時計が最適だ。そこでプッシュしておきたいのが〈エドックス〉の日…

TAGS:   Fashion Watches
〈ザ・ブセナテラス〉で過ごす憩いの時間!沖縄バカンスは贅沢でリラクシングなステイを!
SPONSORED
2025.06.25

〈ザ・ブセナテラス〉で過ごす憩いの時間!
沖縄バカンスは贅沢でリラクシングなステイを!

〈ザ・ブセナテラス〉は、日々の疲れを癒し、日常では味わえない贅沢な時間を過ごせる。充実したホテルの設備・サービス、海に面した立地を生かしたマリンアクティビティプログラム。ここは1泊2日くらいでは気づけない、魅力を秘めている。パートナーとと…

TAGS:   Stay&Travel
これでライフスタイルが見違える!新鮮アイテムでいつもの夏をアップデイト!
SPONSORED
2025.06.25

これでライフスタイルが見違える!
新鮮アイテムでいつもの夏をアップデイト!

いよいよ待ちに待った夏。バカンスを楽しみにしている人も多いだろう。たとえ予定がなくても、気温の上昇とともに気分をぐっと上げていきたい。そんなときに必要なのが、ライフスタイルをアップデイトするためのアイテムだ。これさえあれば、いつもとはひと…

サンダルは履き心地と見た目のよさで選ぶ!夏に大活躍するサンダルは、〈ロンハーマン〉別注が優秀!
SPONSORED
2025.06.23

サンダルは履き心地と見た目のよさで選ぶ!
夏に大活躍するサンダルは、〈ロンハーマン〉別注が優秀!

夏がやってくると気分も開放的になり、休日はお出かけモードに。街にショッピングに行くのもいいし、たまにはアウトドアで自然の中に身を置くのも気持ちよさそうだ。もちろん、ご近所を散歩する程度で、家でゆっくり過ごすというのも幸せ。で、そのどんなシ…

TAGS:   Fashion
〈ジラール・ペルゴ〉夏の限定モデルが登場!サマーバカンスの相棒は“懐色”の復刻ダイバーズで!
SPONSORED
2025.06.20

〈ジラール・ペルゴ〉夏の限定モデルが登場!
サマーバカンスの相棒は“懐色”の復刻ダイバーズで!

マニュファクチュール=自社一貫生産体制を2世紀以上も貫き続けるスイス、ラ・ショー・ド・フォンの名門時計ブランド〈ジラール・ペルゴ〉。そのコレクションはどれもクラシカルかつドレッシーで気品に満ちたもの。そんなイメージを、文字どおりあざやかに…

TAGS:   Fashion Watches

NEWS ニュース

More

loading

ページトップへ