任務中の失態によりNYPDの窓際に身を置くダメ刑事のテリーが、捜査よりデスクワークが得意な同じくダメなアレンと組んで、起死回生の一発逆転を狙う。ウィル・フェレルとコラボした同じ『俺たち』シリーズ、そして『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(2015年)や『バイス』(2018年)で知られる監督、アダム・マッケイの『アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事』(2010年)には、一見どこにでもある革ジャン、その実、知る人ぞ知る逸品が登場する。マーク・ウォールバーグが演じるテリーが、赤いプリントTの首から刑事バッジを下げ、ボトムは穿き倒したブラックジーンズで決めているシーンで、マークのボディを程よく包み込む黒のレザージャケットがソレだ。
カジュアルにもスタイリッシュにも適応可能なシンプルなデザイン、メルセデスベンツほかラグジュアリーカーのシートにも使われる100%ナッパレザーがもたらす抜群の風合いが、着崩してはいるけれど、挫けたテリーのハートを優しく包み込んでいる。ナッパは原産地であるカリフォルニアのナパバレーが語源だ。
革ジャンの製造元はロサンゼルスを代表する革職人、ジョナサン・アレクサンダー・ローガンが立ち上げた同名のブランドで、これまで数多くのセレブリティや映画に自社製品を提供している。ここではJALのクラフトワークが印象的だった数作品を挙げてみよう。『ミッション:インポッシブル』(1996年)、『スパイダーマン2』(2004年)、『アイアンマン』(2008年)、『イントゥ・ザ・ワイルド』(2008年)、『タークナイト・ライジング』(2012年)、『ドラゴン・タトゥーの女』(2012年)、TVシリーズでは『CSI:科学捜査班』(2000~2015年)、『24-TWENTY FOUR-』(2001~2010年)、『glee/グリー』(2009~2015年)、TV映画『ハイスクール・ミュージカル』(2006年)と人気タイトルが並ぶ。
『ファイト・クラブ』(1999年)
なかでも一番強烈だったのが、『ファイト・クラブ』(1999年)の中でブラッド・ピットが演じるタイラーが、南米の鳥オオハシがプリントされたアロハの上に羽織っていたワインレッドのレジャージャケットだろう。覚えていますか? アロハに革ジャンという攻めた組み合わせ。襟とポケットに沿ったステッチが目を引くJALが映画に提供した代表作だが、見た目平凡でもカラダに優しそうなマークの革ジャンも、ある意味、なかなか捨て難い。そんな”アザー・ガイズ(その他の男たち)ファッション”を、この機会にもう一度。
『アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!』
製作年/2010年 製作・監督・脚本/アダム・マッケイ 脚本/クリス・ヘンチー 出演/ウィル・フェレル、マーク・ウォールバーグ、エヴァ・メンデス、マイケル・キートン
Photo by AFLO