Gastronomic City MINAMIUONUMA
『新潟ガストロノミーアワード』で入賞した南魚沼市の名店。
2023年3月に新潟県内の飲食店や宿泊施設を評価する初の取り組みである、『新潟ガストロノミーアワード』が発表された。その飲食店部門において、特別賞の“インフォーマル賞”を受賞した南魚沼市の注目の2店をご紹介する。
- TAGS:
- Urban Safari Gourmet
ローカル・ガストロノミーとは、地域の風土や歴史や文化を料理で表現することをいう。さる2023年3月、この理念に基づいて新潟県内の飲食店や宿泊施設を発掘・応援する取り組み『新潟ガストロノミーアワード』が発表され、飲食店部門は100店がリストアップされた。筆者は、アワードの審査員長を担当したが、審査を通じて新潟県内には知られざる名店が多数眠っていることに改めて驚かされた。今号では、その中でも“インフォーマル賞”を受賞した南魚沼市内の2店をご紹介する。
〈ファミリーダイニング小玉屋〉は、新幹線の浦佐駅前にあるファミリーレストラン。昭和2年創業で、地元では親子3代が楽しめる店としてよく知られた存在である。価格も手頃でメニューも豊富。和洋中はもちろん、寿司やピザ、パスタからデザートまで、グランドメニューは300種を優に超える。しかし、出汁ひとつから自家製にこだわり、食材のほとんどは南魚沼市産を中心に県内産を使うなど、凡百のファミレスとは一線を画す。真価は宴会プランの料理で発揮する。南魚沼産の肉厚で旨味の強い椎茸の“天恵菇(てんけいこ)”やジビエなど、地元食材を使ってローカル・ガストロノミーを表現する。鮮度はもちろん味わいや調理技術の高さは、高級店にも引けをとらない。
〈FARM FRONT SEKI NOEN〉は、この地で最高峰の"魚沼産コシヒカリ"を栽培する関農園が、2022年10月にリニューアルさせた直売所兼レストラン。塩沢石打ICからほど近い幹線道路沿いにあるモダンな店舗では、店内で自慢の"塩むすびセット"が味わえる。自社の無農薬栽培、減農薬栽培の米を土鍋の直火で炊き、握った塩むすびは、「これぞ究極のおむすびの味わい!」と思わず舌を巻いた。それを田園地帯の雄大な景色を眺めながらいただくのは、贅沢な体験である。
ともに新潟の知られざる食の魅力と奥深さを、しかも気軽に味わえるという意味でも太鼓判を押したい。
[ KODAMAYA ]
ファミレスの概念を覆す美食の名店。
昭和2年創業の小玉屋は、地元密着型のレストランとして人気。現在4代目となる小島雄介氏は、グランドメニューのほかに宴会プランで、地元の珍しい食材を使い、手頃な価格設定で高級店顔負けのガストロノミー料理を提供する。味だけでなく、その幅の広さも魅力。
宴会プラン(3000円~)の一例。米はもちろん、素材のほとんどを県内産にこだわった自家製料理
地元猟師から仕入れた猪を使った逸品。タイミングにもよるが、ジビエもオリジナル料理で提供する
店の近くで生産される肉厚で濃厚な旨味をもつ椎茸の“天恵菇”を、オリジナル料理で仕上げる
広い店内は、テーブル席のほかに、大小の個室も備えている
浦佐駅前の店舗は広い駐車場も完備
[ FARM FRONT SEKI NOEN ]
最高のコシヒカリを究極の塩むすびで。
関農園は、最高のコシヒカリを生み出す南魚沼の中でもさらに別格とされる“塩沢地区”に田んぼを持つ。この直売所はその田んぼの中にあり、数々の受賞歴を誇るその米の炊きたてを、塩にぎりで味わうことができる。ドライブの途中のランチにおすすめである。
土鍋炊き塩むすびセット(1480円)には、味噌汁や海苔、漬物が付く
自慢の塩むすびは、関農園の看板商品である無農薬栽培米や減農薬栽培米を土鍋の直火で炊き、ひとつずつ丁寧に握って仕上げる
「日本一美味しい米作り」をモットーに掲げる、関農園代表の関 智晴さん
2022年10月にリニューアルされたモダンな店舗は、1階が調理場と直売所で2階にダイニングスペースを配する
●美食のフロンティアとして今、国内外から注目される新潟県。
●紀伊半島から世界に発信、ローカル・ガストロノミーの名店。
●今絶対に行くべき、横浜で注目の美食系レストラン。
●世界トップシェフたちが東京で新たに挑む話題のレストラン。
●肉で攻めるか鮨で拓くか、東京・和食系のニューウェイブ。
●今行きたい! 東京・フレンチと東京・中華の新星現れる。
●王道それとも気鋭? 東京・フレンチ名店の鴨対決!
●レストランの未来のトレンドの形を示す東京の2店舗。
●今行くべき東京の和食系レストランの最旬事情を探る。
●今、東京で注目される若手外国人シェフの実力。
●奥能登の輪島で日本の美食旅の魅力を味わい尽くす。
●東京の底力を見せた今年の『アジアのベストレストラン50』。
●ラグジュアリーな美食エリアとして注目される軽井沢。
●ローカル・ガストロノミーの聖地、南魚沼の絶品料理。
●沖縄から世界に発信する、宮古島の最新ガストロノミー事情。
●今、東京で最も注目すべきブランニューなレストラン!
●大阪発世界へ。美食の地図を塗り替えた注目のレストラン。
●ファミリーダイニング小玉屋
住所:新潟県南魚沼市浦佐1355-1
営業時間:11:00~22:00(21:30LO)※状況により早閉店する場合あり
定休日:火曜、ほか不定休
TEL:025-777-2072
URL:http://fd-kodamaya.com/
●FARM FRONT SEKI NOEN
住所:新潟県南魚沼市関972-4
営業時間9:30~16:30
定休日:月曜(祝日の場合は翌日)
TEL:025-775-7979
URL:https://farmfront.jp/
『Urban Safari』Vol.33 P39掲載
●『Safari Online』のTikTokがスタート!
こちらからアクセスしてみて!
美食評論家
1964年神奈川県葉山生まれ。ファッションからカルチャー、美食などをテーマに新聞や雑誌、テレビで活動中。主な著書に『名店レシピの巡礼修業』(世界文化社)がある。2013年より『世界ベストレストラン50』の日本評議委員長も務める。’22年春より、JR九州が運行する「ななつ星in九州」の車内誌の編集長に就任。