
伝統的なテーラリングにもミリタリー由来のジャケットにも歴史があり、老舗のメゾンにも受け継がれてきた美学がある。そうした物語を知ることで装いの楽しみは広がり、本当の“遊び心”や“ひねり”を加えられるようになる。私たちが物語が持つ不思議な魅力に惹きつけられてしまうのは、太古の昔から変わらない真実だ。
〈ロジェ・デュブイ〉の新作『ザ メタモーフ マーリン』は、そんな“物語の魔力”を腕時計の中に閉じ込めた怪作。アーサー王伝説を題材に、円卓の騎士たちが神秘の森を取り囲む様子を立体的に表現。もはや腕時計というより、手首にまとう小さな芸術作品といったほうがしっくりくる。
〈ロジェ・デュブイ〉は『エクスカリバー ナイツ オブ ザ ラウンド テーブル』コレクションにてアーサー王伝説を取り扱い、今回の新作は、伝説の魔術師マーリンに焦点を当てた三部作の最終章にあたる。2024年にはその叡智、2025年には神秘的な魔力を表現し、今回は自在に姿を変える“変身の力”がテーマ。その象徴として、現実世界と神秘の世界をつなぐとされる白鹿のモチーフが取り入れられている。
最大の見どころは、深いグリーンが印象的な立体文字盤だ。マーリンが姿を変えたという神秘の森をイメージし、大小57個の六角形のブロックを異なる高さに配置。その造形は、北アイルランドの名勝ジャイアンツ・コーズウェーに見られる玄武岩の柱状節理にも着想を得ている。ブロックの素材は、グリーンCVDコーティングを施したパーツ、磨き上げたピンクゴールド、透明なガラス、そしてクリスタリウムの4種類。光の当たり方によって色彩や陰影が変わり、眺める角度によって表情を変化させる。自然の風景を写実的に描くのではなく、幾何学的なデザインで表現するあたりは、現代アートや建築の感性にも通じる。
神秘の森を取り囲むのが、12体の円卓の騎士たち。高さわずか6㎜のピンクゴールド製フィギュアは、一体ずつ異なるポーズが与えられ、熟練の彫刻職人が約3日間かけて手仕上げを行ったもの。鎧や武器の細部まで再現された姿は、今にも動き出しそうなほどの迫力を秘めている。
しかも、今回はケースそのものにも物語が刻まれてた。ピンクゴールドケースの側面に、コレクション初となる全面手彫りのエングレービングを採用。神話の白鹿に姿を変えたマーリンや、本を手にした賢者としてのマーリン、円卓の騎士たちを描いている。リュウズの両脇には聖剣エクスカリバーを思わせるソードガードを備え、時計全体がひとつの物語として仕立てられている。
時計としての実力も一級品だ。この独創的な文字盤に合わせて設計された自動巻きキャリバーRD821は172個の部品から構成され、14種類もの装飾技法を駆使した手仕上げは、厳格なジュネーブ・シールの基準にも適合している。裏蓋には中世の城のステンドグラスから着想を得たスケルトン仕様のローターを配し、背面に至るまで芸術性を追求している。
世界限定28本。ケース径45㎜、自動巻き、18KPGケース、カーフレザーストラップ、3気圧防水。価格は要問い合わせ(ロジェ・デュブイ/ロジェ・デュブイ 銀座ブティック)
「ザ メタモーフ マーリン」は、時を知るためだけの道具にとどまらず、身につける人の想像力まで刺激する一本だ。腕元に降臨した騎士や魔術師の守護を受けながら、自分だけの物語を紡いでいきたい。
●ロジェ・デュブイ 銀座ブティック
TEL:03-5537-5317





































































