〈オークラ東京〉の新料理長が紡ぐ、伝統フレンチの進化を堪能!
〈オークラ東京(The Okura Tokyo)〉は、初代総料理長を務めた“小野正吉ムッシュ”のもと、日本のフランス料理界を牽引していった。この創業当時から培ってきた“オークラフレンチ”の系譜を引き継ぎながらも、コンテンポラリーに昇華させた料理を味わえるのがフランス料理〈ヌーヴェル・エポック〉。2025年7月1日に山下亮一さんが新料理長に就任した。9月1日からメニューが刷新され、また新たな1ページがはじまっている。
山下さんはミシュランガイド1つ星の南フランス〈ラ・メゾン・ジョンヌ〉で修業し、魚介類の技術を磨いた。2021年の〈ホテルオークラ京都 岡崎別邸〉開業時には総料理長を務め、和食文化が根づく京都で出汁を取り入れるなど、日本の食材の繊細な味を最大限に引き出すスタイルを確立。その技術と経験を活かすべく、満を持して〈ヌーヴェル・エポック〉で腕をふるう!左:料理長の山下亮一さん 右:シェフパティシエの荒木貴志さん
シェフパティシエの荒木貴志さんはユニークな経歴をもつ。日本料理〈吉兆〉で和食料理人として研鑽を積んだ後、フランス料理を学ぶために渡仏。途中からフランス菓子に興味をもち、パティシエとして修業した。帰国後、フランス料理〈オテル・ドゥ・ミクニ〉でシェフパティシエの重責を担ってからシェフ・ド・パルティエも務め、オークラに入社したという逸材。
この非凡なる2人のシェフのもと、ランチには、2つの定番コース(1万7000円、2万7000円)と平日限定で荒木さんの多彩なスイーツが堪能できる“デザートワゴンランチ”(1万8000円)、ディナーは3つのコース(2万7000円、3万6000円、3万9000円)が提供されている。この中で、フィーチャーしたいのが、山下さんが自信をもつ褐毛和牛を体験できる“ムニュ デクーヴェルト C(Menu Découvertes C)”(2万7000円)。“アミューズ”
“アミューズ”はカボチャのムースをサンドしたさっくりとしたクッキー。パンプキンシード片がまぶされていて、小気味いい食感。軽快な食感で、食欲がかき立てられる。“帆立貝柱のタルタルとオシェトラキャビア ザクロと林檎とセロリにハーブオイル”
帆立貝の妙味となめらかさを堪能できるのが、“帆立貝柱のタルタルとオシェトラキャビア ザクロと林檎とセロリにハーブオイル”。タルタルになった帆立貝の慎ましやかな甘味とオシェトラキャビアの塩味がよいコントラストを生み出す。ザクロとリンゴの食感、レッドソレルやエディブルフラワーの色彩も実に見事。“季節の野菜たちの小さな一皿”
“季節の野菜たちの小さな一皿”では、ニンジンのデクリネゾン=変化を楽しめる。紫ニンジン、黄色ニンジン、白ニンジン=パースニップの3種類を使用。紫ニンジンは白ワインビネガー、黄色ニンジンはムースにしてオレンジジュースと合わせ、パースニップにアイスクリームに。セルフィーユやニンジンのジュリアンヌも添えられ、滋味にあふれる一皿に仕上げられている。“甘鯛の松笠焼きとモン・サン・ミッシェル産ムール貝 里芋ピューレに甘鯛とムール貝のブイヨンに昆布オイル”
魚料理は“甘鯛の松笠焼きとモン・サン・ミッシェル産ムール貝 里芋ピューレに甘鯛とムール貝のブイヨンに昆布オイル”。甘鯛は鱗を美しくカリカリっと仕上げており、白眉のテクスチャー。味の詰まったモンサンミッシェルのムール貝は“追い滋味”となり、甘い百合根、鮮やかなエディブルフラワーが脇を固める。ムール貝のソースに加えて、白味噌と里芋のピューレがよく合う。“備長炭で炙ったあか牛サーロインに季節の野菜 酸味を利かせた赤ワインソース”
“備長炭で炙ったあか牛サーロインに季節の野菜 酸味を利かせた赤ワインソース”はサーロインながらも、褐毛和牛なので脂が控えめで、まったくしつこくない。“あか牛”は完璧なロゼ色に仕上げられ、炭の燻香が黒胡椒の風味と相乗効果をもたらす。酸味を活かした赤ワインソースは、フルーティーさもまとっていて軽やか。ナイフは新潟県燕市の“藤次郎”で、肉の繊維を壊さず、スパッと切れるのがいい。“カカオ豆のブランマンジェ カカオパルプのソルベと洋梨の香りを添えて”
“カカオ豆のブランマンジェ カカオパルプのソルベと洋梨の香りを添えて”は、カクテルグラスで提供される1品目のデザート。カカオ豆はチョコレートではなく加工前のものを使用した。カカオニブはパウダーにしてブランマンジェにし、カカオパルプはグラニテに仕上げている。ハチミツでコンポートした洋梨のコンポートの甘味、バルサミコ酢のコクも印象的。“沖縄県産島バナナと国産レモンのコンポート アーモンドとトンカ豆の香りとともに”
“沖縄県産島バナナと国産レモンのコンポート アーモンドとトンカ豆の香りとともに”は、珍しい“島バナナ”を主役に据えた。沖縄の島バナナと国産レモンのコンポートは甘味と酸味のメリハリがあり、その下にはサクッとしたホワイトチョコレートでコーティングしたライスパフ。ハニーコームを模したチュイールには可愛げがある。
山下さんのフランス料理に合わせて、ワインペアリング(2万7000円/5グラス)も注文するのが正解。左:“シャンパーニュ・バロン・ド・ロスチャイルド ブラン・ド・ブラン” 中上:“エスタンドン レジャンド ロゼ 2018” 中下:“ドメーヌ・ジャン・シャルトロン ピュリニー・モンラッシェ 2020” 右上:“ル・プティ・ドメーヌ アントル・ドゥ・ヴォア ソーミュール・ブラン 2021” 右下:“シャトー・グラン・ピュイ・ラコスト 2011”
“シャンパーニュ・バロン・ド・ロスチャイルド ブラン・ド・ブラン”は名門メゾンが手掛けるシャンパーニュ。シャルドネ100%のブラン・ド・ブランで、フレッシュかつエレガントな味わい。フランス・プロヴァンスの“エスタンドン レジャンド ロゼ 2018”は美しいロゼ色。心地良い酸味と果実のまろやかさが感じられ、魚介類との相性がいい。“ル・プティ・ドメーヌ アントル・ドゥ・ヴォア ソーミュール・ブラン 2021”は、果実味と酸味が高いレベルでバランスがとれた白ワイン。野菜との滋味にやさしく寄り添う。白眉の白ワインが、“ドメーヌ・ジャン・シャルトロン ピュリニー・モンラッシェ 2020”。白桃や白い花が石灰岩のミネラルと調和している。魚料理との相性は抜群で、甘鯛のポテンシャルを引き出す。“シャトー・グラン・ピュイ・ラコスト 2011”は、カベルネ・ソーヴィニヨン主体の赤ワイン。濃厚で豊かな味わいが楽しめ、長い余韻がある。風味豊かなミディアムボディで、脂の少ない褐毛和牛にぴったり。店内の様子
店内は56席がゆったりと配置されていてプライベート感が満載だし、個室も1室設けられているので様々な会に利用できる。大きな窓が張られていて、広い庭園を臨めるのもいい。
山下さんが新料理長に就任して衆目を集める〈ヌーヴェル・エポック〉。オークラ伝統のフレンチの進化を、是非とも自分の舌で確かめてみて!
●ムニュ デクーヴェルト C(Menu Découvertes C)2万7000円
アミューズ
帆立貝柱のタルタルとオシェトラキャビア ザクロと林檎とセロリにハーブオイル
季節の野菜たちの小さな一皿
甘鯛の松笠焼きとモン・サン・ミッシェル産ムール貝 里芋ピューレに甘鯛とムール貝のブイヨンに昆布オイル
備長炭で炙ったあか牛サーロインに季節の野菜 酸味を利かせた赤ワインソース
カカオ豆のブランマンジェ カカオパルプのソルベと洋梨の香りを添えて
沖縄県産島バナナと国産レモンのコンポート アーモンドとトンカ豆の香りとともに
食後の小菓子とコーヒーまたは紅茶
●〈オークラ東京(The Okura Tokyo)〉ヌーヴェル・エポック
住所:東京都港区虎ノ門2-10-4 オークラ東京 ヘリテージウイング5F
営業時間:朝食 7:00~9:30、ランチ 11:30~14:30、ディナー 17:30~21:30
定休日:祝日・祝前日を除く火曜は朝食のみ営業
TEL:03-3505-6073
URL:https://theokuratokyo.jp/ja/dining/nouvelle-epoque/
※サービス料込み
●グルメジャーナリスト 東龍さんの連載、記事はこちら!
グルメジャーナリスト東龍のホテルグルメで“口福”体験!
アレが食べたいからこの店へ!
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1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口でわかりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。