Gastronomic City MIYAKOJIMA
沖縄から世界に発信する、宮古島の最新ガストロノミー事情。
美食の最新スポットとして、国内外のフーディーたちが注目する宮古島。とりわけ、若手シェフたちが島の食材で挑む料理の数々には新鮮な発見がある。今回は、その象徴ともいえる気鋭のフレンチとイタリアンをレポートする。
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沖縄県の離島、宮古島に気鋭のフレンチやイタリアンの料理店があると聞けば、多くの読者は意外だと思うに違いない。かくいう筆者も半信半疑であったが、実際に訪れて驚いた。
まず、信頼できる美食家たちの間でも噂になっている〈エタデスプリ〉をご紹介しよう。この店は、宮古島出身の若手シェフ、渡真利泰洋氏によるフランス料理店である。食材のほとんどを宮古島で調達しているのだが、特筆すべきは"地産地消"や"ファーム・トゥ・テーブル"といった口当たりのいいコンセプトに留まらず、琉球の食文化までも紐解き、世界でここにしかない革新的なフランス料理を貪欲に追求している点にある。使う食材も、島の珍しい魚からイラブーというウミヘビの燻製や子ヤギ、なかには孔雀のスープなんていう珍しいものも供される。
聞けば、宮古島では持ちこまれたイノシシや孔雀が野生化し、害獣駆除の対象になっているのだとか。渡真利シェフは、そうした命にこそ、宮古島らしい深い味わいがあることに気づき、ほかでは味わえないような上質な料理を作り上げている。食材もさることながら、料理ひとつひとつに宮古島や琉球王朝の食文化を紐解くテーマがあり、五臓六腑だけでなく知的好奇心まで満たしてくれる。
琉球王朝料理を進化させた珠玉のフレンチ。
レストランは、海に面したスモール・ラグジュアリーな〈紺碧ザ・ヴィラオールスイート〉内にある。コースを通じて沖縄の自然や食文化を存分に堪能できる。宮古島生まれの渡真利シェフはフランスなどで修業の後、地元に戻り世界に誇る琉球・宮古ガストロノミー料理を目指す。
伊良部島のお祭りにちなんだカツオ料理"おーばんまい"。大漁旗に見立てたソースも艶やか
全室プライベートのヴィラ。レストランからも紺碧の海が望める
お酒のペアリングも創意にあふれる
沖縄の伝統食に山羊汁があるが、こちらは子ヤギのロースト。臭みもなく極上の味
豆腐ように見立てた料理は泡盛と
宮古島の食材や食文化の奥深さを味わうという意味では、イタリア料理店〈ドンコリism〉も強く推薦しておきたい。オーナーシェフの望月直樹氏は移住組であるが、宮古島の生産者たちと深い信頼関係を築き、常に最旬の食材で極上のイタリア料理を作り上げている。どの皿からも、手間暇惜しまぬ仕事ぶりや創意が感じられ、イタリア料理らしい店内の楽しさも相まって、ダイニングの醍醐味を存分に楽しめる。これでプリフィックスのコースが4500円というのは、こちらが心配になるほどリーズナブルだ。
この2店舗のためだけに宮古島に旅する価値は十分にあると思う。
イタリア料理とは地方料理の集合体というのが本質だとすれば、シチリア島に美食があるように宮古島こそイタリアンにふさわしい舞台だというのが、望月直樹シェフの考えだ。その理念は、料理にあますことなく表現されている。宮古島の山海の幸のポテンシャルにも驚くに違いない。
港であがった時々の新鮮な魚は、個体に応じて最高の火入れの状態で提供される。付け合わせの野菜類も絶品
自家製の前菜の数々には、季節の野菜やパテ類などが並ぶ
宮古島の繁華街の中心地にあり、島で人気の店のひとつ
定番のプリンは大人味。島の泡盛、華翁との超絶マリアージュは、“口福感”に包まれること請け合い
取材・文 中村孝則 美食評論家
1964年神奈川県葉山生まれ。ファッションからカルチャー、美食などをテーマに新聞や雑誌、テレビで活動中。主な著書に『名店レシピの巡礼修業』(世界文化社)がある。2013年より〝世界ベストレストラン50"の日本評議委員長も務める。さらに、グラナパダーノとパルマハムの親善大使に任命されている。
●レストラン エタデスプリ
住所:沖縄県宮古島市伊良部字池間添1195-1
TEL:050-5597-0512
営業時間:完全予約2部制(18:00スタート/ 19:00スタート)
定休日:無休
URL:https://www.konpeki.okinawa/restaurant
●ドンコリism
住所:沖縄県宮古島市平良字下里597
TEL:0980-79-0978
営業時間:18:00 ~ 24:00
定休日:日曜・水曜
URL:http://doncolino.com
『Urban Safari』Vol.18 P39掲載