〈コジコメ〉の“野菜の前菜”
東京郊外に開いたレストランを予約至難の店に育て“国領の奇跡”と称される〈ドンブラボー〉平 雅一シェフ。本拠地と神楽坂にピッツァ中心の店をオープンするなど飛ぶ鳥を落とす勢いの平シェフが足を運ぶ店を紹介。
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- 注目シェフが教える感動の「名店メニュー」 vol.38
菜の花と牡蠣の蒸し煮
(2400円)
トーストしたバゲットに、蒸した菜の花と牡蠣をのせ、グラナパダーノチーズと香り高いオリーブオイルをたっぷりとかけて仕上げる。旬の菜の花の生き生きとした味わいが主役。シンプルながら、香り、旨味が層を成す。
〈ドンブラボー〉平 雅一シェフ
窯焼きピッツァを含むガストロノミーコース
広尾(現岡山県牛窓)の〈アッカ〉を筆頭に国内外の実力店で腕を磨いた平雅一シェフが2012年に開業。イタリアの郷土の味に根ざすガストロノミックな料理と、薪窯で焼くピッツァを融合させたユニークなコースで食通を魅了。国領、神楽坂にピッツァ店も経営。
住所:東京都調布市国領町3-6-43 営業時間:12:00~14:00LO、18:00~22:00LO 定休日:水曜 TEL:042-482-7378
イタリア料理界の今を象徴する最精鋭の店
都心の繁華街でもなく、自然豊かなローカルでもない。飲食店の出店、継続が最も難しい東京郊外で10年、ゲストに支持され続けているイタリア料理店〈ドンブラボー〉。料理人たるもの“外食も仕事のうち”。多いときは月2回関西に遠征することもあるという平シェフが定点として足を運ぶのが井村俊介シェフの〈コジコメ〉だ。
「僕もずっとこの世界で働いてきたので、時代ごとのイタリア料理のトレンド、潮流みたいなものは肌で感じている。今なら、素材が主役の料理をシンプルに、自然派ワインとともにというスタイル。次々にその手の店ができ続けるなかで、井村シェフの味作り、店作りはズバ抜けているなと感じるんです」
シンプルはごまかしがきかないから、難しいのだとも話す。
「技術もセンスもなければ成り立たない。ポンと出される一皿が、見た瞬間旨そうで、間違いなく旨い。すごいと思います」
ハレの日でなく毎日食べられるイタリアン
オーナーシェフの右腕として活躍した広尾〈ボッテガ〉を筆頭に、イタリア料理の名店、繁盛店で経験を積み、店を開いた井村俊介シェフ。舌の肥えたイタリア料理好きに加え、平シェフのような料理人仲間からも信頼は厚いが「普
段使いの、ワインの酒場でありたい」と、こともなげに話す。
“ありのまま、そのまま”を意味するイタリア語の店名には、ゲストはもちろん、自身も自然体で、という意味が込められているのだとか。メニューはすべて同じという日は1日たりともなく、その日届いた旬の食材を見て決める。毎日ノートに手書きされ、日記帳のように店の歴史を刻むメニューブックも必見だ。
井村シェフ自身が大の酒好き、ワイン好きで「料理はワインとともにあるべき」が身上。あれこれ手をかけすぎず、旬の素材の味を皿の真ん中に据えた料理は、センスはあるが気取りのない空間と、ナチュラルワインによく似合う。
Check1 少量の水で蒸し煮ごくわずかな水のみで菜の花を蒸し煮にすることで、香りも旨みも逃さない。時間差で牡蠣を投入し、一緒に蒸し上げて、旨味、風味をまとわせるのもポイントだ
Check2 トーストを敷いてバゲットをトーストして、料理の土台に。菜の花、牡蠣のエキスを吸い込んだオリーブオイルで軟らかくなったところを崩しながら食べる。しっかりつけた焦げ目もスパイス的に
Cosi Com’e
どの駅からも離れた都心の“陸の孤島”下馬にありながら、夜な夜な酒好きや旨いもの好きが集う。それが広尾のカウンターイタリアン〈ボッテガ〉の笹川尚平シェフを盛り立てた井村俊介シェフが、2019年に開いたイタリア酒場〈コジコメ〉だ。前菜からパスタ、肉、魚料理まで季節の素材を使った料理を提供。余分な飾りはなし、素材の味を直球で楽しませるシンプルな料理は、店が推すナチュラルワインと相乗する。アンティークを配した店内、手書きのメニューブックなど、スタイルにもセンスを感じる。
厨房に面したカウンター席が中心
新たまねぎとアンチョビのスパゲッティ1980円
グラッパやアマーロなどイタリアのスピリッツ、リキュールからクラフトジンまで食後酒も豊富に揃う
井村シェフ
●コジコメ
住所:東京都世田谷区下馬2-14-18
営業時間:17:00~23:00(料理は21:00LO)
不定休
TEL:03-6318-6402
雑誌『Safari』5月号 P230~231掲載
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photo : Jiro Otani text : Kei Sasaki