●今月のビジネスセレブ
ホテルショコラ CEO
クリス・ホロビン[Chris Horobin]Profile
長年にわたるリテールビジネスでの経験を踏まえ、いくつものメディアビジネスの立ち上げに参画したのち、2007年、三井物産とのジョイントベンチャーであるQVCジャパンのCEOに就任。世界中の子会社の中でトップの売り上げを誇る企業へと成長させる。退任後もリテールビジネスのCEOを歴任したのち、約1年間、妻子とともにヨーロッパをキャンピングカーで回り、再び日本へ。その経験を生かし、〈ホテルショコラ〉を日本に上陸させるというプロジェクトを始動。2018年に日本第1号店をオープンさせ、現在に至る。
パネライ
ルミノール マリーナ
●愛用歴/約7年
●購入場所/銀座の正規ブティック
●購入時の金額/約75万円
中古市場でも人気が高いホワイトダイヤル。ムーブメントはクロノメーター認定で、300m防水というタフなスペック。
「気に入っているポイントはたくさんあるのですが、ひとつ挙げるとするなら、手巻きムーブメントというところ。巻き上げていくときの音、触感……、それはクォーツや自動巻きの時計にはない醍醐味。ケースバックがスケルトンなので、機械の精緻な美しさを目でも堪能できます」
PANERAI[パネライ]
ルミノール マリーナ
ひと目でそれとわかる〈パネライ〉のフラッグシップモデル。イタリア海軍の特殊潜水部隊が任務を遂行する際に装着していた時計が出自という歴史的背景や、唯一無二のデザイン、存在感で、世界中の男たちを魅了し続けている。これはケース径44㎜で手巻きムーブメント搭載のPAM 00113。現在はディスコンとなっているが、カレンダー表示を搭載していないシンプルなこのタイプは、中古市場でも高い人気を誇っている。
2018年に日本上陸を果たした〈ホテルショコラ〉。瞬く間に店舗を拡大し、日本における高級チョコレート市場に新たな風を吹きこんだクリスの腕には、美しい光沢を放つチョコレート色のカーフストラップが装着された〈パネライ〉が輝いている。目をこらして見ると細かい傷はついているが、パッと見ではまるで新品のような美しさだ。
「実は、ケースが汚れたら水できれいに洗っているんですよ(笑)」
300mという高い防水性を誇るルミノール マリーナならではの、なんとも豪快なセルフメンテナンス! 〈パネライ〉がこれほど世界の男たちを魅了し続ける理由のひとつは、そのタフさをはじめとした、確かな機能性だろう。
「自分でも少し変わった時計の使い方をしているのは自覚していますが(笑)、いつもはフェイスが手首の内側にくるようにつけています。今日は撮影のために珍しく普通のつけ方をしましたが、実は父親が、このようにして使っていたんです」
クリスの父親は若かりし頃、レーシングドライバーだった。
「父は車の修理なども自ら手掛けていたので、マシンの狭い隙間などに自分の腕を入れての作業もありました。なので時計を守るためにフェイスを手首の内側にしてつけていて、自然と私も同じようにつけるようになったんだと思います。そんなふうに使っているから、年月を経ているわりにはきれいなのかもしれません」
この〈パネライ〉を購入するまではずっと、〈タグ・ホイヤー〉のモナコ。それもスティーブ・マックイーンモデルを愛用していたというクリス。そんなチョイスからも彼が父親に大きな影響を受けていることが窺われる。
「2013年に、イギリスでパイロット免許を取得しました。もちろん趣味で(笑)。その後日本に戻ってきて、ちょうどモナコを修理に出していたこともあって、新しい時計を探していたんです。パイロット免許取得後ということで、当初はパイロットウォッチを、と考えていたのですが、なかなかこれといったものに出合えませんでした」
そして最終的にクリスが選んだのは、この〈パネライ〉だった。
「〈パネライ 〉はご存知のとおり、イタリア海軍に縁のある歴史あるメゾン。私はイタリアに住んでいたこともあるし、その歴史的背景にまず心を動かされました」
このルミノール マリーナというコレクションにも、ケース径やフェイスの色、カレンダー表示の有無など様々な選択肢がある。その中からこれを選び抜いた理由はなんだろう。
「まず、この白いフェイスの美しさ。そしてカレンダー表示がないシンプルなところ。長年愛用してきたモナコはカレンダーが付いているのですが、実はこれはまず見たことがない(笑)。私には不必要な機能なので、シンプルなもので十分だと思いました。だけど最も心惹かれたのは、手巻き式というところです」
クリスがこの時計を購入した当時から現在も、〈パネライ〉では機械式が主流だ。
「ゼンマイを巻き上げるときのカチカチという音。そして巻き上がっていくにつれ、少しずつタイトになっていく感触……いい時計だと実感する瞬間です」
耳で、手で、そしてケース裏のサファイアクリスタル越しに、目で。クリスの五感を優しく刺激し、幸福な気持ちへと誘う。
「それは私にとって、ひとつの儀式です」
これだけ惚れこんで使い続けている〈パネライ〉はクリスにとって、“運命の1本”に他ならない。そんなふうに心から愛することができる時計を選ぶためには、なにに重点を置いたらいいのだろうか?
「時計を選ぶ際に大切なのは、自分とのバランスだと思うんです。大きさはもちろん、重さも含めて、自分の体とのバランス。この〈パネライ〉はズシリとした重量感があり、それを重いととる人もいるかもしれませんが、私には心地のいい重さなんです。そういう意味でも、非常に私とバランスが取れている時計だと思います」
この〈パネライ〉に心満たされているクリスだが、次に買う時計はひそかに、もう意中にある。〈オメガ〉の、スピードマスタームーンウォッチ“ダーク サイド オブ ザ ムーン”だ。
「故郷の両親はともに90代と高齢ですが、今も健在で仲よく暮らしています。実に70年以上前に彼らが結婚したとき、互いに〈オメガ〉の時計を贈り合い、それを大切に使い続けているんです。なので私もいつかは〈オメガ〉の時計を手に入れたいという思いを温めてきました。〈オメガ〉もウォッチメイキングの伝統を大切にし続けているブランドで、最新のテクノロジーを追求する一方で、そこには歴史や文化、長い年月紡いできた物語が存在します。我々のチョコレートというのも同様、非常にオーセンティックなものを企業としても大事にしているので、価値観は共通しますね。時計もチョコレートも、人生を豊かに彩り、幸福感を与えてくれるものですから」
日本上陸2年めを迎えた英国No.1カカオブランド「チョコレートを通じ、ホテルのような非日常の時間を味わい寛いでいただく」という思いがブランド名に込められた、イギリスを代表するカカオブランド。栽培から手掛ける上質なカカオを原材料としたチョコレートは200種類以上に及ぶ。また、ギフトにも最適なチョコレートだけではなく、バリスタグレードの本格的な香りと味わいが楽しめるチョコレートドリンクメーカー“ベルベタイザー”も、自宅で過ごす時間の豊かさが求められている昨今、好評を博している。
雑誌『Safari』4月号 P180~181掲載
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photo : Tomoo Syoju(BOIL) text : Kayo Okamura