Gastronomic City WAJIMA
奥能登の輪島で日本の美食旅の魅力を味わい尽くす。
日本海に突き出した能登半島の北部に位置する石川県輪島市。日本海が育んだ豊かな大自然に加え、古くから北前船の寄港地として栄えた歴史を誇る。近年は美食を楽しめる穴場として、国内外のフーディたちも熱い視線を送る。
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輪島市は、石川県能登半島の北部の“奥能登”と呼ばれるエリアにある。輪島は輪島塗や朝市でも知られるが、豊穣な海の幸・山の幸に恵まれ、農業も古くから盛んである。2011年には“能登の里山里海”が世界農業遺産にも登録された。加えて“あえのこと”と呼ばれる土着の新嘗祭が象徴するように、農耕と自然と食文化が渾然一体になった、食を巡る独自の風土を今も色濃く残している。
フランス料理店〈ラトリエ・ドゥ・ノト〉(『ミシュランガイド北陸2021特別版』一つ星、グリーンスター獲得)は、そういった奥能登の魅力そのものを、食事を通じて丸ごと体感できる美食レストランとして、海外の食通からも注目されている。オーナーシェフの池端隼也氏は、地元の輪島生まれ。高校卒業後に大阪の料理専門学校に進むと、大阪のレストランに8年勤めて渡仏。パリの三つ星レストランを経て、ブルゴーニュのレストランで3年半ほど研鑽を積んだ。
「そもそも田舎で美食レストランなんて成り立たない」と思いこんでいた池端氏だったが、地元は海あり山ありで食材の宝庫だと目覚め、地元の輪島でレストランを開業した。元老舗の塗師屋の文化財のような古民家をリノベしたダイニングで食す、四季折々の手のこんだ料理は、ローカル・ガストロノミーのお手本のような“口福感”を味わえる。ワインはもちろん、能登の地酒とのマリアージュも創意にあふれ面白い。
能登といえば、やはり日本海の魚を使った寿司も捨て難い。オススメは断然、市内の老舗寿司店の〈伸福〉だ。日本海の天然物にこだわりを持つ店主が握る寿司は、素材力だけでなく随所に季節感と工夫を取り入れ、飽きることはない。味はもちろんボリューム感と、それに反比例する値段は正直驚きですらある。
奥能登といっても羽田空港からのと里山空港へは1時間弱のフライト。空港から輪島市内は“ふるさとタクシー”で片道900円と近い。日本美食旅の知られざる醍醐味を、存分に楽しんでほしい。
[ラトリエ・ドゥ・ノト]
能登の食材を絶品フランス料理で味わう。
この店は、地元出身のシェフが、合計4年半のフランス修業の後に輪島の魅力に目覚め、2014年に市内に立ち上げた。フランス料理の基礎をベースにしながらも、ジャンルにとらわれず、和食や伝統食の技法を取り入れて、革新的で軽やかな料理を作り出している。
“春蘭 サバ 海藻”。奥能登の新鮮なサバや海藻を、小松菜を練りこんだクレープで包む料理
“ノドグロ のと115”は、地物のノドグロをメインに能登沖の舳倉島のワカメを添えて。ソースは地元名産の原木椎茸“のと115”の出汁を使用
コシアブラやウドやワラビなど採れたて山菜をザバイヨン・ソースでいただく“山菜ザバイヨン”。地酒“奥能登の白菊”との組み合わせは絶佳
古民家を改装した店内は中庭を囲むように26の席を配す
シェフの池端隼也氏
[輪島寿司処 伸福]
飛行機に乗っても行く価値大、コスパ最強の寿司店。
輪島市内の地元民も足繁く通う地元の有名店である。店主は輪島周辺の日本海の天然物だけしか使わない。新鮮な魚介類はもちろんだが、発酵させたサバの寿司など、この店でしか出合えない味覚が嬉しい。冬場は、新鮮なズワイガニの鍋を格安で食べることができる。まさに穴場である!
こちらはランチメニューの旬な握りのセットだが、お好みでも1人前5000円を目安に存分に楽しめる
握りはもちろんだが、全9品からなる季節のコース料理も堪能できる
2Fが座敷で1Fはご覧のようなカウンターを配している。親切な店主の説明もごちそうだ。ランチは、名物の海鮮丼もオススメ
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●ラトリエ・ドゥ・ノト
住所:石川県輪島市河井町4-142
営業時間:ランチ11:30~13:00LO、ディナー18:00~20:00LO
不定休
TEL:0768-23-4488(10:00~)
URL:https://atelier-noto.com
●輪島寿司処 伸福
住所:石川県輪島市河井町5-41-23
営業時間:11:30~14:00、17:00~22:00
不定休
TEL:0768-22-8133
『Urban Safari』Vol.22 P35掲載
美食評論家。1964年神奈川県葉山生まれ。ファッションからカルチャー、美食などをテーマに新聞や雑誌、テレビで活動中。主な著書に『名店レシピの巡礼修業』(世界文化社)がある。2013年より“世界ベストレストラン50”の日本評議委員長も務める。今春より、JR九州が運行する「ななつ星in九州」の公式ムービーに主演している。