【デス・バレー国立公園】地球上、最も暑く乾いた大地。どんな天才も描けない前衛風景の連続だ!
塩が吹き出す白い大地、体験したことのない熱風、極度の乾燥。これらもまた自然の驚異だ。HOTTEST、DRIEST、LOWESTを誇るデス・バレー国立公園で、地球のすごさを体感するのもいい。しかし、死の谷にも春先にはかわいい花が咲く。この荒地でも命の営みが繰り返されているのだ。
- SERIES:
- アメリカ ナショナルパークへの旅! vol.8
カリフォルニア州
デス・バレー国立公園
この世の景色と思えないザブリスキー・ポイント
信じられないほど明るい塩の大地、バッドウォーター
1849年、カリフォルニアのゴールドラッシュで一攫千金を目論んだグループが灼熱の荒地に迷い込んでしまった。数日間、彷徨った末、命からがら抜け出した男が谷を見下ろしていった。
「あばよ、死の谷……」
デス・バレーの暑さ、乾燥は半端ではない。地球上の最高気温56.7度を記録したほか、2001年には37.8度(華氏100度)を超える日が154日続いた。夏に殺人的な暑さを体感するのも醍醐味だ。
この異常な気象を生んでいるのが標高の落差だ。デス・バレーのバッドウォーターは、海抜マイナス85.9m。つまり海面よりずっと低い。これは北米の最も低い地点だ。
そして、そのすぐ西には4000m級のシエラネバダ山脈がそびえる。太平洋から吹き込む湿った風が山の西に雨を降らせ、乾いた空気が東の斜面を一気に駆け降りる。このときに空気は熱波となり土地は荒廃する。
その凄まじさを目の当たりにできるのがダンテズ・ビューだ。なんとバッドウォーターと北米最高峰のホイットニー山(4421m)を同時に視界に入れられるのだ。デス・バレー国立公園で一番の絶景ポイントといえる。
約14㎞のアーティスト・ドライブには必見の景色が並ぶ。地中から噴出したミネラルが岩を黄、赤、オレンジ、グリーンに染めるアーティスト・パレットは、その代表だ。
モスキート・フラット砂丘にも立ち寄りたい。特に朝夕の低い光が生み出す陰影は息を呑む美しさ。また、満月の夜は神秘的な情景を作り出す。
デス・バレーのもうひとつの魅力は山岳地帯のハイキングだ。ゴールデン・キャニオン、ワイルドローズ・ピークなどが人気のポイント。これらは気温が下がる11~3月がハイシーズンとなる。
年間の降水量が50㎜しかないデス・バレーだが、わずかな恵みが春に可憐な花を咲かせる。荒々しい山と対照的な景色だ
もつ荒野地帯!
壮大な景色が広がる展望台!
ブラック・マウンテンの頂上にあるダンテズ・ビューからは北米で最も標高が低いバッドウォーター(海抜マイナス85.9m)を眼下に見下ろせる。その落差1.6㎞はグランドキャニオンのエッジからコロラド川に相当する。白く見えるのは、塩を吹いた大地だ。また、左前方には北米最高峰のホイットニー山(4421m)がそびえる。なんとも凄まじい景色だ。
砂漠に残る19世紀末の遺産
ハイキングのポイントとして知られるワイルドローズ・キャニオンに奇妙な形の建造物が10個連なって残っている。1877年にアーガスレンジに作られたふたつの精銀所に燃料源を提供するための炭焼き窯だ。デス・バレーには少ない貴重な歴史的建造物といえる。
UFOに合えるハイウェイ!?
カリフォルニア州マウント・シャスタ、ニューメキシコ州ロズウェルなど、アメリカにはUFOの目撃情報が際立って多い地域がある。デス・バレー国立公園から240㎞ほど北東のネバダ州道375もそのひとつ。交通量が少なく、「最も寂しいハイウェイ」としても知られる。
まさに砂漠のオアシス!? 老舗リゾートホテル!
〈ストーブパイプウェルズ・ビレッジ・ホテル〉は、パーク内にある唯一の宿泊施設。レストラン、バー、グロッサリーのほか、屋外プールもある。国立公園内のリゾートに宿泊して、朝夕の涼しい時間に観光を楽しむ欧米流のスタイルもいい。開拓時代を彷彿とさせるデザインのビレッジを歩いていると、タイムマシンに乗った気持ちになる。是非、立ち寄りたいスポットだ。
●ストーブパイプウェルズ・ビレッジ・ホテル
住所:Death Valley National Park, 51880 Highway 190, CA 92328
TEL:+1-760-786-7090
URL:https://deathvalleyhotels.com
悪魔用のゴルフコース!?
観光の起点、ファーナスクリーク・ビジターセンターから約22㎞南にデビルズ・ゴルフコースと呼ばれる一帯がある。まるで溶岩地帯のようだが、実は尖った形状に浸食された岩塩。「ここでゴルフをするのは悪魔だけ」と公式ガイドブックに紹介されたことから名づけられたという。さらに南に行くと、海よりも低いバッドウォーターに続く。こちらは塩に覆われた、信じられないほど眩しい白い大地だ。また、デビルズ・ゴルフコースの北にはアーティスト・パレット、ザブリスキー・ポイントなどの有名観光スポットが並ぶ。あわせて訪れたい。
世界最高気温認定記念モニュメント!
1913年7月10日に記録された地球上の最高気温、56.7℃(134℉)は、デス・バレー国立公園のプライドだ。その記録を示すモニュメントが、ファーナスクリーク・リゾートに誇らしげに掲げられている。2016年に中東クウェートのミトリーバという町で54.0℃と世界記録に迫る気温が観測されたときは、関係者が肝を冷やしたとか!? なお、デス・バレーでは2020年8月と2021年7月に54.4℃という世界第2位の記録を立て続けに打ち立て、世界一の実力を示した。
TEL:+1-760-786-3200
URL:https://www.nps.gov/deva
開園:年中無休
入場料:自動車1台$30、バイク1台$25、歩行者・自転車$15 ※7日間有効
国立公園指定:1994年10月31日
面積:約1万3649㎢
旅の準備
パーク内の宿泊施設は限られている。キャンプ以外で1泊2日以上の観光なら、近隣のモーテルを予約するのが◎。ビーティ、ローンパインなどは公園から約60㎞の距離。
旅のヒント
パーク内に水や食料、ガソリンを補給できるところは少ない。まず、ファーナスクリーク・ビジターセンターで必要なものを入手。特に水はたっぷりと準備すること。
注意点
夏のデス・バレーは経験したことのない暑さになる。帽子、サングラス、日灼け止め、水は忘れずに。レンタカーでも念のためクーラント、エンジンオイルは準備したい。
ベストシーズン
“デス・バレーらしさ”を体感したいなら夏の時期。クルマから降りた瞬間に襲いかかる熱波はワールドクラス。3~4月には春先の降雨によって高地にいっせいに花が咲く。ハイキングが目的なら11~3月の冬季がベスト。
行き方
公共交通機関はないのでレンタカーでの旅となる。最寄りの大都市はネバダ州ラスベガスで、ファーナスクリーク・ビジターセンターまで約200㎞。
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雑誌『Safari』1月号 P218~221掲載
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text : Shintaro Makino photo by AFLO