アメリカの作家、詩人、そしてパンク・ミュージシャンでもあったジム・キャロルによる、同名の自伝的小説にインスパイアされたのが映画『バスケットボール・ダイアリーズ』(1995年)。高校のバスケ選手として将来を有望視される主人公が、ヘロイン中毒と格闘する物語は、麻薬依存に関するシーンをはじめ、随所に過激ショットが登場する。同時に、主演のレオナルド・ディカプリオが羽織るジャケットや、いかにもバスケ選手らしいスウェットの着こなし、そして履くスニーカーが服好きの目には焼き付いていて、忘れ難いファッションムービーであることも確かだ。
ジムが白血病を患う親友のボビーを見舞う場面で着ているジップアップのボンバージャケットはサーマルの裏地付き。少しだけ襟を後ろにずり下げて羽織るのがジム流、と言うかレオ流だ。ジムが仲間のミッキー(マーク・ウォールバーグ)と語り合うバーのシーンでは、カーキのミニタリージャケットと指なし手袋のコーデが妙にオシャレに見えたものだ。
スポーツウェアで行くと、ジムが部屋着として愛用している襟と袖をカットオフにしたグレーのスウェット、バスケコートで穿いている〈アディダス〉のショーツや〈コンバース〉のスニーカーがある。スポーツウェアやグッズは今や当たり前のタウンウェアだが、役柄の設定がそうだからか、ここまで目を引くケースは少ない気がする。何しろ、〈スポルディング〉のバスケットボールまでがファッションに見えたほどだ。
ジムがライフルを携え学校に乱入し、生徒を射殺する場面を夢想するシーンでは、その細いカラダに黒いレザーのコートジャケットを羽織っている。映画を観た一部の批評家たちが本作の公開直後にアメリカ各地の高校で発生した銃乱射事件との類似点を指摘したことで、黒いレザージャケットは別の意味で注目されることになる。
しかし、筆者にとって最も印象的なのは、ジムや級友たちがキャンパスで着る制服、つまり、ポケットにエンブレム付きのジャケットと首に結ぶレジメルタルタイだったりする。教室にいる時はとりあえず首元まで上げているタイを、外に出ると適度に緩め、ジャケットもシャツもズボンもいい塩梅に着崩しているのは、レオが正しい着崩し方、だらしなく見えない術をちゃんと心得ているから。直接関係はないかもしれないが、こんな風に制服を自分流に着崩し、ローファーをパタパタさせながら下校する男子高校生を近所でよく見かける。まさか彼らが『バスケットボール・ダイアリーズ』を観ているとは思えないが。
『バスケットボール・ダイアリーズ』
製作年/1995年 監督/スコット・カルバート 脚本/ブライアン・ゴルボフ 出演/レオナルド・ディカプリオ、ブルーノ・カービイ、ロレイン・ブラッコ、マーク・ウォールバーグ、ジュリエット・ルイス
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