〈コーネル〉の“トルテッリ”
イタリア料理の技術と、和食で育った日本人としての食のアイデンティティを融合させ、“居酒屋”というポップな形で発信する〈オトナノイザカヤ中戸川〉。その中戸川弾シェフがリスペクトする店もまた、料理ジャンルを超えたユニークな一軒。スペシャリテとともにご紹介!
- SERIES:
- 注目シェフが教える感動の「名店メニュー」 vol.18
水餃子(6000円~のコースより)
つるんとした食感、噛むほどにふくらむ粉の旨みと香り、餡のジューシーさ。ほんのりピリ辛のバルサミコポン酢が、風味をいっそう引き立て、ワインとの相乗効果を促す。笠間焼の人気陶芸家・ケイコンドウ氏の器で
〈オトナノイザカヤ中戸川〉中戸川 弾シェフイタリア×和食のハイブリッド居酒屋
広尾のイタリア料理店で料理長を務めた中戸川シェフが独立に際し選んだのは、イタリア料理の技術と日本の食文化が共存する次世代居酒屋。その品々はミクスチャーではなく、ハイブリッド。お造りや旬菜のお浸しあり、手打ちパスタありで、舌の肥えた大人の胃袋をつかむ。
住所:東京都渋谷区上原1-33-12 ちとせビル2F
営業時間:17: 00~22 : 00LO 定休日:月曜 TEL:03-6416-8086
■中戸川シェフ
イタリアの土台の上にある味わい
中戸川シェフが親しみをこめて「タカさん」と呼ぶ菊池シェフは、イタリアのボローニャ近郊のレストランで修業していた時代の先輩なのだとか。「僕が働きはじめた頃、タカさんはデザートを任されていて、シェフにもとても信頼されていた」と、当時を振り返る。
「自分が持つ技術や経験を生かして、新しい楽しさ、価値を生み出す。大人の遊び心を感じる表現が、きちんと美味しさに着地するのは、しっかりとしたイタリア料理の土台があるからこそ。それを象徴するのが、“水餃子”と銘打ったタカさんのトルテッリだと思います」
サービスを担当する、神作さんとの連携、あうんの呼吸も店の魅力だと話す。
「食材や生産者、料理に対する理解も深く、それでいて肩肘張らないサービスは、タカさんの料理にも通じる。食べ手になにひとつ強いることなく、楽しませながら食の本質をさらりと伝える2人の仕事に、いつも憧れを抱いています」
■菊池シェフ
美味しさを親しみやすい形で表現する
修業時代の後輩ながら、開業は中戸川シェフのほうが5年ほど先輩。
「バイタリティとホスピタリティあふれる仕事っぷりに、こちらも刺激されている。自分を料理人として育ててくれたイタリア料理に敬意を払いながら、それに縛られずに行こうという姿勢を見て、同志のように感じています」と菊池シェフ。
スペシャリテのトルテッリは、にんにくやニラを使わない“水餃子”のイタリア的解釈。餡はポルチーニ入り、生地は北海道産小麦で打つ自家製だ。
「ゲストにくつろいで、楽しい食の時間を過ごしていただくのが一番。スープに浮かべるより、バルサミコベースの“タレ”で、餃子感覚でめしあがってほしい」
パンにパスタ、魚の練り物など、店のコンセプトにもなっている“こねる”料理は、作るのも食べるのも好きだと話す菊池シェフ。手打ちパスタの本場、エミリア・ロマーニャで、手で覚えた仕事が店の味作りの軸になっている。
Check1 餡は伊国×日本!?
手切りにした豚バラ肉に、炒めて甘みを出したたまねぎ、乾燥ポルチーニを練りこみ、切り干し大根で食感をプラス。粗挽き肉より肉々しい噛みごたえになり、脂の甘みも引き立つ
Check2 十勝産小麦の生地
イタリアの小麦粉ではなく、風味がよく扱いやすい北海道・十勝産の小麦粉に全粒粉をブレンドして使用。生地はつるっとした食感と、噛んで美味しい粉の風味が伝わる厚さに
Konel[コーネル]
メニューはなし、料理は週替わりのコース一本で勝負。“こねる”をもじった店名どおり、自家製パンや“水餃子”と名づけた手打ちパスタ、自家製の魚の練り物や鶏つくねをコンソメで炊いたおでんという“こねる”料理が主役だ。手打ちパスタと生産者から取り寄せる野菜料理で一世を風靡した〈AW キッチン〉出身のサービス担当の神作知子さん、菊池隆樹シェフの2人が2018年に開業。イタリアでも修業経験のある菊池シェフ。調理法や仕立てにひとひねり加えた料理を、素材の滋味に落としこむ技はさすがだ。
木の温もりを感じるしつらえ
茄子とヒラメのお刺身サラダ(6000円~のコースの一品)
ワインのつまみになる自家製パン。この日はレーズン、カシューナッツとドライたまねぎの2種
厨房に立つ菊池シェフ
●Konel[コーネル]
住所:東京都渋谷区神南1-9-5 2F
営業時間:16:00~22:00LO(コース18:00~)
定休日:日曜、月曜
URL:https://www.facebook.com/konelshibuya/
雑誌『Safari』9月号 P166~167掲載
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photo : Jiro Otani text : Kei Sasaki