【ザイオン国立公園】川の中のトレイルを行く、天の都。赤土のグランドサークルでも超個性的な存在!
アメリカ南西部に広がる通称、グランドサークルと呼ばれる赤土の国立公園群。両側に切り立つ悠久の崖を見上げながら川の中を歩くユニークなトレイルがある。“天の都”の名を持つ奇跡の光景だ。
- SERIES:
- アメリカ ナショナルパークへの旅! vol.16
ユタ州
ザイオン国立公園
谷底からスリリングな足場を乗り越え標高差450mを登りきると、素晴らしい景色がハイカーを待っている。エンジェルス・ランディングはザイオン国立公園のハイライトのひとつだ
アメリカ国立公園の人気の楽しみ方のひとつにグランドサークルがある。グランドキャニオンを中心にする赤土の自然遺産をぐるりとまわる旅だ。
グランドサークルというとアリゾナ州を思い浮かべる人が多いが、実はユタ州には5つの国立公園があり、アリゾナより多い。ザイオンはその中心だ。
観光の起点はパーク南部のザイオンキャニオン・ビジターセンター。ここから先はマイカーの乗り入れが禁止されている。まずはシャトルバスに乗って約10㎞先のテンプル・オブ・シナワヴァに向かうが、この景色がすごい。車窓の両側に切り立つ600~900mの崖は迫力満点。グランドキャニオンはリムから谷底を見下ろすが、その逆と思えばいい。
道中にはエメラルドプール、エンジェルス・ランディングなどのハイキングポイントがある。時間に余裕があれば、ショートハイクを楽しむといい。砂漠に住む陸ガメやカエルなどの小動物に会えるかもしれない。
ハイライトは、ナローズと呼ばれる、テンプル・オブ・シナワヴァからのトレイルだ。その名のとおりそそり立つ崖に囲まれた狭い道を行くが、なんと全行程の60%はヴァージン川の中を歩く。赤と白の岩肌の間から見る真っ青な空、そして足元のクリスタルクリアな川。こんな光景はほかにない。
なお、ザイオンとは、“天の都”“神の国”という意味。その理由を実感できるはずだ。
ビジターセンターからイーストエントランス、グランドキャニオン方面に向かう州道9号線は有名なドライブコースだ。ビューポイントからは一転、谷の底を見下ろす絶景が楽しめる。また、1930年に完成したトンネルもある。テーブルマウンテンの中を通り抜けるドライブ体験も唯一無二だ。
世の中にこんな美しい景色がほかにあるだろうか。渓谷に流れる美しい川に心が癒される
美しく繊細な景色!
園内観光はシャトルバスが便利!
アメリカでもアウトドアブームが過熱し、国立公園を訪れる人が急増している。人気の国立公園では観光客による自然環境へのインパクトが大きな問題になっている。ザイオン国立公園ではビジターセンターから延びるザイオンキャニオン・シーニック・ハイウェイへのマイカーの乗り入れが禁止されている。5月後半から11月後半まで運行される便利な無料シャトルバスを利用して観光を楽しもう。バスは5~10分間隔で運行されている。
絶景好きに人気のエンジェルス・ランディング!
エンジェルス・ランディングは約9㎞のスリル満点のハイキングコース。最も幅が狭いところは1.5mの道幅しかない。両側は急な崖。いわゆるクサリ場もある。高所恐怖症の人にはおすすめできない。しかし、約450mの標高差を登りきった見返りは大きい。息を呑むようなザイオン渓谷の絶景を見わたすことができる。トレイルヘッドまではシャトルバスが連れていってくれる。1日のパーミットが必要なので、南エントランス近くのウイルダネスセンターで取得しよう。
冬は雪化粧で違った顔に!
パーク内の最高峰は北部のコロブ・キャニオンにある2618mのホースランチ・マウンテン。そのほかにも2000mを超える山がいくつかあり、冬は雪に覆われる。実は、赤い岩と雪のコントラストが一番美しい、という人もいる。冬季間もパークはオープンしているがバスはクリスマスシーズンなど休日のみとなる。雪の状況によってトレイルがクローズになることもあるので注意が必要。驚くことにナローズも入ることができる。夜は凍えるような寒さ。しっかりした装備と無理のない計画が不可欠だ。12月から2月は特に人が少ない。素晴らしい景色の1人占めを狙うのもいいかも?
雄大な角を持つデザートビッグホーン
砂漠というと不毛の大地で動植物は少ない、と思うかもしれない。しかし、砂漠にもそれぞれに興味深い生命の営みがある。特にザイオンは何本もの川の恵みがあり、ビッグホーンシープやマウンテンライオンなどの大型動物も暮らしている。珍しいところでは小型の陸ガメの生息が確認されている。花や草を食べ、1年も水分を取らずに生きることができる。日陰に潜り込む性質があるので、クルマを発進するときは下を確認するように注意してほしい。
川の中を歩く人気のトレイル!
ザイオンのハイライト、ナローズにはふたつの楽しみ方がある。ひとつは、シャトルバスの終点、テンプル・オブ・シナワヴァから歩き出す方法。1~2時間歩いて風景を堪能したら、トレイルヘッドに引き返す。もうひとつは全行程の踏破。そのためには、朝6時15分に出るバスでシャンベリアン・ランチまで移動。テンプル・オブ・シナワヴァを目指して一方通行のコースを歩く。約12時間かかるため、途中でテント泊をするのが一般的だ。また、パーミットの取得も必要になる。
電話:+1-435-772-3256
URL:https://www.nps.gov/zion
開園:年中無休
入場料:自動車$35、オートバイ$30、自転車・徒歩$20 ※7日間有効
国立公園指定:1919年11月19日
面積:約593㎢
旅の準備
ザイオン観光の目玉であるナローズは川の中を歩く。安全に歩くためのウォーターシューズ、カメラや着替え、食料品を濡らさないためのウォータープルーフも必要。
旅のヒント
グランドサークルと呼ばれ、グランドキャニオンはじめ国立公園が集中する地域の中心。しっかりと計画を立ててアメリカの大自然を堪能したい。
注意点
夏は雨が多く、ヴァージン川ではいわゆる鉄砲水の危険がある。過去に大きな事故も起きているので、公式ホームページで状況を確認しよう。
ベストシーズン
3月から10月と長い期間、観光を楽しむことができる。夏の日中は気温が上がるため、春と秋が快適だ。夏は雨があるが、滝の水量が増えて迫力がある。
行き方
最寄りの大都市はラスベガス。国立公園のサウス・エントランスまで約240㎞、3時間のドライブ。グランドキャニオンからもほぼ同じ距離。
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雑誌『Safari』10月号 P220~223掲載
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text : Shintaro Makino photo by AFLO