兵役を終えたブライアン(トム・クルーズ)は一攫千金を夢見てバーテンダーとして働きはじめる。舞台はニューヨークから陽光降り注ぐジャマイカへ。ブライアンはそのド派手なバーテンディングでビーチの人気者になっていく。トム・クルーズが代表作『トップガン』(1986年)の2年後、演技派として開眼する『レインマン』と同じ年に出演した『カクテル』は、劇中で披露される話題のバーテンディング、つまり、バーテンダーがボトルやシェイカー、グラス等を用いたパフォーマンスが見せ場の一つ。実際、アメリカの人気レストランバー・チェーン、T.G.I.FRIDAY’Sの人気バーテンダー、ジョン・バンディの指導を仰いだトムは、リハでは何度もグラスやボトルを落としながらも、本番ではアクロバティックなバーテンディングを次々披露している。
もう一つ話題なのが、ブライアンが纏うトロピカルなビーチファッションだ。なかでも、ジャマイカの空気感にピッタリのアロハシャツの風合いが堪らない。ちょっとオーバーサイズのアロハにはピンク、イエロー、ライラック色の抽象柄がプリントされていて、袖は長めでノータック。そんなアロハに合わせて、ブライアンは白いコットンパンツに白い靴紐のデッキスニーカーで決めている。恐らくノーソックスだ。また、恋人のジョーダン(エリザベス・シュー)とジャマイカ北岸のダイビングスポット、オーチョ・リオスのビーチを歩くシーンで、ブライアンは黒のポリエステル製スイミングトランクスに履き替えている。ブランドは〈スピード〉。〈スピード〉と言えば股下が浅いブリーフタイプの水着で有名だが、このようによりオーソドックスなスイムパンツも発売している。シーズン真っ只中、泳ぎたくてうずうずしている人は要チェックだ。
ほかにも、ブライアンが愛用する小物として、〈ロレックス〉のステンレススチール製エアキング、シルバーダイヤル、そして、トム・クルーズと言えばこれ、サングラスが魅惑のアイテムとして登場する。『トップガン』では〈レイバン〉を一躍若者の人気ブランドに押し上げたトムだが、この『カクテル』ではイタリアのサングラスブランド、〈ペルソール〉のPO3225Sを深い目頭にかけて現れる。テンプル上のシルバーの剣型アローやキーホールカットのブリッジなど、よく見ると匠の技が投入されたサングラスも含めて、『カクテル』は映画の評価はさておき、ファッションアイコンとしてのトム・クルーズが輝きまくる1作。サマーシーズンのビーチウェアを80年代テイストで固めてみたい人は必見だ。
『カクテル』
製作年/1988年 原作/ヘイウッド・グールド 監督/ロジャー・ドナルドソン 出演/トム・クルーズ、ブライアン・ブラウン、エリザベス・シュー、リサ・ベインズ
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