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2025.06.28


『ミッション:インポッシブル』シリーズが映画界に残したものとは?【後編】 ツメアト映画〜エポックメイキングとなった名作たち~ Vol.35


『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』(2015年)

続く2015年の第5作『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』もまた、『ゴースト・プロトコル』と甲乙つけがたい質的達成を示したシリーズ屈指のマスターピースだ。そしていよいよ本シリーズは50代にして“アクション神”と化したトム・クルーズが常軌を逸していく超伝説の領域へと突入していく。

例えば離陸していく飛行機にしがみついたり、普通なら死ぬほどの長時間水中に潜ったり、2018年の第6作『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』では超高層ビルの屋上から対面のビルに大ジャンプしたり(しかもその時に足首を複雑骨折したらしい)……。どうかしてるほど前人未踏の限界突破スタントに自ら挑むトムの勇姿を映し出すようになり、ある意味、虚構の物語にもかかわらず彼の決死のチャレンジを記録するメタドキュメンタリーのようになっていく。『ローグ・ネイション』では、前作『ゴースト・プロトコル』で脚本にノンクレジット参加していたクリストファー・マッカリーが監督としてシリーズ初登板。トムから“マックQ”との愛称で親しみを込めて呼ばれる彼は、脚本を務めた『ワルキューレ』(2008年、監督/ブライアン・シンガー)でトムと初めて組み、そこから監督作『アウトロー』(2012年)などで唯一無二のパートナーシップを築いていった。『ローグ・ネイション』以降、本シリーズの監督はすべてマッカリーが手掛けている。おそらく彼はトムがやりたい映画のヴィジョンを忠実に実現させてくれる最良のサポーターなのだろう。
 

  

 

『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』(2023年)

こうして気がつけば『ミッション:インポッシブル』シリーズは、アクション映画の進化を大きく促しただけでなく、その枠を超えて“映画とは何か?”という原理的な問いを、現在のハリウッド業界やエンタメ業界の混迷に突き付ける巨大な試金石になっている。観客と映画を結びつける可能性について、全身全霊で考察と実験を重ねているのが他ならぬトム・クルーズだ。

とりわけシリーズ第7作『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』は、奇しくも2023年7月にはじまった全米映画俳優組合(SAG)のストライキと公開時期が重なる皮肉に見舞われた。あくまで結果的にではあるが、生成AIの急速な進化などにより、パンデミック後のハリウッドでは俳優業が脅かされるかもしれないという映画人たちの危機意識を背景に、イーサン・ハント=トム・クルーズはカスタムメイドのホンダCRF250に乗って約1220mの断崖絶壁から飛ぶ姿をスクリーンで見せつけたのだ。そしてストライキによる撮影中断という当初のスケジュールからの延期を挟んで、同じ物語の後半部に当たる第8作『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』を完成。この連作では“AI対人間”という象徴的な主題を物語に持ち込んで、生身の俳優の肉体を使った映画表現の臨界点を、トム・クルーズは誰よりも果敢に目指している。
 

  

 

『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』(2025年)

2025年7月3日で御年63歳――トム・クルーズという希代のカリスマ映画人は、まさにイーサン・ハントのミッションそのもののように、ドナルド・トランプ政権による関税問題など激しく揺れ動く映画界の危機の中で、“不可能を可能にする”という精神を体現しているのかもしれない。これからもそのインパクトが、映画界を不断に前進・進化させ続けることを、何よりトム大先生の末長いご健康を心よりお祈りしながら期待したい!
※前編、中編に戻る。
 

  

 

 
文=森直人 text:Naoto Mori
photo by AFLO
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