〈神楽坂しゅうご〉の“ラヴィオリ”
ガストロノミックな料理と酒場スタイルのハイブリッドで、食通が集う街・清澄白河を牽引する〈オーツー〉の大津光太郎シェフ。トップシェフが集結した日本橋・兜町〈カビート〉への参加も話題で、ますます注目されるシェフが、十年来通う店とは。
- SERIES:
- 注目シェフが教える感動の「名店メニュー」 vol.37
鹿の血のラヴィオリ
(1800円・要予約)
鹿の血のラヴィオリと、同じ鹿のローストが一皿になった、メインディッシュにもなる一品。仕立ては、その日の食材の状態によって変えるが、この日は「鹿肉の状態がよかったので」とのこと。ハーブが香るバターソースで。
〈オーツー〉大津光太郎シェフ
モダンチャイニーズとナチュラルワイン
名店〈トゥーランドット臥龍居〉で腕を磨いた大津光太郎シェフが2018年に開業。6000円~のコースで供される料理は、王道から旬の素材を用いた軽やかな仕立ての一皿まで緩急織り交ぜた構成で、店が推すナチュラルワインとも相乗する。深夜はバー使いも可能。
住所:東京都江東区三好2-15-12 峯岸ビル1F 営業時間:17:00~23:00LO 定休日:月曜(不定休あり) TEL:03-6458-8988
修業時代から背中を追い続ける永遠の目標
修業先はヌーヴェルシノワの世界を切り開いてきたトップレストラン。開業後は、ナチュラルワインのコミュニティからも一目置かれている大津シェフゆえ、料理人の交友関係は広い。が、「自分にとっての一軒」と聞かれたら、迷わず〈神楽坂しゅうご〉の廣瀬周悟シェフの名を挙げる。
「知人を介して店を知った10年前から今に至るまで、ことあるごと通い続けている数少ない店のうちの一軒。夏は桃のパスタ、冬はジビエ料理と、どの季節にも店の味があり、なんでも美味しい」
料理人としては同世代だが、独立は廣瀬シェフが先。大津シェフにとっては、常に背中を追う、尊敬の対象だとか。
「料理をいかに旨くするかということだけを考え続けている、とにかくストイックなシェフ。自分で畑を耕して野菜を育て、いろんなものを店で自家製して。料理人としても、経営者としても目標で、いい刺激を受けています」
飽くなき探究でここだけの味を突き詰める
メニューに並ぶ料理は、前菜からメインディッシュ、軽いおつまみまで約30種。オーダーはアラカルトが基本、シェフが1人で厨房を仕切る店とは思えないバリエーションだが「とりたてて特別なこととは思わない」と、こともなげに話す廣瀬シェフ。
「うちの店は、当日予約で来店されるゲストがほとんど。誰もがそのとき食べたいものを選べるようにと思って」
その日行きたいと思った店に足を運び、好きなものを食べる。それは、廣瀬シェフ自身が好きな食事のスタイルでもあるとか。加えて“その店にしかない味”を楽しむことも、大事にしているそう。
「だから“自家製”にこだわる店に行きます。いい食材はお金を払えば買えるけれど、自家製の味にはオリジナリティがあるから。自分で野菜を育てるのも、そんな気持ちからかもしれない。農家の野菜のようにできなくても、その野菜だからできる料理が店の味になります」
Check1 鹿の血を詰め物に
ワインのつまみとして用意する、エゾシカ血のペーストをパスタの詰め物に。パスタ生地やソースとのバランスを考え、詰め物にするときだけリンゴを加え、甘味をアクセントに
Check2 バターのソースで
ソースはシンプルかつリッチに、溶かしバターで。肉類に合うローズマリーでワイルドさに華やかな香りをプラス。茹で上げたラヴィオリに、しっかりと纏わせるのもポイント
神楽坂しゅうご
和の食材を生かした季節感あふれるイタリア料理で支持される〈神楽坂しゅうご〉。味を知る大人が集う店として知られ、ジャンルの垣根を越え、料理人のファンも多い。厨房は、オーナーの廣瀬周悟シェフがたった1人で切り盛りする。メニューは、信頼の置ける生産者から仕入れる肉や魚介、郊外の畑で自ら育てる野菜を軸に、前菜、パスタ、メインに軽いおつまみまでバリエーション豊富。見えないところにかけられた手間暇が作る、旨さにまっすぐな職人の料理をアラカルトで楽しめるのは、実に贅沢だ。
2021年にリニューアル
カルボナーラ1450円。〈オーツー〉の叉焼(チャーシュー)で作る期間限定の特別版
ワインはイタリア産のほか、宮城〈ファットリア アル フィオーレ〉のものも
2007年開業
●神楽坂しゅうご
住所:東京都新宿区筑土八幡町5-12
営業時間:18:00~24:00LO
定休日:日曜・第1月曜
TEL:03-5228-1801
雑誌『Safari』4月号 P174~175掲載
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photo : Jiro Otani text : Kei Sasaki