ANAインターコンチネンタルホテル東京 総支配人――ミシェル・シェルトー
シックなスーツの着こなし、そしてエレガントな立ち居振る舞い。なにも語らずも、その姿からは一流のホテリエとしてのキャリアと洗練が漂う。その洗練を静謐にあと押ししているのは、手元でさりげなく光る〈ブライトリング〉のこのクロノグラフだ。
- SERIES:
- ビジネスセレブの「時を紡いで」 vol.07
●今月のビジネスセレブ
ANAインターコンチネンタルホテル東京 総支配人
ミシェル・シェルトー[Michel Chertouh]
Profile
フランス・パリ生まれ。パリのインターコンチネンタルホテル料飲部門からキャリアをスタートし、2001年にはブラジル・サンパウロのインターコンチネンタルホテルで総支配人に就任。以来世界中の様々な地域で総支配人を歴任し、2017年8月から現職。同時に東京地区並びに沖縄地区のインターコンチネンタルホテルを統括するリージョナル総支配人を兼任している。
ブライトリング クロノマット ヴィテス
●愛用歴/約20年
●購入場所/フランス・パリの時計専門店
●使用頻度/週に5回以上
飛行機を操縦しながらでも読み取りやすいように、斜体にした大ぶりのアラビア数字のインデックス。非凡な個性と出自を語る。
「デザイン、大きさ、色──すべて気に入っているので、どこかひとつを挙げるのは難しいのですが、強いて言うなら、文字盤のニュアンスのあるブルーの色みでしょうか。白やブラックでは醸せない洒脱な雰囲気を、自然に演出してくれます」
ブライトリング[BREITLING]
クロノマット ヴィテス
1997年に発表され人気を博した伝説のパイロット・クロノグラフ。タフなディテールと、39㎜というコンパクトなケースサイズの絶妙なバランスが洗練を醸し出す。このクロノマットヴィテスは生産終了しているが、現在入手可能なモデルの中では、クロノマット JSPがそのDNAを受け継いでいる
ケースもブレスレットもピカピカに磨きあげられ、まるで新品のような輝きを放っているといっても言いすぎではない。しかし、なんと実に20年以上、毎日のように愛用している時計だという。
「25歳のとき、海外赴任する門出の日に、両親から贈られました。特にリクエストをしていたわけではありませんでしたし、なにかを達成したとか卒業とか、そういうタイミングでもなかったのに」
プレゼントを手にし、包装紙を開けたときの驚きと嬉しさは、20年以上たった今でも忘れないという。
「確か当時の〈ブライトリング〉のボックスは黄色で、それが現れたときに、中身はわかったので(笑)。箱を開ける前から、それはもう、とびきりの笑顔になっていたと思います。もちろん今の自分にとっても高価な時計ですが、当時の若かりし自分にとっては何倍も高価なもの。また、それがかねてから憧れていた〈ブライトリング〉のパイロット・クロノグラフ。それが自分のものになるなんて! と信じられないくらい嬉しかったです」
時計が欲しいとも、ましてや〈ブライトリング〉に憧れているとも両親には伝えていなかった。けれど25歳になった自分の息子になにを贈ったら一番喜ぶか? シェルトーの両親は、ちゃんと理解していたのだった。
「彼らがなぜこのブランドを選んだかというと、私がちょうどその前に、兵役でフランスの空軍に従事していたからだったと思います」
当時、国民に義務づけられていた兵役に就き、空軍で様々な国へ飛びまわっていたシェルトーは、実家に帰るたびにその貴重な経験を両親に話していた。
「それまでに見たことのない景色、世界。そしてたくさんの出会い……。それらが私にとって非常に重要なもので、今後の人生の礎になると両親は思ったのではないでしょうか? その経験を忘れないようにと、歴史的にアビエーションと深い関係がある〈ブライトリング〉の時計を選んでくれたのではないかと。でも、あくまでも私の想像なので(笑)、次に帰国したら改めて聞いてみようと思います」
その後も自分で、何本か時計を買った。
「〈オメガ〉も持っていますが、あとは〈Gーショック〉や〈スウォッチ〉といったカジュアルなものですね。ここ数年は、アップルウォッチも愛用していますが、これはもっぱらエクササイズするとき専用になっています」
やはり思い入れのあるこの〈ブライトリング〉の時計の使用頻度が、一番高いと優しく微笑む。
「当初はレザーストラップが装着されていて、それもとても気に入っていたのですが、長年使っているうちに寿命が来てしまい、このステンレススチールのブレスレットにチェンジしました。また、2年ほど前でしょうか? シンガポールを訪れた際に思い立って、〈ブライトリング〉のブティックにオーバーホールをお願いしました。ケースを開けてムーブメントをいろいろと点検してもらった結果、20年以上もの長い間使っていてもなにも問題なく正常に動いていると。素晴らしい時計をプレゼントしてもらったのだと改めて両親に感謝しました」
その際にポリッシュもしたため、現在の新品のような佇まいになったのだ。
「クォーツ時計も使ったことがあり、確かに便利なところもありますが、電池が切れたら当然、交換するまで止まってしまいますよね。また、アップルウォッチも別の目的でとても便利ですが、どうしても充電する手間がかかる。それを考えるとこの〈ブライトリング〉のような機械式時計は、やはり魅力があります」
このクロノマット ヴィテスは自動巻き。パワーリザーブは48時間のため、週末も少しつけて止まらないようにしている。
「止まったらまた時刻を合わせるわけですが、そういうところもまた、機械式時計の魅力ですよね。一緒に生きているような感覚。また、つけたときのズッシリとした重み、装着感、腕の動きに合わせてローターが巻きあがる感触など、機械式時計ならではだと」
〈ブライトリング〉をはじめ、〈パネライ〉など、気になるブランドの新作が出ると、広告展開などのマーケティング戦略も含めチェックをしている。
「でもなかなか、この時計より惹きつけられるものには出会えませんでした。次にもしも買うとしたらーー〈パネライ〉のルミノール マリーナでしょうか」
空と海の違いがあっても、ミリタリーに出自があるタフな時計が好みのようだ。
「時計は自分自身を語るもの。そう考えると、20年も前に、今の自分も語ってくれるこの時計を贈ってくれた両親に、改めて感謝の気持ちが湧いてきます」
Company Information
社交に休息に活用できるクラブラウンジが魅力
1986年、東京全日空ホテル(旧名称)としてオープン。2007年にインターコンチネンタル ホテルズ グループの仲間入りをし、現名称に。世界各国からのゲストだけではなく、東京で暮らすビジネスパーソンの間でも高い支持を得続けている。とりわけ、35階に位置する“クラブインターコンチネンタルラウンジ”は、ビジネス、プライベート問わず、質の高いサービスと芳醇な時間を享受できると評判。写真は“クラブインターコンチネンタルジュニアスイート 月”の客室だ。
雑誌『Safari』10月号 P250・251掲載
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photo : Tomoo Syoju(BOIL) text : Kayo Okamura