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2025.05.24


Vol.29 井川 慶/不運にも泣いた虎のエース【MLBの挑戦者たち〜メジャーリーグに挑んだ全日本人選手の足跡】

 

 

井川慶(いがわ けい)/1979年7月13日生まれ、茨城県出身/日米通算95勝76敗(1999〜2014年)

井川 慶ほど日米で極端に評価の分かれた選手は珍しい。阪神タイガースとニューヨーク・ヤンキースという日米の人気球団に所属したことも、おそらく関係しているだろう。どちらもファンやメディアの期待が大きいゆえに、称賛や非難の声もまた大きい。しかもMLBにはサラリーキャップ(年俸総額)という独特な制度がある。井川のケースがまさにそうだが、高年俸選手の実力に一度疑問符がつけば、贅沢税を避けるためマイナーに塩漬けされるということが起きうる。どこで見切りをつけるかは球団によるが、常勝軍団であるヤンキースの目線がひときわ厳しいのは間違いない。

渡米後の結果は思わしくなかった井川だが、周囲からは「ヤンキース以外なら、あるいはナ・リーグであれば活躍できる投手」と見られており、実際にナ・リーグ所属のサンディエゴ・パドレスからの引き合いもあったという(結局、破談になった)。実は3Aで2008年に14勝、2009年にも10勝を挙げているのだが、前述した理由もあり、メジャー昇格のチャンスを与えられることはなかった。井川以降の日本人選手が、MLBにおける最初の所属先としてヤンキースを避けがちなのは、こうした経緯を踏まえた上であることは想像に難くない。そういう意味で、井川の挑戦が野球界に与えた影響は決して小さくなかったといえる。

阪神時代の井川は、まさにエースとしてマウンドに君臨した。一軍定着後の6年間で84勝を挙げており、2003年には20勝(5敗)の成績で、阪神の18年ぶりとなるリーグ優勝に貢献した。ちなみに井川以降、セ・リーグで20勝に到達した投手は存在しない。2004年オフにポスティングシステムによるMLB移籍を模索するも、球団との交渉がまとまらず、翌年のキャンプには自費参加することになった。
 
  

 

2007年当時、ニューヨーク・ヤンキースには松井秀喜が所属

ポスティングが認められたのは翌々年のオフ。ヤンキースが約30億円(当時のレート)で独占交渉権を獲得し、5年2000万ドル(約22億7000万円)+出来高で契約。ある米メディアの分析によると、同じ年にポスティングした松坂大輔を宿敵ボストン・レッドソックスに掻っ攫われたことで、条件反射的に金額が大きくなったのではないかという。ともあれ、井川は念願のメジャー移籍を果たした。翌2007年2月には結婚も発表し、飛躍への環境は整ったかに見えた。

4月7日のボルチモア・オリオールズ戦でメジャー初登板を果たすも、5回を投げて7失点。黒星こそ付かなかったが、ニューヨークのファンを落胆させる結果となった。しかし、18日のクリーブランド・インディアンス(当時)戦では6回2失点で初勝利。その後は制球難から中継ぎに回るも、28日に先発投手の故障により急遽先発として登板。これを6回無失点に抑え、いよいよ本領発揮かと思われた。ところが、以降はメジャーとマイナーを行き来することが増え、この年は14 登板で2勝3敗、防御率6,25で終えている。
 

  

 

マウンドに集まるヤンキースのメンバー。右からロビンソン・カノ、デレク・ジーター、アレックス・ロドリゲス、ホルヘ・ポサダとスター選手ばかり(2007年当時)

翌2008年、中継ぎとして準備していた井川は、相変わらずメジャーとマイナーを行き来する生活を余儀なくされる。7月にはメジャー契約を解除されてしまうのだが、3Aでは14勝と気を吐き、ベストナインにまで選ばれている。とはいえ、ここまでメジャーで結果を残せていないのも事実。オフにはキャッシュマンGMから「井川の獲得は失敗だった」とコメントされるなど、彼への逆風は厳しさを増していく。本人によれば、渡米前からチェンジアップが浮きがちになっており、長いことスランプから抜け出せなかったという。

以降の3年間、井川がメジャーに昇格することは一度もなかった。2012年3月にオリックス・バファローズが獲得を発表し、日本球界への復帰が決まる。オリックスには3年ほど所属し、戦力外通告後も独立リーグでプレー。退団後は野球解説者などの仕事に就いているが、明確な現役引退発表はしていない。5年間のアメリカ挑戦を振り返った井川は、「失ったものはない。すべて自分の血となり肉となっている」と語っている。まだ45歳。貴重な経験を活かし、これからも長く野球に関わってもらいたい。

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文=野中邦彦  text : Kunihiko Nonaka
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