〈ピッツェリア イル・タンブレッロ〉の“パニーノ”
ナポリピッツァの繁盛店〈リンシエメ〉を率いる松丸俊輔オーナー。東京ピッツェリアの草分け〈ナプレ〉で腕を磨き、世界選手権で受賞歴もある実力派ピッツァイオーロ(ピッツァ職人)が自身にとっての“定点”と話す店と、一皿を紹介。
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- 注目シェフが教える感動の「名店メニュー」 vol.36
揚げパニーノ
(1500円、ランチ限定)
オリーブや松の実と蒸し煮にしたスカローラ(エンダイブ)の甘みが、揚げた塩ダラの塩味と好相性。歯切れよく、ほのかな甘みがある生地がよき受けとめ役。ほか、背黒イワシや鶏肉などで作ることも。スープ、デザート付き。
〈リンシエメ〉松丸俊輔オーナー
炭火焼きも楽しめる気軽なピッツェリア
味のクオリティは“現地さながら”といわれる東京のナポリピッツァのなかで、東京の東・亀戸からシーンを盛り上げる人気店。ナポリピッツァとともに、炭火で豪快に焼いた肉など、シンプルなイタリア料理も楽しめる。ソムリエがセレクトするイタリアワインも飲み頃が充実。
住所:東京都江東区亀戸1-31-7 営業時間:11:30~14:00LO、17:30~21:00LO 定休日:月曜、第2・4日曜 TEL:03-5858-9713
見えない仕事で変わらない味を飽きさせない
松丸俊輔オーナーに理想の外食について尋ねると、すぐさま「蕎麦屋での時間!」という答えが返ってきた。
「サクッと食事だけでも満足できるし、つまんで飲んで蕎麦で締めるのもいい。1人でも、大勢でわいわいやっても居心地がいい店が好きですね」
“蕎麦”を“ピッツァ”に替えれば、そのまま自分の店が目指すところ。だからこそ蕎麦屋に足が向くのだと話すが、同じ理由で通うのが大坪オーナーの店。
「メニューはほとんど変わらないのに、飽きさせないなにかがあるのは老舗の蕎麦屋のよう。変わらないように見せつつ、味を高めていく仕事は並大抵ではない。先日、久しぶりに揚げピッツァを食べたら生地がますます美味しくなっていて」
自身にとって、大坪オーナーはピッツァの面白さ、奥深さを教えてくれた“心の師”でもあるという。オーナー同士として話せるようになった今も、背中を追い続ける存在なのだ。
気取らず気軽に現地そのままの楽しみ方で
揚げたピッツァ生地で、塩ダラや背黒イワシなどのフリットをサンド。揚げ物がダブル? と驚くが、食後感は重くない。大坪善久オーナーが、ピッツァ同様に力を入れるのが、ナポリっ子のソウルフードである揚げ物。厨房には高級とんかつ店よろしく、油の温度が異なるフライヤーが2つ並んでいる。「メニューによって低温か高温か、あるいは2度揚げか、と使い分けます」とのこと。
「揚げピッツァの生地なら、高温で約1分半。同時に揚げ上がるよう見計らい、挟む魚などを一緒に揚げます」
全メニューがテイクアウト可能。わずか20席足らずの繁盛店は、混雑する時間帯にテーブルにたどりつくのは至難でも、店の味をオフィスや家庭に持ち帰ることができる。広い間口をさらに広げるのが、コロッケなら1個から買える揚げ物メニュー。ピッツァの味は“本場並み”といわれる東京で、いまだ知られざる現地の人の食の楽しみ方を伝えている。
Check1 パニーノ専用の生地ピッツァとは別に仕込む、パニーノ専用生地。小麦粉、水に牛乳、砂糖なども加えて手ごねで作る。歯切れよく、軽く食べられるようグルテンを出しすぎないようにするのもポイント
Check2 具材と一緒に高温で生地も魚(塩ダラ)も同じ油で一緒に揚げる。揚げ上がりが同時になるよう、フライヤーに時間差で投入。生地は200℃で約1分半、塩ダラはプラス2~3分でからりと仕上がる
PIZZERIA IL TAMBURELLO
ピッツァ好き、イタリア料理好きが全国から足を運ぶ店であり、日本橋堀留町界隈で屈指の繁盛店としても知られる。開業から11年たった今も、平日の昼どきには店の前に長い列ができる。ピッツァ職人である大坪善久オーナーいわく「町の人々の食堂」。洒落ているが気取りはなく、ラフにかぶりつけるのに、とびきりの旨さがある。リピーターが後を絶たないのも納得だ。ピッツァ以外のメニューも、魚介料理、揚げ物など、飾らぬ味で、ワインはカンパーニア州産のみ。直球の味と南イタリアの空気に満たされる。
店内。小さな店だが、天井が高く開放的
パスタ入りベシャメルコロッケ“フリッタティーナ・ディ・マッケローニ”。1個300円(ランチタイム)
店名は“タンバリン”のイタリア語から
大坪オーナー
●ピッツェリア イル・タンブレッロ
住所:東京都中央区日本橋堀留町1-2-9 1F
営業時間:11:30~13:30LO、17:00~21:00LO
定休日:日曜、月曜
TEL:03-6661-6628
雑誌『Safari』3月号 P182~183掲載
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photo : Jiro Otani text : Kei Sasaki