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CULTURE カルチャー

2026.02.28

この作品、見逃していない?
ネットフリックス『パーフェクト・ネイバー 正当防衛法はどこへ向かうのか?』は、緊迫感あふれる展開から目が離せない!

 

 


3月15日に開催される第98回アカデミー賞授賞式。その長編ドキュメンタリー部門のオスカー候補入りで注目を集めているのが、ネットフリックス配信中の『パーフェクト・ネイバー 正当防衛法はどこへ向かうのか?』だ。

タイトルが示すとおり、核心にはアメリカの多くの州で施行されている同法律の存在が横たわる。しかし、よくあるドキュメンタリーのように専門家が登場してコメントしたり、たびたびテロップで状況説明が施されるこようなことはない。

代わりに提示されるのは、保安官のボディカメラの記録映像。これらが我々の目となり耳となって、フロリダ州のとある住宅地で起こった近隣トラブルをむせ返るほどの生々しさで描き出すのだ。

 
  

 


隣人トラブルが引き起こした悲劇
子育て中の有色人種が多く暮らすこのエリアでは、道路に面する各戸の芝生に子供が入り込んで遊んでも「お互い様だから」「子供は元気がいちばん」と許容するのが普通だった。しかし一人の白人女性が引っ越してきたことで状況は一変する。

彼女は子供の侵入を禁止し、遊ぶ声がうるさいとクレームをつけ、子供の親と衝突するたびに当局への通報を繰り返した。その行動は徐々にエスカレートし、子供に罵詈雑言を浴びせかけたり、時に拳銃をチラつかせることもあったとか。そしてある日、一発の銃声が響き渡り……。

 

  

 


どこの世界であろうと、社会の一員である以上、コミュニティや隣人と良好な関係性を築くことは必須。ただし、アメリカの状況を複雑化しているのは『正当防衛法』の存在だ。要は自分の身に危害を加えられそうな場合、強力な武器による攻撃が可能というわけである。

ここには銃の問題も深く絡んでいる。もしも近隣トラブルが深刻化し、誰かが一方的に切迫した身の危険を感じた場合、そこに銃があったなら、行き着く最悪の事態は誰にでも想像がつく。本作がアメリカで反響を巻き起こしているのは、これがあまりに身近な問題で、多くの人が我が身も例外ではないと感じるからだろう。
 

  

 


恐ろしい臨場感をもたらすボディカメラ映像
本作のガンドビール監督にとって、この事件の被害者は自らの親族の友人にあたるという。

平和な住宅地でなぜこのような悲劇が起こったのか。それを検証すべく情報公開請求によって行政側から提供された資料には、保安官のボディカメラ映像も含まれていた。USBに入った膨大なデータを精査し、時系列に並べてわかりやすい形で整理するとこそフィルムメーカーである自分の使命と感じた監督は、コミュニティや犠牲者家族の悲しみを和らげる意味を込め、これを一本のドキュメンタリーとして製作しようと決めた。

監督がインタビューで語っている内容によると、普段よくある事例だと、こういった警官や保安官のボディカメラが捉えた映像証拠によって有色人種が起訴に追いやられるというケースが非常に多いという。しかし今回は、行政から提供されたこれらの映像を最大限活用することで、誰しもの心と知性に訴えかける一作に仕上がった。その逆転の発想にも注目したいところ。

そして、日本人があまりよく知らない事実として浮き彫りになるのは、正当防衛法がもたらす極めて皮肉な側面だ。アメリカではこの法律の制定によって、逆に殺人発生率が8〜11パーセント増加。また、白人の場合、黒人が相手だと正当防衛が認められる確率が高くなるという人種的格差も存在するとか(本編内容より)。まさに複雑な問題や軋轢が吹き出している状況である。

アメリカの生々しい”現在”を感じることができる本作。観賞後の余韻は非常に苦しくて重い。でも観る価値は大いにある。アカデミー賞授賞式を前に、ぜひチェックしてみてはいかがだろうか。

『パーフェクト・ネイバー 正当防衛法はどこへ向かうのか?』
製作・監督/ジータ・ガンドビール 配信/ネットフリックス
2025年/アメリカ/視聴時間98分


参考記事:
https://www.indiewire.com/awards/consider-this/the-perfect-neighbor-documentary-oscar-interview-1235156101/
https://www.theguardian.com/film/2025/oct/06/perfect-neighbor-documentary-interview-ajike-owens-susan-lorincz

 
文=牛津厚信 text:Atsunobu Ushizu
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