MLBの挑戦者たち〜メジャーリーグに挑んだ全日本人選手の足跡
Vol.16 松井秀喜/日米で愛された名スラッガー【後編】
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ヤンキースでの転機が訪れたのは、6年目となる’08年シーズン。監督にジョー・ジラルディが就任し、松井の起用はDHが基本線となる。夏場には膝の古傷が悪化し、約2カ月にわたり戦線離脱。9月に膝の手術を行い、出場93試合、9本塁打という結果でシーズンを終えている。再起をかける‘09年、松井は3割30本100打点の高い目標を掲げる。35歳にして気力十分で迎えたシーズンとなった。
開幕戦に4番DHで出場した松井は、恩師・長嶋茂雄を超える日米通算445号本塁打を記録。幸先のいいスタートとなったが、以降は好不調の波が激しい状態が続く。だが8月には1試合7打点を記録するなど状態を上げ、最終的に28本塁打、90打点の成績でチームの地区優勝に貢献。ヤンキースはポストシーズンも順調に勝ち進み、6年ぶりのワールドシリーズに臨むことになる。
ワールドシリーズ第6戦で、先制の2ラン本塁打を放つ
連覇を目指すフィラデルフィア・フィリーズとのワールドシリーズでは、第2戦にサイ・ヤング賞投手のペドロ・マルティネスから決勝本塁打を放つ。先発を外れた第3戦も、8回に代打で登場してソロ本塁打を放っている。そして本拠地に戻った第6戦。松井は先発に復帰し、2回にまたもペドロ・マルティネスから先制2 点本塁打。その後も3回に2点適時打、5回にも2点適時二塁打を放つ。ワールドシリーズのタイ記録となる1試合6打点を記録し、場内に「MVP!」コールの大合唱が沸き起こった。
チャンピオンリング贈呈式で、デレク・ジーターらと再会を喜ぶ
ヤンキースはそのまま9年ぶりのワールド・チャンピオンに。松井は13打数8安打、3本塁打、8打点の活躍ぶりで、日本人選手初、DHとしても初となるワールドシリーズMVPに選出された。満面の笑顔で優勝パレードに参加したのも束の間、そのオフにヤンキースは松井との契約を延長せず、FAとなってロサンゼルス・エンゼルスへの移籍が決まった。
翌’10年の4月、ヤンキースタジアムで前年のワールドチャンピオンを祝う記念リングの贈呈セレモニーがあった。この日の対戦相手は、奇しくも松井が移籍したエンゼルス。ヤンキースの選手たちが次々にリングを受け取り、最後に名前を呼ばれたのが松井だった。観客席から万雷の拍手が巻き起こるなか、赤いユニフォームを着た松井が登場。笑顔でリングを受け取ると、ヤンキースの選手たちが松井に駆け寄り、取り囲むようにしてハグを交わしあった。その光景は、MLB史に残る感動的なものだった。
実はこの時、松井に渡されたのはファンに配るための偽リング。仲のいいデレク・ジーター選手が仕組んだイタズラで、これには松井もすっかり騙されようだ。ジーターは「マツイのことだから面白がってくれたんじゃないかな」と笑顔で話している。2人は引退後もお互いを尊敬しあい、友人として特別な関係を築く仲である。
’11年7月20日、対デトロイト・タイガース戦で日米通算500号本塁打を達成
エンゼルスでは打率.274、21本塁打、84打点とまずまずの結果を残すも、調子の波が激しかったことなどが災いしてFAに。’11年シーズンはオークランド・アスレチックスでプレーしたが、打率.251、12本塁打、72打点と、自身ワーストとなる成績で終えている。オフにFAとなると、契約先がなかなか決まらず、無所属のまま’12年シーズンを迎えてしまう。
メジャーに昇格した試合で先制2ランを放つ
4月にようやくタンパベイ・レイズとのマイナー契約が決まり、5月29日にメジャー昇格。当日の試合で本塁打を放ち、6月にも本塁打を放ったが、以降は出場機会が減っていき、7月25日に戦力外通告を受ける。12月、記者会見を開いて現役引退を表明。日本球界復帰について問われた松井は、「以前の活躍を想像するファンの期待に応える自信をもてなかった」と述べている。ヤンキースの地元ニューヨーク・タイムズ紙は、2ページにわたる特集を組んで松井の引退を報じた。日米球界を沸かせたゴジラも、今年でいよいよ50歳。現在はあまり目立たない立場に身を置いているが、監督として表舞台に立つ日は来るのだろうか。
引退した翌年の7月28日にニューヨーク・ヤンキースの本拠地ヤンキースタジアムで松井秀喜の引退セレモニーが行われた。この日、球団と松井は1日契約を結び、チームの一員としてその功績を讃えた
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