Gastronomic City KARUIZAWA
ラグジュアリーな美食エリアとして注目される軽井沢。
豊かな自然環境を背景に多彩でクオリティの高い食材に恵まれた軽井沢。その潜在力を美食料理で表現しようと、気鋭の若手シェフたちが挑んでいる。今回は、注目の2 店舗の料理を取り上げながら、この土地の魅力を探る。
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今年の3月16日に、ホテルやレストラン事業を手掛けるひらまつがオープンさせた〈THE HIRAMATSU 軽井沢 御代田〉。ここは、そのクオリティの高さだけでなく、日本におけるローカルガストロノミーの拠点としての、“軽井沢”のブランド価値をも高めるに違いない。
御代田の豊かな森の中にある6万㎡の敷地にわずか37室という、すべてが圧倒的なスペーシャス感を演出するホテルだが、特筆すべきは食体験であろう。
料理長に就任した柳原章央シェフは、〈レストランひらまつ 広尾〉や〈メゾンポール・ボキューズ〉、渡仏して〈レストランひらまつ パリ店〉などでも研鑽を積んだ、グループ内の若手ホープの1人である。その技術の確かさや表現の引き出しの多彩さで、洗練されたフランス料理を作り出す。おそらく長期滞在であっても、食で飽きることはないと実感した。オープンに先駆けて、長野県の生産者を巡ったり、地元食材の研究にも熱心なので、ジビエや伝統食などの発掘も含め、今後のさらなる進化にも期待してしまう。
地元の食材の魅力という意味では、〈旧軽井沢KIKYO キュリオ・コレクション by ヒルトン〉の中のレストラン〈ソノリテ〉も素晴らしい。石井まなみシェフは、ほぼすべて地元の長野県の食材を使い、大地に根ざした骨格のしっかりした料理の数々を生み出している。
石井シェフは、神戸3つ星の〈カセント〉でスーシェフまで勤め上げ、その後スペイン・アストゥリアスの2つ星〈Casamarcial(カーサ マルシアール)〉、同ガリシアの〈A Tafona by Lucía Freitas(アタフォーナ バイ ルシア フレイタス)〉を経て、2020年4月に同店の料理長に就任した。彼女のグローバルな経験と好奇心が生み出すクリエーションは、“土地を味わう”という味覚の楽しみ方をも私たちに教えてくれるはずだ。
さてこの春、新たな美食体験を求めて軽井沢に出向いてはいかがだろうか。
[ザ・ひらまつ 軽井沢 御代田]
大自然の中で洗練の極致を味わう贅沢。
レストラン事業のリーディング・カンパニーだけあり、ここのホテルの料理のレベルは極めて高い。敷地内には温室があり、今後は自家製の野菜やハーブも育てたいと柳原章央料理長。地元食材の比率も上げて、東信州のローカルの魅力を料理で表現したいという。
鹿肉の肉質も素晴らしいが、季節ごとの付け合せの野菜も美味。ちなみに、メインダイニングは1Fの〈ル・グラン・リス〉だ
完璧な火入れが施された魚料理
地元の信州プレミアム牛を使った絶品の一皿
林檎をテーマにしたデザート。長野県は40種を超える林檎を生産する
ホテルは大自然の森の中に位置している。施設内にはメインダイニングのほかに、オールデイダイニングや大自然に抱かれた屋外の“TAKIBIラウンジ”などを配しているので、食空間としての楽しみの幅も魅力である
[ソノリテ]
軽井沢の大地の恵みを骨太の料理に仕立てる。
旧軽井沢の一等地に位置するこのホテルでは、レストランだけの利用も可能。洗練された内装は好印象だ。石井シェフは素材の持ち味を生かしたシンプルな料理を作るが、その素材選びのセンスが際立つ。彼女の軽井沢の暮らしぶりまで透けてみえる、素敵な食体験ができるはずだ。
信州の風沢舎のたまごと、根と葉を別々に料理したホウレン草。シンプルだが、強烈に美味しい一皿
国内外の料理人たちが惚れこむ、菅平高原〈ダボス牧場〉のサフォーク種の羊肉のグリル。クセもなく爽やかに凝縮された肉の旨味に感服
県内で養殖されるトラウトの王様、イトウは脂乗りもよく、絶妙な火入れで提供。それぞれの料理には、長野の旬の野菜類が最適料理で添えられる
モダンにデザインされた店内
●THE HIRAMATSU 軽井沢 御代田
ル・グラン・リス(1F メインダイニング)
住所:長野県北佐久郡御代田町塩野375-723
営業時間:17:30~20:00 L.O 不定休
TEL:0267-31-5680(9:00~18:00)
URL:https://www.hiramatsuhotels.com/miyota/
※10歳以下のお子様のご利用は、ご相談ください。
●ソノリテ
住所:長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢491-5 旧軽井沢 KIKYO キュリオ・コレクション by ヒルトン 1F
営業時間:18:00~20:00L.O(22:00CLOSE) 不定休
TEL:0267-41-6990
URL:https://www.kyukaruizawa-kikyo.com/restaurants/sonorite
『Urban Safari』Vol.20 P31掲載
美食評論家。1964年神奈川県葉山生まれ。ファッションからカルチャー、美食などをテーマに新聞や雑誌、テレビで活動中。主な著書に『名店レシピの巡礼修業』(世界文化社)がある。2013年より“世界ベストレストラン50”の日本評議委員長も務める。今春より、JR九州が運行する「ななつ星in九州」の公式ムービーに主演している。