Gastronomic City TOKYO
世界トップシェフたちが東京で新たに挑む話題のレストラン。
この夏、『世界のベストレストラン50』に入賞したシェフが手掛ける新店舗が、東京に揃ってオープンした。世界の美食家たちも注目するその2店のコンセプトから店内の雰囲気、気になる料理などもいち早くレポートする。
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今年度の『世界のベストレストラン50』が、7月18日にロンドンで発表された。そのランキングで初入賞し、41位を獲得したのが大阪の〈ラ シーム(La Cime)〉である。シェフの高田裕介氏は、フランス料理の技術や伝統を熟知しながらも、自由奔放な表現主義と独自のフレーバーを料理に盛り込み、美食家たちだけでなくプロの料理人たちからも絶大な評価を得ている。『アジアのベストレストラン50』では、シェフが選ぶ“シェフズチョイス賞”の受賞歴もあるほどだ。
その彼がプロデュースする〈ナイン バイ ラ シーム(NINE by La Cime)〉が7月7日に東京・丸の内にオープンした。この店は、すでに2020年にオープンしているレストラン〈THE UPPER〉内の9階に増設された。シェフを任されたのは徳島 亨氏で、高田シェフがイメージする“東京の香り”というテーマを12皿のコースで表現する。どの料理の風味にも詩的ともいえる陰影のフレーバーがあり、五感で楽しめる内容となっている。
一方、7月1日に東京・紀尾井町にオープンした〈マス(MAZ)〉をプロデュースするのは、ペルーのレストラン〈セントラル(Central)〉のシェフ、ヴィルヒリオ・マルティネス氏である。その〈セントラル〉は、今年度の『世界のベストレストラン50』では2位にランクインし、来年以降は世界1位の呼び声も高い。
彼はペルー各地の高度によって異なる様々な生態系を調査し、現地ですら忘れ去られた食文化を紐解きながら、ペルーの生物多様性や食の豊かさを一皿に表現し、世界を驚かせた。東京の〈マス〉でも、そのペルーの異なる高度が織りなす9つの風景と生態系を表現したコースを提供する。食材の一部は、ペルーから独自に運ばれるというが、筆者自身、今まで味わったことのない風味や食感に驚かされた。珍しさだけでなく味わいや食感の調和も秀逸である。ほかでは出合えない料理という意味で、是非一度訪れてみてほしい。
[ ナイン バイ ラ シーム ]
2人のシェフが生み出す東京フレーバー。
大阪〈ラ シーム〉の高田裕介シェフがイメージコンセプトやアイデアを出し、徳島 享シェフがそれを具現化する。フランス料理を基軸とする2人のシェフのセッションによって生み出される料理は、日本各地の食材を使い12皿のコースで構成される。
“ルバーブ”は、国産のルバーブの豊かな酸味をピクルで味わう一皿。ハイビスカスの酸味が重奏する
ライチの果肉で作ったゼリーにバラのクリーム、その上にキャビアを載せて薔薇の花びらをまとわせた“ライチ”。ライチの甘味とキャビアの塩味のコントラストが絶妙な逸品
“ブーダン”は大阪〈ラ シーム〉の名物“ブーダンドッグ”をアレンジ。徳島シェフの地元の鯉を具材に使う
店を任されるシェフの徳島 亨氏(左)は福島出身。右はパートナーシェフの高田裕介氏
丸の内の景観を望む店内
[ マス ]
南米最高の店の味を東京で体験する贅沢。
ペルーの生物多様性と南米固有の食文化を、モダンな料理として表現し、世界の美食家たちから絶大な人気を誇る〈セントラル〉の、実質上の東京支店といえるのが、この〈マス〉である。食材の2割は、そのペルーからの直送。未知なる風味やフレーバーに驚かされること必至。
“海霧 海抜0M”は、ペルーのタコを、様々な調理法で味わえる一皿
“アンデスの森 海抜3260M”は、アンデス原産のジャガイモをチャコ粘土で蒸し焼きした、現地に古くから伝わるワティアという調理法にインスピレーションを得た料理
ペルー出身のヴィルヒリオ・マルティネス氏(左)と、〈マス〉のヘッドシェフを任された、サンティアゴ・フェルナンデス氏(右)
ペルーの風景にインスパイアされた店内
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●ナイン バイ ラ シーム
住所:東京都千代田区丸の内1-3-4 丸の内テラス9F
営業時間:18:00~23:00(最終入店20:00)
定休日:月・火曜(祝日は営業)
TEL:03-6206-3939(予約はWEBのみ)
URL:https://the-upper.jp/nine_by_lacime/
●マス
住所:東京都千代田区紀尾井町1-3 東京ガーデンテラス紀尾井町3F
営業時間:17:00~23:00
定休日:火曜
TEL:03-6272-8513
URL:https://maztokyo.jp/
『Urban Safari』Vol.29 P39掲載
美食評論家
1964年神奈川県葉山生まれ。ファッションからカルチャー、美食などをテーマに新聞や雑誌、テレビで活動中。主な著書に『名店レシピの巡礼修業』(世界文化社)がある。2013年より『世界ベストレストラン50』の日本評議委員長も務める。’22年春より、JR九州が運行する「ななつ星in九州」の車内誌の編集長に就任。