【10選】世界中でサクラサク!
今年も桜の季節がやってきた。桜を愛するのはもはや日本人だけでなく、花見を目当てに外国人が来日するほど。海外にも友好の証として桜が贈られ、根づいた先の国々で花の名所として親しまれている。今回はそんな絶景と、桜にまつわるエピソードを紹介しよう。
- SERIES:
- 春夏秋冬 季節のトラベラー! vol.11
アメージングな桜!?
中国のパンダのように、友好の証として外交で用いられてきたのが日本の桜。古くは1912年、当時のアメリカ・ワシントンのポトマック川と、ニューヨークのハドソン川の両河畔に、日米の平和と親善の象徴として桜を寄贈。当時、マンハッタンで行われた歓迎植樹式で、アメリカのウッドフォード将軍は「多くの国々は軍艦や軍人を派遣することで祝意を示してくれたが、日本は桜を贈ってきた。軍艦は戦争を、桜は平和を象徴するものだ」と述べたという。
長い歴史の中では、ワシントンで開催されていた桜祭りが第二次世界大戦中に休止になったこともあれば、中国の武漢で占領時に植えられた桜を戦後に名所とすることに異論が噴出したこともあった。しかし、結局「花に罪はなし」と、美しい桜を愛でる楽しみを人々から取り上げることはできなかった。
戦後も資産家個人としての寄贈や、テレビ局のキャンペーン、義援金の返礼など、いろいろな場面で桜を介した友好関係が行われた。結果、今では"サクラ"や"ハナミ"といった言葉がそのまま海外でも通用するほどになった。
かつては気候や土壌の違いから海外での植樹は難しいといわれた時代もあった。今、接ぎ木や苗木の植え付けなどにより、寄贈分よりもはるかに多くの本数が世界で育っている。桜を愛でる思いで繋がる絆が、今後も長く続くことを祈りたい。
アメリカ
1912年、当時の東京市長が荒川沿いの桜を寄贈し、今では“全米桜祭り”を開催するほど名所となったワシントン。もとの荒川の桜は戦争や公害の影響で一時姿を消してしまったが、戦後ワシントンの苗木を荒川土手に逆輸入し、桜並木を復活させたという逸話は有名。
日本
“桜の世界三大名所”に数えられる青森県の弘前公園。園内にはソメイヨシノを中心に52種類、約2600本の桜が咲き誇る。なかでも人気なのが、散った桜の花びらがお濠に浮かぶ“花筏(はないかだ)”。桜の絨毯にもたとえられ、満開だけでなく散り際の美しさも楽しめる。
日本
三重県の美杉町三多気地区に咲くヤマザクラ。平安時代中期に真福院の僧、理源大師によって植樹。かつてこの地を本拠にしていた北畠氏が全盛の時代には、伊勢有数の文化都市として繁栄していたという。“さくら名所100選”に選ばれ、棚田の水面に映る桜は絶景だ。
日本
長野県大町市の中綱湖。湖面凍結時にはワカサギの穴釣りが人気で、その後のGW前後になると濃いピンクのオオヤマザクラが満開を迎える。いい伝えによると、湖底には地崩れで水没した十国寺という寺が眠っており、その鐘を引き上げようとした者は大雨に打たれ、必ず祟りに遭うという。
スペイン
スペイン西部、カセレス県のヘルテ渓谷。“ピコタ”と呼ばれる高級さくらんぼの産地として有名で、例年3月下旬~4月上旬に真っ白なポンポン状の花が咲く。お祭り好きなスペイン人は、開花時期に“桜の花祭り”、そして6~7月にさくらんぼの収穫や試食ができる〝さくらんぼ祭り〞を開催。花と実で、年に2度ピコタを楽しんでいる。
日本
水道用水や発電用水など、京都に琵琶湖の水を供給する琵琶湖疏水。かつては水運としての機能も有し、高低差の大きい蹴上~南禅寺間には舟ごと台車で運ぶインクライン(傾斜鉄道)が設置されていた。現在、廃線跡は文化財として保存。線路の上を歩きながらソメイヨシノやヤマザクラが楽しめるため、人気を集めている。
日本
奈良県宇陀市にある、樹齢300年(推定)の一本桜。高さは13m、幹まわりは3mを超える。大坂の陣で活躍し、身長180㎝を超える巨漢だった戦国武将、後藤基次(通称又兵衛)がこの土地で僧侶となり生涯を終えたとの伝説が残っていることにちなみ、“又兵衛桜”の愛称で親しまれている。
フランス
パリ郊外にある、東京ドーム約42個分の公園。手掛けたのは、ヴェルサイユ宮殿の庭園も設計した造園家ル・ノートル。その一角に、日本人資産家の薩摩治郎八がヤエザクラを約100本寄贈。今では“Hanami”や“Sakura”がパリでそのまま通じるほど、花見文化が浸透している。
ドイツ
ベルリン近郊、テルトー市。かつて街を東西に分断していたベルリンの壁が崩壊した直後、日本のテレビ局が発起人となり、桜の植樹キャンペーンがスタート。壁の跡地に沿って、ヤエザクラが4㎞にわたって咲き、“テレビ朝日さくら平和通り”という名称がつけられている。
台湾
台北から近い、淡水にある道教の寺。春になると塔(天壇)をぐるりと囲んでソメイヨシノが咲く。台湾では東日本大震災の際、多額の義援金に対する返礼として、各地に“絆の桜”が寄贈されており、日台友好の象徴として、ますます桜の名所は増えていきそうだ。
雑誌『Safari』5月号 P169〜174掲載
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