納得の素材を主役にして提供する、祇園で月替わりのフレンチコース!
2026年3月5日、京都の祇園に〈帝国ホテル 京都〉が開業した。国の有形文化財として登録が継続された“旧弥栄会館”の建築意匠を受け継いだ、全55室のスモールラグジュアリーホテル。帝国ホテルとしては、〈帝国ホテル 大阪〉以来、約30年ぶりの新規オープンとなるから注目だ。
厳かな雰囲気に自然と紳士的な顔つきになる大人の空間
本棟2階にあるのが、フランス料理〈練〉。帝国ホテルのフランス料理店として、初めてカウンタースタイルを導入。カウンター10席からは、料理人の所作や料理が仕上がる瞬間、立ち上がる香りまで間近に感じられる。店名は、祇園甲部歌舞練場に由来。“繰り返し手をかけ、より質のよいものにする”という意味も込められている。
カウンターからは、シェフがリアルタイムに作り上げていく料理の様子が見られる
料理長を務めるのは、1977年大阪府生まれの今城浩二氏。1996年に辻学園調理技術専門学校を卒業し、〈帝国ホテル〉へ入社。フランスではパリ、シャモニー、モンペリエのミシュラン星付きレストランで研鑽を積み、2006年には“第40回ピエール・テタンジェ国際料理賞コンクール・ジャポン”で優勝。2025年4月に〈帝国ホテル 京都〉の料理長に就任した実力派だ。
〈練〉のテーマは、日本の季節を細やかに捉えた“二十四節気”。今城氏が大切にしているのは、素材を主役にするために必要なものだけを残す“引き算の料理”だ。生産者のもとへ自ら足を運び、実際に見て、味わった食材から料理を組み立てている。
自信を持って提供できる旬の素材たち
提供されているのは、月替わりの“おまかせコース”(3万8000円~)のみ。アミューズブーシュ、冷前菜、温前菜、神山椎茸、魚介料理、肉料理、アバンデセール、デセール、カフェと小菓子まで続く。コースの最初には、その日に使う海老や毛蟹、甘鯛などの食材が目の前にずらりと並べられ、これからはじまる料理への期待がグッと高められる。
ここから紹介するのは、秋の訪れが感じられる“白露―秋分”のコース。
“車海老”
冷前菜の“車海老”は、長崎県産の車海老と足赤海老を用いた一皿。身はミキュイ(フランス語で半分火がとおった状態のこと)にして、しっとりとしたテクスチャーと上品な甘味を引き出し、脚はカリカリに焼き上げた。カリフラワーはなめらかなムースと生のスライスという、ふたつの表現。海老の殻や味噌を使った濃密なピューレ状のソースが滋味を重ね、ヘーゼルナッツオイルの芳ばしさがふわりと広がる。
“毛蟹”
温前菜は、“毛蟹”。北海道・噴火湾の毛蟹のほぐし身をたっぷりと使い、青森県野辺地町の“野辺地葉つきこかぶ”とともに薄い生地の“パートフィロ”で包んだ。パリパリっと軽快で、中には繊細な旨味の毛蟹とみずみずしい甘味の蕪。蟹の脚には味噌を塗って香ばしく焼き付け、泡状のソースは蟹の出汁を煮詰めたもの。
“神山椎茸”
シグネチャーメニューが、“神山椎茸”。徳島県神山町で育てられる肉厚な神山椎茸の中でも、ひときわ大ぶりなものを使用。じっくりとローストした椎茸に、京都のブランド和牛“亀岡牛”の生ハムを重ねた。椎茸は食べごたえがあり、噛み締めるほどに旨味が広がっていく。上には弥栄会館の外壁を彩っていた“テラコッタ”をモチーフにした薄焼きのチュイールをあしらい、この場所ならではの一品に昇華させた。
“甘鯛”
魚介料理の“甘鯛”は、長崎県五島列島のグジ=甘鯛が主役。240度の油を皮目にかけて松笠焼きにしているから、鱗はサクッと香ばしく、身はしっとり。岩手県産松茸、京丹波の黒豆を合わせ、仕上げには宮崎県産の柑橘“ヘベス”を削る。南部鉄器から注がれるスープは、甘鯛の骨から取った出汁に炭焼きした松茸を合わせた、いわば洋風の土瓶蒸し。芳醇な松茸の香りと魚の上品な旨味が重なり、ヘベスの爽やかな香気が全体を引き締める。
“仔牛”
メインディッシュは、“仔牛”。フランス・ブルターニュ産の仔牛を2つの部位で楽しめる。ロース肉は丁寧にローストして、ほんのりロゼ色を残したジューシーな仕上がり。モモ肉はミンチにしてつくね状にし、黒文字のスティックを刺して香りを添えた。付け合わせは滋賀県産の坊ちゃんカボチャ。じっくりとオーブンで火を入れているので、皮までしっとりと柔らかく、カボチャの甘味も濃い。肉料理のナイフは、新潟県燕市の〈片岡製作所〉が手掛ける“タマハガネ(TAMAHAGANE)”。切れ味が鋭いので、仔牛の繊維を壊さずに切り分けられる。
“葡萄”
デセールの“葡萄”は、長野県生まれの2品種を主役にした。葡萄の粒に見立てたラム酒入りのフロマージュブランをちりばめ、本物の葡萄と一体になるような遊び心のあるプレゼンテーション。ナガノパープルの濃厚な甘味とクイーンルージュの華やかな食味に、爽やかなフロマージュブランの酸味が寄り添う。添えられたフロマージュブランのアイスクリームも軽やかだ。
左から、“ルイ・ロデレール コレクション 246”、“松の翠”、“シャトー・マルキ・ダレーム・ベッケール 2015”
料理に合わせるお酒も抜かりない。ソムリエが料理にふさわしい一杯をセレクトしてくれる。
最初のシャンパーニュは、“ルイ・ロデレール コレクション 246”(3500円)。細やかな泡が美しく、柑橘や白い花にブリオッシュを思わせる香り。ミネラル感が全体を引き締め、海老や毛蟹にもすっと寄り添う。
甘鯛の出汁で仕立てた一皿には、京都の日本酒“松の翠”(3100円)。穏やかな香りと米由来の旨味がありながら、後口はすっきり。甘鯛の上品な味わいや出汁を邪魔せず、松茸の香りも軽やかに受け止める。
仔牛に合わせたいのが、フランス・ボルドー地方の“シャトー・マルキ・ダレーム・ベッケール 2015”(4900円)。カシスやスミレ、スパイスを思わせる複雑な香りがあり、果実味は豊か。きめ細かなタンニンが仔牛の旨味を包み込む。
さらに、器にも〈練〉らしいこだわりが見える。フランスの〈ベルナルド〉、〈ジャン・ルイ・コケ〉、〈レイノー〉から、京都の清水焼までを料理によって使い分ける。〈帝国ホテル〉が培ってきたフランス料理の技と京都の風土、さらには二十四節気という日本ならではの季節感が見事に重なっている。祇園の新たなカウンターの舞台で、美食のフレンチをご堪能あれ!
⚫︎おまかせコース 3万8000円~
・アミューズブーシュ
・冷前菜/車海老
・温前菜/毛蟹
・神山椎茸
・魚介料理/甘鯛
・肉料理/仔牛
・アバンデセール/和梨
・デセール/葡萄
・カフェと小菓子
⚫︎〈帝国ホテル 京都〉フランス料理〈練〉
住所:京都府京都市東山区祇園町南側570-289 帝国ホテル 京都 本棟2F
営業時間:月~土曜 17:30~22:30(20:30LO)
定休日:日曜(月曜が祝日の場合は日曜営業、翌月曜休み)
TEL:075-531-0147(10:00~21:30)
URL:https://www.imperialhotel.co.jp/kyoto/restaurant/ren
※サービス料込み
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1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口でわかりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。








































































