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URBAN SAFARI アーバン サファリ

2021.12.04

Gastronomic City TOKYO
レストランの未来のトレンドの形を示す東京の2店舗。

コロナ禍の収束を見据え、世界のレストラン業界が動きはじめている。それは生き残りをかけた再起動というだけでなく、近未来のレストランのトレンド戦略も含まれる。今回はその象徴的な店をご紹介する。

レストランの未来のトレンドの形を示す東京の2店舗。21世紀以降、人々がレストランに求める価値観は、単なる皿の中の美食だけでなくデザインや空間設計、ファッションやアートまで含まれるようになった。それを端的に示したのが『世界ベストレストラン50』であるが、コロナ禍を経てさらに顕著になっていると筆者は実感する。 

そのトレンドを象徴する店が2021年10月末に東京・銀座にオープンした〈グッチ オステリア ダ マッシモ ボットゥーラ トウキョウ〉である。この店は、くだんの『世界ベストレストラン50』で2度の世界一に輝いた、イタリア・モデナの〈オステリア フランチェスカーナ〉のシェフ、マッシモ ボットゥーラ氏と〈グッチ〉の協働で生まれた店である。

このレストランの味わいどころを端的にいえば、“美食とファッションの融合”である。店の演出は内観からテーブルウエアの微細に、〈グッチ〉の世界観が表現されている。料理はマッシモ氏や東京ヘッドシェフ アントニオ氏らが手掛け、〈グッチ〉のファッションが加味されているところがミソである。“ファッションを楽しむように食べる”という食の未来のあり方を強烈に印象づけるものである。料理はイタリアンをベースにしながらも、ウィットや謎かけを忍ばせる。

その文脈で筆者が注目するもうひとつの店が、マンダリン オリエンタル 東京の〈タパス モラキュラーバー〉である。この店の味わいどころは“美食とアートの融合”である。シェフの牛窪健人氏は、アートを学んだ経歴を生かし、料理に現代アート的な表現を持ちこみ、味覚だけでなくユニークな手法で私たちの潜在意識や想像力まで刺激する。カウンター8席だけで一斉スタートする形式は、料理とアートを巡る小劇場のようでもある。

レストランとは、ただ美味いものを食べるだけの場所ではない。ではアフターコロナの時代に、私たちはそこになにを求めるのか。それを考える意味でも訪れる価値のある2店であると思う。

Gucci Osteria da Massimo Bottura Tokyo
[ グッチ オステリア ダ マッシモ ボットゥーラ トウキョウ ]
〈グッチ〉の世界観とともに味わうマッシモの料理。


名実ともに世界トップのシェフ、マッシモ・ボットゥーラ氏と〈グッチ〉が10月28日、東京・銀座の〈グッチ並木〉の最上階にオープンした。メインダイニングは48席を誇り、そのほかにルーフトップテラス席やバーも配し、多様な楽しみを提供する。

レストランの未来のトレンドの形を示す東京の2店舗。©Hiroki Kobayashi
“和牛 ミラノ風”は、ミラノ風カツレツの味わいを、豚ではなく和牛で表現したモダンな一皿

レストランの未来のトレンドの形を示す東京の2店舗。©Gabriele Stabile
“ラーメンになりたいパルミジャーナ”は、イタリア料理と日本のラーメンを融合させた一品。スープは野菜だけの出汁を使い、アーリオオーリオで仕立てた麺が添えてある

レストランの未来のトレンドの形を示す東京の2店舗。©Hiroki Kobayashi
“ババミス”は、ババとマスカルポーネムースで仕上げる

レストランの未来のトレンドの形を示す東京の2店舗。©Hiroki Kobayashi
1階のエントランスはグッチ デコール コレクションの壁紙を使用

レストランの未来のトレンドの形を示す東京の2店舗。©Hiroki Kobayashi
プライベートダイニングルームは、アンティークの鏡と家具を使い独創的な空間を演出

Tapas Molecular Bar
[ タパス モラキュラーバー ]
料理を現代アートとして提供する楽しい舞台。


15周年を迎えた、マンダリン オリエンタル 東京を代表するレストラン。モントリオール出身のシェフ、牛窪健人氏は分子料理の手法とアート的な表現で料理をエンターテイメントとして提供する。とはいえ世界のソウルフードを本歌にし、親しみある味わいである。

レストランの未来のトレンドの形を示す東京の2店舗。和牛のカナダ風“モントリオールに旅した和牛”

レストランの未来のトレンドの形を示す東京の2店舗。中身にキャビアをたっぷり挟んだミニチュアドーナツは、シャンパンとの相性も抜群

レストランの未来のトレンドの形を示す東京の2店舗。“金魚の脱走”は、牛窪シェフが飼っていた金魚が水槽から飛び出して息絶えてしまったという出来事から着想。外の世界は雲の上の天国だったという“哀れみ”を、食べることで味わう料理

レストランの未来のトレンドの形を示す東京の2店舗。カウンター8席だけの劇場型のダイニング

 
Information

●グッチ オステリア ダ マッシモ ボットゥーラ トウキョウ
住所:東京都中央区銀座6-6-12 グッチ並木4F
営業時間:ランチ11:30~14:30(日曜11:30~15:30)、ディナー18:00~23:00(月曜~土曜)、アペリティーヴォ16:00~18:00、バー18:00~23:00
※アペリティーヴォとバーは月曜~土曜、テラス席のみ、雨天クローズ。状況によっては営業時間が変更となる場合も。
不定休
TEL:03-6264-6606
URL:https://www.gucciosteria.com/ja/tokyo

●タパス モラキュラーバー
住所:東京都中央区日本橋室町2-1-1 マンダリン オリエンタル 東京38F
営業時間:木曜・日曜は18:00~20:00の1回、金曜・土曜は18:00~20:00と20:45~22:45の2回
定休日:月曜~水曜
TEL:0120-806-823
URL:https://www.mandarinoriental.co.jp/tokyo/nihonbashi/fine-dining/restaurants/fusion-cuisine/tapas-molecular-bar

『Urban Safari』Vol.25 P39掲載

取材・文=中村孝則 text:Takanori Nakamura
美食評論家。1964年神奈川県葉山生まれ。ファッションからカルチャー、美食などをテーマに新聞や雑誌、テレビで活動中。主な著書に『名店レシピの巡礼修業』(世界文化社)がある。2013年より“世界ベストレストラン50”の日本評議委員長も務める。今春より、JR九州が運行する「ななつ星in九州」の公式ムービーに主演している。
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