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CULTURE カルチャー

2024.05.31

MLBの挑戦者たち〜メジャーリーグに挑んだ全日本人選手の足跡
Vol.17 松井稼頭央/努力で磨いた5ツール


【Profile】松井稼頭央(まつい・かずお)/1975年10月23日生まれ、大阪府出身。日米通算2705安打465盗塁(1995〜2018年)

埼玉西武ライオンズの監督として2シーズン目を迎え、残念ながら途中休養となった松井稼頭央。本名は和夫だが、プロ野球入団すぐに登録名を変更している。現役時代は抜群の身体能力で知られ、「もし野球をやっていなかったら、瞬発力系の種目で金メダリストになれた」とも評される。足の速さだけではなく、跳躍力、握力、パワーリフティングなど、あらゆる分野で並外れた数値を叩き出す。身長177㎝と決して大柄ではないが、まさに超人である。

もうひとつ松井が高く評価されるのは、誰よりもよく練習したこと。プロ入り後に守備の自信を失ったこと、そしてスイッチヒッターに転向したこともあり、ひたむきに弱点克服に取り組んだ。その甲斐もあり、NPBの17年間で通算打率.291、201本塁打、363盗塁。シーズン最多安打を2度、盗塁王を3度獲得した。遊撃手としての守備率は.978で、これも悪い数字ではない。西武時代に監督を務めた東尾 修は、「松井は人の5倍練習していた」と語っている。恵まれた身体能力に奢らず、努力を重ねて自らを磨きあげたのだ。

入団8年目で迎えた2002年、日米野球に出場して先頭打者本塁打を記録。打たれたアリゾナ・ダイヤモンドバックスのミゲル・バティスタは「リトル・マツイは機敏さだけでなく、パワーも十分。アリゾナに連れて帰りたいよ。ボスには俺が推薦する」と評している。ちなみに松井はこの試合で4回にも本塁打を放っており、左右両打席での1試合2本塁打は日米野球史上初となった。翌’03年のオフ、FA権を行使してメジャー挑戦を表明。ニューヨーク・メッツと3年契約を結び、内野手として初めての日本人メジャーリーガーとなった。
 

  

 

2004年4月6日、メジャーデビューを果たしたアトランタ・ブレーブス戦で初打席の初球を初ホームラン

迎えたルーキーイヤー。オープン戦では怪我の影響もあって不振が続いたものの、1番遊撃として開幕戦に先発出場。初回の先頭打者として、ゆっくりと左打席に向かう。対するはアトランタ・ブレーブスのエースで、昨季21勝を挙げているラス・オルティズ。その初球、外寄りの高めストレートを思い切り叩くと、打球はぐんぐん伸びてバックスクリーンへ。メジャー史上初となる開幕戦新人の初球初打席本塁打となった。松井は第2打席でも右翼への適時二塁打。二死満塁で迎えた第3打席は押し出し四球。第4打席も右中間への二塁打を放ち、第5打席では二・三塁の場面でなんと敬遠。衝撃的なデビュー戦だった。

しかしその後は停滞し、7月に激しいスライディングを受けて左足を負傷。故障者リスト入りとなり、後半戦はほぼ出場できなかった。打率.272、7本塁打、14盗塁。松井としては不本意な1年目といえるだろう。翌’05年、遊撃から二塁へコンバートされて迎えた開幕戦では、前年同様に初打席で本塁打を放ってみせる。ところが、またも守備時に走者と交錯して故障者リスト入り。出場は87試合にとどまり、すべての成績で前年を下回る。’06年も怪我が原因で低迷すると、6月に交換トレードでコロラド・ロッキーズへの移籍が決まった。
 

  

 

`07年10月27日、コロラド州デンバーにあるコロラド・ロッキーズの本拠地クアーズ・フィールドで行われたワールドシリーズ第3戦。松井はボストン・レッドソックスの松坂大輔と対戦する

マイナーからのスタートとなったロッキーズでは、8月になってメジャー復帰。出場32試合で打率.345(シーズン通算では,267)と、復調のきっかけを掴んだ。翌’07年は二塁手としてスタメンに定着。打率.288、32盗塁の成績を残してチームのプレーオフ進出に貢献した。ロッキーズは松井の逆転満塁本塁打などもあり球団史上初のワールドシリーズに進出するも、ボストン・レッドソックスに敗退。松坂大輔との対決では、松井が初回に先頭打者ヒットを放っている。この年、松井は二塁手としてトップクラスの指標を示したものの、オフにFAとなり、ヒューストン・アストロズに移籍した。

‘08年は春先こそ出遅れたものの、2番に定着してアストロズ打線を牽引。クーパー監督も「チームに最高のスパークをもたらしてくれた」と語るなど、チームの信頼を勝ち取った。96試合に出場して打率.293、20盗塁。翌年は5月に太腿を痛めて故障者リスト入り。復帰後の8月には日米通算2000本安打を達成した。怪我はあったものの、メジャー移籍後最多となる132試合に出場し、打率.250、9本塁打、19盗塁という成績だった。
 

  

 

`09年8月15日、ミルウォーキー・ブルワーズ戦の3回に日米通算2000安打を放つ

‘10年シーズンはジェフ・ケッピンジャーが二塁に定着したこともあり、控えでの起用が増える。松井は打撃不振に陥り、ペリー打撃コーチは「練習熱心すぎる真面目さから、自分を追い込んでしまっているようだ」と分析。結局、復調を待たずに解雇されることになってしまった。

その後、ロッキーズとマイナー契約を交わすも、メジャーに昇格することなくFAに。松井は日本復帰を決断し、東北楽天ゴールデンイーグルスと契約。7年間プレーして、最後は古巣の西武に復帰する。テクニカルコーチを兼任しつつ、’18年に43歳で現役引退。翌年から二軍監督に就任しており、その集大成が昨年の一軍監督就任だった。指導者としての長い野球人生は、まだはじまったばかり。捲土重来を期したいところだ。

※5ツールプレーヤーとは、走攻守の全てに優れたプレーヤーのこと。『ミート力』『長打力』『走力』『守備力』『送球力』の5つの能力が、一定水準以上に高い選手を指す。


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文=野中邦彦  text : Kunihiko Nonaka
photo by AFLO
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