アウディ ジャパン 代表取締役社長――フィリップ・ノアック
スーツの上からでもわかる、ほどよく鍛え上げられた無駄のないスタイル。スラリとした長身と小顔のバランスといい、整った顔立ちといい、その佇まいはまるで、スクリーンでシネマスターが演じる“ビジネスセレブ”のようにさえ映るフィリップ・ノアック。その手元でさりげなく、それでいて確かに存在感を放つのは、〈パネライ〉の稀少な限定タイムピースだ。
- SERIES:
- ビジネスセレブの「時を紡いで」 vol.04
●今月のビジネスセレブ
アウディ ジャパン 代表取締役社長
フィリップ・ノアック[Philipp Noack]
Profile
1973年、ドイツ生まれ。〈ピレリ〉を経て、2004年、〈アウディ〉に入社。台湾・オセアニアのセールスマネージャーや、アウディ シュトゥットガルトの社長代行営業本部長等を歴任した後、2014年、〈ベントレー モーターズリミテッド〉に出向する。2016年、〈アウディ〉の販売ディレクター、2017年、〈ベントレー モーターズ リミテッド〉欧州セールスディレクターを経て、2018年9月から現職に。
パネライ ルミノール・クロノ デイライト
●愛用歴/12年ほど
●使用頻度/週3日ほど
●購入場所/ハンブルグの時計店
シャープなブラックの文字盤に、クロノグラフとデイト表示を端正に配置。存在感がある44㎜径ながら、さりげない佇まいが洗練を醸す!
「なんといっても、44㎜という大ぶりなケースに、シンプルだからこそ美しさが際立つデザインが魅力。スポーティでいながらスーツにもマッチする、若々しさとラグジュアリー感のバランスも秀逸です。もちろん視認性も高く実用的でもあります」
ロレックス[ROLEX]
オイスター パーペチュアル ロレックス ディープシー〈右〉
2008年に販売開始されたディープシー。2018年に現在販売中の新ムーブメント搭載モデルにリニューアルされ、パワーリザーブが70時間と飛躍的に進化したが、44㎜のケース径や3900mという防水性能は変わらず、文字盤のデザインもほぼ踏襲されている
パネライ[PANERAI]
パネライ ルミノール・クロノ デイライト〈左〉
映画『トランスポーター』で、ジェイソン・ステイサムが着用したことで一躍注目を集めた限定モデル。映画ではブラックのアリゲーターストラップが装着されていたが、ノアックはメタルブレスレットをチョイス。このモデルは後継機の製造もされておらず、中古市場でも多く出回っていないレアな1本
「時計は我々男性にとって、ある程度お金をかけて楽しむことができる、そして毎日身につけられる、女性にとってのジュエリーのような存在ですよね。そういう意味ですごく好きですし、どの時計にもそれぞれ思い出が詰まっています」
現在、このほかに、〈ロレックス〉の時計を2本所有しているというノアック。すべてに共通しているのは、40㎜を超える重厚でグラマラスなケースサイズと、ステンレススチールブレスレットという点。そしてもちろん、いずれも機械式の自動巻きムーブメントだ。
ノアックとマッシブな時計の代名詞ともいえる〈パネライ〉との出合いは1999年、インターンシップとして働いていた香港でのことだった。
「偶然時計店で見かけて、まさにひと目惚れでした(笑)。でも、当時まだ若かった自分にはその時計は似合わなかったし、そもそもそれを買えるお金はなかった。だけどそれ以来、ずっと私の心の中に〈パネライ〉の時計が住み続け、いつかは必ず手に入れたいと。そんな思いをずっと温めてきました」
ちなみに、この〈パネライ〉が民間向けの腕時計市場に参入しSIHHに出展したのが1998年。ノアックは、確かな先見の明があったのだ。
そして晴れて〈パネライ〉を入手したのは、2007年。実に8年越しで、恋焦がれた時計を自分のものにした。
「シンプルで美しいデザインと実用性を兼ね備えているところ。また、“時計をつけている”と実感できる、ある程度ズッシリとした重みも私にとっては魅力的です。でも、正直に言えば理屈じゃないんです。それは女性と恋に落ちるのと同じではないでしょうか’(笑)」
その後、ビジネスマンとして着実にキャリアを重ねていったノアック。彼もまた人生の節目で、自らへのギフトとして腕時計を選んできたという。
「今日持ってきた〈ロレックス〉のディープシーは、2016年の春に購入しました。約3年半ほど出向していた〈ベントレー モーターズ リミテッド〉での仕事を終えて、再び〈アウディ〉に戻るときに記念として。〈ベントレー モーターズ リミテッド〉では欧州の営業責任者だったので、とにかくヨーロッパ中をたくさん回りましたし、毎日が挑戦の連続。もちろん仕事は楽しかったけれど、その分ハードではありました。いわゆる、自分へのご褒美ですね(笑)」
ディープシーを購入したのは、イギリスのクルーという都市にほど近い、小さな町にある時計専門店だったという。
「何度も足を運んで吟味しました。そのためか、本当はとても長いウエイティングリストがあったのにもかかわらず店主がとりはからってくれて。そう待たずに手に入れることができました」
そしてディープシーを購入した翌年には、ノアック夫妻の結婚10周年というアニバーサリーイヤーがやってきた。
「ジュネーブの時計店で、私から妻に、オイスターパーペチュアル デイトジャストを、妻から私にデイトナを、お互いに贈り合いました。結果として、2年続けて〈ロレックス〉を買ったことになりますが(笑)。でも高級時計の価値は下がるということはありませんから」
クルマと時計は親和性が高いものだが、ノアックにとっても、その2つに対する趣味は共通しているようで、「クルマも時計も、スポーティで高性能なものが好きですね」という。
確かにノアックの時計コレクションは、どれも高性能ムーブメントを搭載した堅牢なものばかりだ。また、先述のとおりステンレススチールケース&ブレスレットで、ラグジュアリースポーツウォッチというブレない1本の芯を貫いたセレクトだ。
「スーツにはもちろん、クラシックなレザーストラップの時計も合うと思いますが、自分らしさは大切にしたいので」
決して落ち着きすぎず、華美すぎず、さりげないリッチ感とオーラを醸し出すところは、どこか〈アウディ〉のスポーツカーの洗練と重なる。
「今回の来日の際には、一度にハンドキャリーをすることを避け、デイトナだけはドイツに置いてきました。次に里帰りしたら、必ずデイトナも連れてこようと思っています。時計は安い買い物ではないけれど、その価値や、日々、幸福感を与えてくれることを考えると高すぎる買い物でもありません。そう、時間を確認するために時計に目を落とすーそのこと自体をとても楽しんでいます」
間もなくサマーバケーション。留守番しているデイトナとの再会も近い。
Company Information
〈アウディ〉新型A6に熱い視線が集中!
1997年12月、フォルクスワーゲングループ3社(アウディ AG、フォルクスワーゲン グループ ジャパン、ファーレン東京)が、日本市場におけるグループ事業の再編等に関し基本合意。1998年、現社名に商号変更し、日本国内における輸入卸としての業務を開始する。写真は3月に発表された新型A 6。フルモデルチェンジにより、マイルドハイブリッドとハンドル操作アシストによる高度なレベル2の運転支援を搭載し、スタイリッシュな外観とともに注目を集めている。
雑誌『Safari』7月号 P222・223掲載
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photo : Yoshifumi Ikeda(BOIL) text : Kayo Okamura