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2021.03.20


〈ワインバー杉浦印房〉の“ウフマヨ”

現地の食文化を伝え、東京のスペイン料理界をリードする銀座の“米”料理専門店〈アロセリア ラ・パンサ〉の小林悟シェフ。外食に求めるものは「ほっとできる時間」と話すシェフが、仕事終わりに目指す店、その一皿をご紹介。


ウフマヨ
(300円)

80年以上前から平飼いで養鶏を行う〈ワタナベファーム〉の純国産鶏の有精卵を使用。黄身はコクがありながらも優しく、白身は健全な弾力があり、濃厚だけにとどまらない卵の旨みを堪能できる。たっぷりマヨネーズもリッチ

オススメしてくれたのはこの人!
〈アロセリア ラ・パンサ〉小林 悟シェフ豊富な米の料理を軸に王道のスペインの味を
クラシック志向を貫くスペイン郷土料理店〈サル・イ・アモール〉の“米”料理専門店として2017年に開業。パエリアだけにとどまらない米の料理の奥深さを伝える。ミシュランの星つき店を含め、現地での修業経験も豊かな小林シェフは、日本のスペイン料理界を牽引。
住所:東京都中央区銀座1-15-8 銀座耀ビル1F 営業時間:11:50~14:30(土・日曜・祝日~15:00)、17:00~22:30 定休日:月曜 TEL:03-6228-6793


■小林シェフ
定番料理がきちんと美味しい

仕事帰りに仲間とさくっと、休日には奥様と。小林シェフが、ここ数年、あらゆるシチュエーションで一番足繁く通っているのが〈ワインバー杉浦印房〉だという。住まいからも勤め先の店からも近く、行きやすいのは確かだが、理由はそれだけではなさそうだ。

「定番料理ほど、味のよしあしが出てしまうもの。杉浦シェフのウフマヨは、素材のよさ、絶妙な火入れ加減など丁寧な仕事が伝わってくる。お邪魔するたびに必ず食べているのに、全く飽きないんですよね。野菜の前菜もなにを食べてもきちんと旨い。ほっとできるんです」

ウソのない、まっすぐな味を丁寧に作る杉浦シェフの料理に、千里ソムリエールのワインがぴたりと寄り添うのだとか。

「グラスワインの豊富さをウリにする店は多いけれど、1本ごとの個性や料理との相性もきちんと説明してくれる。それでいて押しつけがましくなくて。いつもゆだね切ってしまっています」

■杉浦シェフ
生産者が作る健全な食材をシンプルに

店のある中央区新川が地元。家業のハンコ店を違う形で受け継ぎ、地域に根ざす店を目指す杉浦シェフ。

「料理の修業経験は決して長くない自分が、どうしたらお客様に満足いただけるかと考えたとき、よい素材と、時代を超えて愛されるフランスの伝統料理や家庭料理に行き着きました」

その柱ともいえるのが、小林シェフも絶賛するウフマヨだ。

「健全に育った鶏が生む卵の味は複雑で、白身まで風味と食感が豊か。マヨネーズも熟成赤ワインビネガーを贅沢に使い、10回以上の試作を繰り返して、〈ワタナベファーム〉さんの卵に合う骨格のある味に仕上げています」

牛肉は群馬県の畜産農家〈石坂牧場〉へ何度も足を運んで、牛の肥育について学び、ときに長い間成長を見守った牛の肉を仕入れることも。9席の規模の小さな店ではあり得ないこだわりが、生産者と食べ手の幸せな循環を生み出している。

Check1 健康な鶏の有精卵を使用杉浦シェフ曰く「複雑味のある旨みがある」卵。鶏舎や周辺の環境作りから飼料、水にまでこだわり、80年以上平飼いを続ける先駆的農場のノウハウが生む、唯一無二の味だ

Check2 熟成ビネガーで出す深みウフマヨ専用のマヨネーズは、フランス・ボージョレ地方産の3年熟成のワインビネガーを贅沢に使用。奥行きのある味わいと、濃厚なテクスチャーが味の決め手となっている

[ワインバーすぎうらいんぼう]
ワインバー杉浦印房


店名は、店主の杉浦卯うじょう生シェフの家族が代々営んでいたハンコ店の屋号から。卯生シェフが調理を、妻の千里ソムリエールがサービスを担当する、夫婦経営のワインバーだ。小さな店ながら、供する料理は“まっとう”を貫く。そのモットーは、真摯な生産者の食材をきちんとした形で紹介すること、フランスの伝統食に根づいた料理であること。それを体現するのが、栃木県〈ワタナベファーム〉の有精卵を使ったウフマヨなどの看板メニュー。気取らない雰囲気と基本に忠実な食べ疲れない味には、料理人のファンも多い。

5席のカウンターが中心。ロフトがセラーに

群馬県〈石坂牧場〉エミートのハンバーグステーキ1800円

フランス産、日本産合わせて700本ものワイン

異業種から飲食の道を志した杉浦シェフ

 
Information

●ワインバー杉浦印房
住所:東京都中央区新川2-13-6 明正ビル1F
営業時間:18:00~23:00L.O、土・日曜17:00~22:00L.O
定休日:月・火曜
TEL:03-6228-3363

雑誌『Safari』4月号 P174~175掲載

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写真=大谷次郎 文=佐々木ケイ
photo : Jiro Otani text : Kei Sasaki
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