冬こそ映える空の星、地の光【10選】
寒さが厳しさを増し、空気が透き通るこの季節。凍てつく夜だからこそ、光はいっそう眩しく、神聖さを帯びる。厚着して屈ませていた身を起こして空を仰げば、満天の星。花火やイルミネーションなど、街の輝きも心を温める。そんな煌めく宝箱を見つけに、世界を旅してみよう。
煌めく星々に手が届く!?
冬は日本の太平洋側では、最も星空鑑賞に適した季節。空気中の水分量が少ないため、星の光が乱反射することなく地上に届くことが最大の理由。季節風が強まり細かな塵が飛ばされること、日没時間が早いため残照が少なく、観測可能な時間が長いことなども好条件の要因に挙げられる。
条件がいいのはそれだけでない。地球の公転により星空は季節で変わるが、冬は最も多くの1等星を見ることができる。たとえば東京で年間を通じて確認できる1等星は17個といわれるが、冬はそのうち8個もの1等星が輝く。
1月下旬の東京なら、夜9時頃に南の空を見上げるといい。ひと際目立つ赤い星、オリオン座のベテルギウスが見つかるはずだ。その下に一番明るく輝いて見えるのがおおいぬ座のシリウス、その左のこいぬ座のプロキオン、この3つを結ぶ“冬の大三角”を把握することで、ほかの星座も見つけやすくなる。ベテルギウスを中心に周辺の1等星を結んだ“冬のダイヤモンド”を作ると、牡牛座や双子座なども見つけやすい。
ちなみに星がキラキラ輝いて見えるのは、大気層を通過する際、密度の違いによって揺らぎが生じるから。これも温度や湿度が低い冬のほうがより輝きが増すという。何光年という途方もなく離れた場所で光る星たちも、この季節だけは手が届くように感じられるかもしれない。
スペイン
異名は“大西洋のハワイ”。北西アフリカ沖に位置する、カナリア諸島の島。世界初の“星空保護区”に指定され、光害を抑えて暗い夜空の保護・保存に取り組む。雲海の上に各国の共同出資で建てられたロケ・デ・ロス・ムシャーチョス天文台は、世界屈指の天体観測所。
オーストラリア
“ウルル”も有する、オーストラリア中央部。赤い大地が果てしなく広がり、街明かりが届かないため、星が地平線から満天に広がる。デビルズ・マーブル(“悪魔のビー玉”の意)と呼ばれる奇岩群では、写真の“カルル・カルル”のような風雨に侵食された花崗岩が点在。アボリジニーにとって神聖な場所とされる。
日本
静岡県の伊豆半島東海岸、須崎半島の先端に立つ灯台。背後には太平洋が広がるのみなので比較的光害が少なく、また近くに駐車場やトイレも完備されているため、近年人気の星空撮影スポットとして話題に。特に2月頃には、写真のように灯台のすぐ横を天の川が流れる幻想的な一枚を撮影できる。
日本
澄んだ空気と人工の光の少なさで、県全域で星空を楽しめる鳥取県。星空保全条例に基づき光を拡散させない取り組みを行い、“星取県”としてPRする。なかでも大山隠岐国立公園内の“元谷”は、そびえ立つ山肌の奥からあふれるように星空が煌めき、県内はもちろん日本国内でも屈指の星空観察スポットである。
ノルウェー
ノルウェー北部、風光明媚なフィヨルドで知られる街トロムソの南西に浮かぶセンヤ島。急峻な岩山が織りなす絶景を有し、世界中からトレッキング愛好家が集う。北極圏にあるため、夜はオーロラ鑑賞のチャンス。9~3月とシーズンが長く、暖流のメキシコ湾流の影響で寒さがそこまで厳しくないのも魅力。
アメリカ
ハワイ州最高峰、マウナケア山(標高4205m)の山頂に天文台を有するハワイ島。島内で街灯の数を制限しており、山頂だけでなく島全体で見事な星空を堪能できる。また島の南東部のキラウエア火山は現在でも活発な活動を続けており、運がよければ写真のような溶岩と星空の共演も叶う。
日本
奈良県若草山で、毎年1月の第4土曜日に開催される山焼き行事。かつて山の古墳から現れる霊を追い払うために各々が火をつけていたが、燃え広がる危険が尽きないため、江戸時代末期には寺や奉行所が行事として管理するようになった。現在は花火も打ち上がり、冬の夜空をあざやかに照らしている。
インド
カルナタカ州の第2の街マイソール。マハラジャ(王家)の支配で栄えたインド有数の古都で、多くの遺跡が残る。宮殿はかつて火災で焼失したが、1912年に再建。現在は王朝の公邸で、一部が博物館として公開されている。日曜の夜には周辺の寺院や門なども一斉となって、豪華絢爛なライトアップが行われる。
スペイン
フランス国境に近いナバーラ州南東の自然公園。ヨーロッパ最大の砂漠地帯で公園内に3つの自然保護区を擁し、希少な猛禽類や哺乳類などの生息地となっている。写真の奇岩“カスティル・デ・ティエラ”越しに星空を眺めると、まるで別の惑星にいるかのようだ。
ハンガリー
ハンガリーの首都ブダペストに架かる、全長約380mの橋。橋とその奥に見えるブダ城(王宮)のライトアップはドナウ川を明るく照らし、ヨーロッパでも屈指の夜景だ。冬は氷点下近くまで冷え込むが、そこは温泉大国ハンガリー。市内にいくつも浴場があるので、夜景鑑賞で冷えたカラダを温めてみてはいかが?
雑誌『Safari』3月号 P113〜120掲載
“春夏秋冬 季節のトラベラー!”の記事をもっと読みたい人はコチラ!
●雑誌・WEB『Safari』の公式TikTokは
こちらからアクセスしてみて!