海を渡ってメジャーに目を向ければ、大谷翔平に注目したい……と言いたいところだが、打撃に関しては今年も結果を残すだろう。問題は2度の手術を受けた右肘だが、3度目の靱帯断裂となれば投手としては致命傷となるだけに、ロサンゼルス・ドジャースの監督も慎重な起用にならざるを得ない。投手として投げた場合、今年は多くを期待するのは酷だが、無事シーズンを駆け抜けられるかがポイントとなりそうだ。
私が注目しているのは、大谷よりもむしろ今年からドジャースで同僚となった佐々木朗希である。つまり、私が注目したい4人目というわけだ。
彼は日本で過保護なくらい守られた中での5年間のプロ生活を送った。もっと言えば、高校時代からその下地はできていた。甲子園出場を懸けた県大会決勝戦での登板を回避し、プロ入り後もローテーションはおろか、規定投球回に達したシーズンは一度もなく、経験値が低いままで海を渡ることになった。
興味深いのは、日本の野球ファンだ。高校時代に佐々木が決勝で投げなかったのは、「監督の大英断だ」「彼の将来を考えたら当然のことだ」と賞賛し、ドラフト会議で5球団の抽選の結果、ロッテに選択権が渡った時にも、「いい球団に入れた」「ロッテは大事に育ててくれるに違いない」とこれまた賛辞の声が多かった。
実際、佐々木はプロ3年目の2022年4月10日のZOZOマリンスタジアムでのオリックス戦で28年ぶり、史上16人目となる完全試合を記録。このままスター街道を突き進むかに思われた。
だが、その後は無難にシーズンを過ごして、ロッテを優勝に導くようなこともなく、数々の投手タイトルを獲得することもなく、ポスティングでメジャー移籍することになった。
すると、多くの野球ファンからは「まだ球団に貢献していないのに、恩知らずだな」「勝手過ぎるぞ」「日本一になってからメジャー挑戦しろ」などと非難の声が渦巻いた。この中には、5年前の決勝戦での登板を回避したことや、ドラフトでロッテに指名された際に賞賛していた人もいたはずだ。
「世間の声なんてそんなもの」と言ってしまえばそれまでだが、それは今後、実力で証明するほかはないだろう。
まずは「経験値の低さをどう補っていくのか」「故障なく一年間を過ごすことができるか」だ。メジャーのローテーション入りは大変なことだし、私としては5~6勝でも良いと思っているが……注目である。
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※この記事は『昭和な野球がオモロい!』から一部抜粋して構成しております。