【グランドティトン国立公園】霊峰、湖、川、野生動物……、完璧な国立公園の風景が広がる!
尖ったピークが天を突くティトン山脈。ジャクソンホールという美しい谷ではムースなどの大型野生動物が目撃される。そして、水晶のように澄んだ湖と川。アメリカの自然の魅力がすべて凝縮された完璧な国立公園だ。
- SERIES:
- アメリカ ナショナルパークへの旅! vol.17
ワイオミング州
グランドティトン国立公園
標高2000mの雪景色の平原に、バイソンの群れ。背景にはティトン山脈の荒々しいピークが連なる。10月末になると雪が積もることが多く、5月や9月でも雪が見られることがある
同じロッキー山脈にあり、隣接する関係でありながら、グランドティトンには荒々しいイエローストーンとは全く異なる景色が広がる。威風堂々としたティトン山脈、その足元に連なるスーパークリアな湖、緑豊かな谷をゆったりと流れる川、そして西部開拓時代そのままの景色。誰もが思い描くアメリカ国立公園の原風景がここにある。
観光の起点はパーク南のムース・エントランスステーション。このエリアは、その名のとおり、シカの仲間で最大のムースとの遭遇率が高いことで知られる。雄大なムースを目撃したら、その姿はきっと目に焼きついて離れないはずだ。
期待を胸にさっそくメインロードを北上してみよう。左右に広がる見晴らしのいい谷は、ジャクソンホールと呼ばれる。経済ニュースに詳しい人なら、有名な経済シンポジウムが開かれる場所として聞き覚えがあるだろう。
やがて視界に3つの尖ったピークを持つティトン山脈が現れる。平地からの高低差は2000m。ダイナミックにそびえ立つ山脈は、息を呑む美しさだ。そして、このあたりからジェニーレイク周辺が、ムースが集まるポイント。ベストシーズンは9月から10月。早朝の時間帯がいい。なお、ティトン山脈にはムースのほかにプロングホーン、エルク、ビーバー、白鳥、ツル、グースなど多くの野生動物が暮らしている。たくさんの出会いが期待できるというわけだ。
さらに北上するとジャクソンレイクが左手に見えてくる。湖畔のシグナルマウンテンにハンドルを切ると、ビューポイントとして名高い高台に出る。湖越しに見るティトンは、まさに絶景だ。
シグナルマウンテンのマリーナからは、ボートで島を巡るツアーやカヤックのサービスがある。水上から眺める景色もまた素晴らしい。
トランスフィギュレーション礼拝堂の大きな窓の向こうには、ティトン山脈。9月後半の短い秋には、紅葉も楽しめる
名作『シェーン』の風景!
ムースに遭遇できるポイント
ムースのオスは500㎏に達するシカの仲間では最大の動物。平たく大きなツノが特徴で、和名はヘラジカ。グランドティトンに行くなら是非、雄大な姿を目撃したい。チャンスは繁殖期を迎え、平地に降りてくる9月の早朝。ジェニーレイク近くのムースポンド、モラン・エントランスステーション近くのオックスボウ・ベンドが好ポイントとして知られる。ビジターセンターで状況を聞くといいだろう。双眼鏡をお忘れなく。
雰囲気たっぷり、湖畔のコテージ
ムース・エントランスステーションからティトン・パークロードを北上すると、ジェニーレイクに着く。ティトン山脈の堂々とした稜線を正面に眺望できる、まさにパークの中心だ。ここに建つのが〈ジェニーレイク・ロッジ〉。隣り合う37のキャビンは、雰囲気たっぷりの山小屋風のデザイン。西に行けばティトン登山のトレイルヘッド、北に行けばジャクソンレイクのアクティビティと便利な立地。オープンは6月上旬~10月上旬。
●ジェニーレイク・ロッジ
住所:Moose N. Jenny Lake Jct., WY83012
TEL:+1-307-733-4647
URL:https://www.gtlc.com/lodges/jenny-lake-lodge
西部開拓時代を彷彿させる歴史地区!
この風景を見て、「あ、これは!」と思い当たった人はかなりの映画通だろう。グランドティトン国立公園は、1953年公開の西部劇『シェーン』のロケ地としても有名。かつての面影を伝える木造の小屋は、今も写真撮影の人気スポット。1890年代にモルモン教徒の入植者が建てたもので、自力で灌漑を行い農業をはじめたとされている。パーク内のメインロードからは外れるが、ジャクソンホール空港からのアクセスはいい。
グランドティトン登山!
パーク内には320㎞を超えるトレイルが整備されているが、その頂点といえるのがティトン登山だ。山脈を形成するのはグランドティトン、ミドルティトン、サウスティトンの3つのピーク。なかでも4197mを誇るグランドティトンは、多くのクライマーの登山家魂をかき立ててきた。今では比較的優しいルートも開拓され、そこまで本格的な装備がなくても登頂できるようになっている。山頂から連なるロッキー山脈を見下ろしてみたい。
カヤックでキャンプ場へ
澄み切った雪解け水をたたえるジャクソンレイクでは、ウォーターアクティビティも盛んだ。静かな入江や島を巡る観光ボートもいいが、おすすめは喧騒と無縁の風景に身を任せるオーバーナイト・キャンプ。湖北にあるリザードクリーク・キャンプグラウンドからは、陸路では行けないカヤック用のトレイルがある。ロッキーの最深部へ静かに漕ぎ入れば、今まで知らなかった世界が広がり、特別な体験となるはずだ。
電話:+1-307-739-3399
URL:https://www.nps.gov/grte/index.htm
開園:年中無休
入場料:自動車$35、オートバイ$30、自転車・徒歩$20 ※7日間有効
国立公園指定:1929年2月26日
面積:約1254㎢
旅の準備
ビューポイントは比較的アクセスがいいが、グランドティトンへの登山をはじめ、いくつかのトレイルはきちんとした装備が必要。計画に応じて準備しよう。
旅のヒント
野生動物との遭遇率が高い。双眼鏡は必携だ。また、すぐ北にはイエローストーン国立公園がある。余裕のある計画で、両方を巡るコースがおすすめ。
注意点
メインのティトン・パークロードは通年開いているが、そのほかの道路は11月から4月は閉鎖される。事前の情報を確認していこう。
ベストシーズン
7、8月は暖かく観光のピークとなり、宿泊予約も取りづらくなる。人出が落ち着く9、10月がおすすめ。ムースをはじめ、大型動物を見られるチャンスも高い。
行き方
ジャクソンホール空港はパークの中にある。ある意味、とてもアクセスがいい国立公園といえる。最寄りの街、ジャクソンにはモーテルも多くツアーも出ている。
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雑誌『Safari』11月号 P262~265掲載
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text : Shintaro Makino photo by AFLO