Gastronomic City Bangkok
アジアの美食トレンドを牽引する、バンコクのトップレストラン。
先頃、シンガポールで2023年度『アジアのベストレストラン50』が発表された。コロナ禍を経てアジアの美食地図が大きく変化する中で大躍進したバンコク。今回は1位初受賞店と5位に躍進した、バンコクの注目の2店をご紹介する。
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さる3月28日、シンガポールで2023年度『アジアのベストレストラン50』が発表され、アワードセレモニーにはアジア中から約1000人のシェフや食の専門家が集結した。今回は、コロナ禍の影響もあり、各国の美食のトレンドや勢力地図にも大きな変化が見られ、躍進したのはタイのバンコク勢である。国別ではトップの日本に次いで9店がベスト50にランクインした。
注目は、1位を初受賞したバンコクの〈ル・ドゥ(Le Du)〉だ。タイ生まれのオーナーシェフのトン氏は、バンコクの大学を卒業後に、NYの名門料理学校のCIAに進学。〈イレブン・マディソン・パーク〉や〈ジャン・ジョルジュ〉といったNYの3つ星レストランで修業後、バンコクに戻り〈ル・ドゥ〉を立ち上げた。タイの伝統料理のレシピや地元食材を紐解き、フランス料理の技術や視点を取り入れ、独自に洗練させたフュージョン料理のスタイルを確立。『ミシュラン バンコク版』で星を獲得するなど、アジア中の美食家たちを瞬く間に魅了。そして今年はじめてアジアNo.1の称号を手に入れた。コース仕立ての料理は、ローカルの新鮮な魚介類やハーブ、スパイス、フルーツを多用し、様々なフレーバーや食感が重なり合い、五感の未体験ゾーンを楽しく刺激する。
5位に入賞した〈ガガン アナンド(Gaggan Anand)〉は、同ベスト50で過去に4年連続1位に輝いたシェフのガガン氏が、2019年末に新たにバンコク市街に立ち上げた一軒家レストラン。シェフ自身がコンセプトにする“アグレッシブ・インド料理”のエスプリは健在。ヤギの脳のムースや、ゲストが手を使わずに皿ごと舐め上げる料理など、奇想天外で驚きにあふれる演出は、レストランという既成概念すら覆る体験ができるはずだ。
アジアでいち早く、国際的な観光の門戸を開いたバンコク。なかでも美食は、重要な観光コンテンツと位置づけ、国を挙げて盛り上げている。この2店を筆頭に、美食巡りを目的にバンコクを訪れてほしい。
[ ル・ドゥ ]
楽しさにあふれるヌーベル・タイ料理。
タイ語で“季節”を意味する店名どおり、地元の季節の食材にフォーカスして、コース仕立てで表現する新しいスタイルのレストラン。店内はカジュアルな雰囲気で価格もリーズナブル。スパイスは多用するものの辛すぎることもなく、だれでもわかりやすく美味しい料理である。
地元の魚や肉を中心に、タイ固有のハーブやフルーツで新たな味覚を表現している
カップ型の薄い生地の中にカレー風味のサラダを詰めたアミューズ
新鮮な巨大川エビを使ったシグネチャー料理。グリルしたエビにはその頭のエキスを使ったトムヤムスープがかけられ、地元米のリゾットが添えられる
イカなどの魚介類を使ったひと皿
ジャックフルーツのソルベを中心としたトロピカルなデザート
[ ガガン アナンド ]
奇想天外な着想で五感を刺激する店。
アジアで最も人気のシェフのひとり、ガガン氏が、自身のフルネームを掲げて2019年にオープン。料理は料理法や味わいだけでなく、器や照明や音楽や提供の仕方に至るまで、思いもよらぬ演出を用いて驚かす。そのライブ感も、この店の味わいどころである。
ガガン氏の代表料理“Lick it UP!”は、皿にチャツネで描かれた地図を舐め上げて食べるのが作法
まるで解剖した小動物の脳のように、リアルに型で生成されたアミューズ。見た目を裏切る美味しさである
ブラッディ・メアリーに着想を得た前菜。氷のキューブの器の中に盛られた黄緑のワサビのソルベに、トマトやチリやセロリから抽出した真紅のソースが注がれる
印象的なオリジナルの器に盛られた肉料理
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●ル・ドゥ[Le Du]
住所:399/3 Silom Soi 7, Bangrak, Bangkok 10500 Thailand
TEL:+66-92-919-9969
URL:https://www.ledubkk.com/
●ガガン アナンド[Gaggan Anand]
住所:68 Sukhumvit 31, Khlong Tan Nuea, Watthana, Bangkok 10110 Thailand
TEL:+66-98-883-1022
URL:https://gaggananand.com/
『Urban Safari』Vol.34 P35掲載
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美食評論家
1964年神奈川県葉山生まれ。ファッションからカルチャー、美食などをテーマに新聞や雑誌、テレビで活動中。主な著書に『名店レシピの巡礼修業』(世界文化社)がある。2013年より『世界ベストレストラン50』の日本評議委員長も務める。’22年春より、JR九州が運行する「ななつ星in九州」の車内誌の編集長に就任。