Gastronomic City TOKYO
今行きたい! 東京・フレンチと東京・中華の新星現れる。
銀座のど真ん中にできたフレンチは、料理・サービス・舞台演出で酔わせ、元麻布の中華は、香港スタイルで夜半にワイワイと大皿料理を楽しませる。「こんなレストランを待っていた」という大人たちの満足・満腹必至の2店。
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東京・銀座の〈ラルジャン(L’ARGENT)〉は、銀座4丁目の交差点に面したビルの7階にある。銀座和光の時計台を真正面に眺められる本格的なバーやテラス席を配し、個室を備えたダイニングは、高い天井とモダンで煌びやかな内装で仕立てられている。まさにハレのシーンにふさわしい“気分があがる”レストランの登場である。
シェフの腕前も、それに呼応する。加藤順一さんは、国内のフランス料理の名店で腕を磨き、北欧の星つきレストランでも修業経験を持つ。彼が生み出す料理は、クラシックなフランス料理の確かな技術をベースにしながらも、北欧キュイジーヌのシンプルさや、美食のトレンドの流れも絶妙なバランスで取り入れる。なにより、盛りつけから味わいまで洗練具合が際立つ。そしてサービス・スタッフの練度や創意もそれに呼応する。どなたをエスコートしても、喜ばれるレストランと太鼓判を押したい。
一方、この4月1日に元麻布の住宅街に開業したばかりの〈夜香港(いえほんこん)〉も食いしん坊にはたまらないだろう。この店は、3月1日にオープンした〈一平飯店〉の店内で、夜の部としてスタートさせた。〈一平飯店〉は、富山や東京、香港の中華の名店で修業を積んだ安達一平さんによる本格的な広東料理の店。“個人盛り”によるおまかせコース・スタイルの中華料理であり、そちらも素晴らしいのだが、〈夜香港〉は、文字どおり香港スタイルを踏襲した大皿料理をコンセプトにしている。
どちらも、安達さんによる料理だが、大皿料理のいいところは、鳥や鴨、あるいは魚を丸ごと楽しめることである。ゲストは3名以上に指定されているが、〈夜香港〉は20時半以降の営業なので、仕事を終えてから仲間を集いグループでゆっくり楽しむには絶好だ。
レストランの本来の醍醐味とは、料理を囲んでみなが集い、幸せを分かち合うことであるはず。コロナ禍で自粛を強いられていたが、その本来の歓びを味わうためにも、是非訪れてほしい2店である。
[ラルジャン]
ハレの日にドレスアップして訪れたい新名店。
2020年12月にオープン。フランス語の“銀”を意味する店名の〈ラルジャン〉は、まさに銀座を象徴する店にふさわしい。加藤順一シェフは、〈タテル ヨシノ〉を経て、フランスや北欧の名店でも修業を重ね、〈スブリム〉でも名を馳せた、若手実力者である。
“北海道 蝦夷鹿のウェリントン”は、ドライエイジをした蝦夷鹿のロース肉のパイ包み焼き
“静岡伊東市 伊勢海老”は、低温のバターの中で伊勢海老をゆっくりと温めてミディアムレアに。伊勢海老の繊細な味を、バターのミルキーさで際立たせた逸品
リンゴをくりぬき器に見立て、エルダーフラワーやハーブで北欧風に仕立てたデザート“青森 初恋グリン(青リンゴ)”
銀座を舞台に、その手腕を遺憾なく発揮する加藤順一シェフ
店内には本格的なバーも備えている
[夜香港]
元麻布で楽しみたい夜の香港の風情。
六本木の中国料理店〈桃仙閣〉の店主でもある林 亮治さんがプロデュースして、この春に立ち上げたもの。早い時間は〈一平飯店〉として営業し、20時30分からは〈夜香港〉として、大皿料理を提供する。一店舗で2通りの楽しみ方ができる形態は、美食家たちにも朗報であろう。
“清蒸石斑魚(アズキハタの姿蒸し)”は新鮮なハタを1尾使った豪快な料理
“蒸し鶏沙姜風味”は鶏1羽ごと使って蒸された前菜の一皿
安達一平シェフは、日本国内の中華料理の名店で修業を重ね、香港でも腕を磨いた。香港の人々が、夜な夜な集い大皿料理を楽しむように、ライブ感ごと味わってほしいという
個室のテーブル席で、3名以上最大8名まで楽しむことができる
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●ラルジャン
住所:東京都中央区銀座5-8-1 GINZA PLACE 7F
営業時間:ランチ11:30~15:00(13:30LO)、ディナー17:30~23:00(20:30LO)、バー17:30~23:30(23:00LO)
定休日:月曜
TEL:03-6280-6234
URL:https://largent.tokyo/
●夜香港
住所:東京都港区元麻布3-12-41
営業時間:20:30~23:00(22:00LO) ※予約は3~8名で
定休日:日曜・月曜を中心に不定休
TEL:050-3033-3946
URL:https://www.instagram.com/ye_hong_kong/
『Urban Safari』Vol.27 P31掲載
美食評論家
1964年神奈川県葉山生まれ。ファッションからカルチャー、美食などをテーマに新聞や雑誌、テレビで活動中。主な著書に『名店レシピの巡礼修業』(世界文化社)がある。2013年より『世界ベストレストラン50』の日本評議委員長も務める。2022年春より、JR九州が運行する「ななつ星in九州」の車内誌の編集長に就任。