世界中にある温泉天国へ!【11選】
ぐっと冷え込んでくる、この季節は、温泉が心地いいシーズン。そのメカニズムは地中でマグマや地熱で温められた地下水が、地上に噴出したもの。火山が多い国で多く見られ、世界的に見ても日本は温泉大国。そんな人々を魅了する温泉は海外にもある。日本と異なる入浴文化や絶景風呂など、世界の温泉に入ってみよう。
東西で育まれた温泉の力
古くから療養に活用されてきた温泉。その効能が発見されたきっかけには諸説あるが、日本最古の温泉のひとつ愛媛県の道後温泉には“シラサギ伝説”が伝わる。足に怪我を負った一羽のシラサギが岩間から湧き出る温泉を見つけ、毎日足を浸していたところ、傷が完全に治って元気に飛び立って行ったという。
実際、道後温泉の泉質“単純温泉”は神経痛や関節痛への効果が知られている。浴用の効能は泉質によって様々。サトゥルニア温泉やつぼ湯の“硫黄泉”は慢性皮膚病やリューマチに、ローマン・バスやアンティーク・プールの“炭酸泉”は美肌促進や血圧低下に効能があるとされる。
また、温泉を使った療養は浸かるだけではない。ヨーロッパでは、温泉を飲んで健康促進を図る“飲泉”が盛ん。飲泉文化発祥の地、チェコでは“温泉は飲むもの”というほうが一般的だ。背景には、泉温が低いため入浴には不向きで、入浴文化がないこともあるらしい。実際、飲泉は医学的にも消化器系への効能が明らかになってきている。胃腸の刺激や便秘改善、食欲増進に繋がるとされ、日本では伊香保温泉や四万温泉などの飲泉が有名だ。
これからは温泉がより心地よくなる季節。澄んだ冬の風に吹かれながら露天風呂に浸かるもよし、飲泉が認められている温泉地なら"飲む療養"にトライするもよし。古くからの癒しに身を委ねたい。
イタリア
トスカーナ地方の古い火山を起源とした天然温泉。その歴史は古く、紀元前にイタリア中部で繁栄を遂げたエトルリア人も楽しんだといわれる。階段状に続く石灰棚で、下流に溜まった泥には美肌効果もあるとか。温度は37.5度とぬるめで、入浴には水着着用が必須。
アメリカ
ネバダ州にある噴泉塔。約90度の温泉が絶えず噴出し、炭酸カルシウムの堆積物により今も少しずつ成長している。七色に見えるのは硫黄や酸化鉄、また高温の中で生息する藻などが要因。音楽・アートフェスティバル“バーニングマン”の主催団体が一帯の牧場を所有し、過去のアート作品とともに見学できる。
イギリス
イギリスで唯一の天然温泉地バースにある巨大温泉施設。ローマ時代に造られ、1880年に遺跡として発見された。現在は博物館として公開されているため入浴不可だが、浴場跡の見学は可能。今でも46度前後の温泉が湧き、飲泉口や併設のティールームで飲むことが可能。ただ、ほのかな塩分や鉄分があり、やや飲みにくいかも。
コスタリカ
富士山に似た美しい姿で知られるアレナル火山。その麓の国立公園内では、湯量豊富な温泉が渓流のように熱帯雨林の中を流れる。温かいところでは40度近くあり、段差を利用した“打たせ湯”も存在。ちなみにアレナル山は現在活動中の活火山で、夜には赤く光る溶岩が見られることも珍しくない。
ハンガリー
ヨーロッパ最大級の複合温泉施設。まるで宮殿のようなネオバロック様式の外観は、1913年に建てられたもの。現在は拡張が進み、屋外プールから内湯まで19の浴場、10種のサウナが揃う。なかにはビール成分が混ぜられた浴槽に浸かりながら、蛇口から注ぐ生ビールも飲み放題となる“ビールスパ”のような変わり種も。
ニュージーランド
地熱公園ワイ・オ・タプ・サーマル・ワンダーランド内にある、直径約60mの間欠泉。二酸化炭素によって発生した泡が、シャンパンのように絶え間なく湧いて弾ける。色あざやかに見える原因は、ヒ素やアンチモンなど天然の鉱物によるもの。源泉は70~80度と高温のため、入浴はできない。
トルコ
紀元前190年に建設されたペルガモン王国のヒエラポリス遺跡。保存状態のよい円形劇場や博物館(旧大浴場)と並んで人気なのがこちらのプール。足元に転がる石柱や大理石と一緒に入浴を楽しめる。年間をとおして水温は36度前後。炭酸泉の美肌の湯のためクレオパトラも立ち寄ったとされるが、その真偽は不明。
ドイツ
文豪マーク・トウェインも絶賛した、ドイツ屈指の温泉保養地バーデン・バーデン。1877年開業の施設は、健康増進を目的にサウナや熱気浴、炭酸浴など約20の部屋を順に巡る。大理石やフレスコ画が美しい、写真のプール“クーポラホール”もその一部。入浴は水着なし、混浴となる日時もある。
日本
和歌山県田辺市にある、湯の峰温泉。開湯は1800年前と古く、天然岩に囲まれた小さな“つぼ湯”は、1日に何度も色を変えるため七色の湯と呼ばれる。熊野への参詣客がここで身を清めたことから“熊野詣の湯垢離場”として世界遺産にも登録され、“世界で唯一入浴できる世界遺産”として人気を集めている。
南極近海
南極海の北側、サウス・シェトランド諸島にある火山島。近年だと1970年にも噴火が起きた活火山で、地熱が高いため雪が溶けて地面が剥き出しになっている。南極クルーズで人気の上陸ポイントとなっており、狭い入り口を通ってカルデラ内に侵入し、ビーチで温泉に浸かったり、ハイキングを楽しんだりすることができる。
日本
日本三大霊場のひとつ、川原毛地獄を抜けた先にある秋田県湯沢市の秘湯。高さ20mの滝そのものが温泉になった珍しい滝の湯だ。上流で湧き出た100度近い源泉が沢水と合流することで適温となるため、入浴できるのは7~9月頃の夏期限定。泉質は目に入ると染みるほどの強酸性のため、肌の弱い方は長湯に注意。
雑誌『Safari』12月号 P131〜136掲載
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