Gastronomic City NIIGATA
美食のフロンティアとして今、国内外から注目される新潟県。
さる3月9日に『新潟ガストロノミーアワード』で県内の秀でた100の飲食店が、有識者によって選ばれた。自治体が主導するリストというのは全国で初の試み。知られざる名店揃いのこのリストの中でも、選りすぐりの2店を紹介する。
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『新潟ガストロノミーアワード』は、新潟県が主導するかたちで、県内の風土や歴史や、食文化を表現する飲食店を評価・顕彰するために、2022年に創設された。筆者は、その特別審査員長を務めさせていただいたが、新潟は地域ごとに多彩な食材や食文化を誇り、加えて若手の優れた料理人たちを擁していることに改めて驚かされた。是非リストをじっくりご覧いただきたいが、今回はその中でも極めて個性的でかつ美味しい象徴的な2店をご紹介したい。
〈my farm to table おにや〉は、新潟県出身の鬼嶋大之さんがオーナーシェフを務めるお店。鬼嶋さんは修業を経て地元の新潟で開業。試行錯誤の末に鶏の専門料理店として独自の調理方法を確立し、県内外の多くのファンを魅了する。鶏をメインの食材として扱うのだが、そのスタイルは極めてユニークなのだ。鬼嶋さんは自家農場を持ち、鶏だけでなく“鶏肉の宝石”と呼ばれる去勢した雄鶏、シャポン(CHAPON)も自分で育てる。生産から調理、提供まで行うことで食材の命から携わり、独自の世界観を料理で表現するのである。名物料理の鶏の刺身などはその象徴で、鶏のあらゆる部位を生で食べさせる。鶏の生食は世界中でも珍しく、新鮮なのはもちろんだが驚くほど旨い。
新潟市郊外の〈福楽(ふらく)〉は、店主の媚山 潤さんが、閑静な住宅街にある祖父の家をリノベーションして2022年3月に立ち上げた日本料理店である。ゆえに情報もほとんどないが、その独創的な日本料理はフーディたちも舌を巻くはずだ。媚山さんは、狩猟や釣りを20年以上にわたり趣味としており、食材の多くは彼自身が撃ったジビエや釣った魚、あるいは採った山菜などで構成されている。言葉が適切かはわからないが、フィールド・トゥ・テーブルの店である。新潟の豊穣なる大自然を、しかも日本料理で味わえるのは稀有な美食体験になるはずだ。
この2店だけでも、新潟を訪れる価値が十分にあると太鼓判を押したいと思う。
[ my farm to table おにや ]
自ら育てた鶏で世界を驚かす料理を作る。
一般的な飼育期間を優に超える大切に育てた鶏を自らさばき、部位ごとに最適な調理法で提供する。特に、飼育と去勢が難しい雄鶏のシャポンは、鶏肉のポテンシャルを最高の状態まで引き出している。リニューアルされたモダンな店内の雰囲気も楽しみのひとつ。
名物の鶏のお刺身は、新鮮な鶏を部位ごとに刺身で楽しむ趣向。特に内臓系の生食は珍しい
シャポンの炭火焼は、ふっくらとした身質で豊穣な味わい
鶏のユッケには、同じ自家農園の鶏の新鮮な玉子が添えられる
オーナーシェフの鬼嶋大之さんは、新潟県の新発田出身。独自の調理方法と理念を持ち、地元からローカル・ガストロノミーの魅力を発信する
先頃、内外装をご覧のようなモダンな雰囲気にリニューアルし、今の店名に変えたばかり
[ 日本料理 福楽 ]
自ら撃つ・釣る・採る自然の恵みを料理。
季節ごとの食材を、自らフィールドに出かけて調達し、日本料理に仕立てるという稀有な店。野鴨や鹿といったジビエや、日本海の青物や底物の魚など、季節の新潟の野生の食材を使った料理は、旨いだけでなく滋味にあふれている。ワインや日本酒のペアリングも楽しい。
熊とすっぽんのしゃぶしゃぶは、野性味と地味と旨味の三味が渾然一体に
野鴨と鹿の前菜には新潟の地酒を合わせて
地元で育てられた鯉の刺身。こちらも絶品である。締めは季節の食材の土鍋ごはんが供される
地元出身のオーナーシェフの媚山 潤さんは、自ら日夜フィールドに出かけて食材を確保する
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●my farm to table おにや
住所:新潟県新潟市中央区東堀前通8番町1377
営業時間:18:00~22:30(22:00LO)
不定休
TEL:025-210-7939
URL:https://www.tablecheck.com/shops/oniya/reserve(予約)
●日本料理 福楽
住所:新潟県新潟市江南区大渕1196-2
営業時間:11:30~13:00(最終入店)、17:00~19:00(最終入店)
※昼は前日、夜は2日前までに要予約
定休日:火・水曜
TEL:025-282-7459
URL:https://furaku2022.wixsite.com/-site
『Urban Safari』Vol.32 P35掲載
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美食評論家
1964年神奈川県葉山生まれ。ファッションからカルチャー、美食などをテーマに新聞や雑誌、テレビで活動中。主な著書に『名店レシピの巡礼修業』(世界文化社)がある。2013年より『世界ベストレストラン50』の日本評議委員長も務める。’22年春より、JR九州が運行する「ななつ星in九州」の車内誌の編集長に就任。