【サワロ国立公園】地球上で最も奇怪な植物サワロが生きる砂漠の国立公園!
アリゾナ南部に入ったある探検家は、はじめてサワロを見たとき「なんて不思議な植物なんだ。この世のものと思えない」と唸ったという。ソノラ砂漠にのみ生息する、アメリカ西部を象徴するサボテンに会いに行く。
- SERIES:
- アメリカ ナショナルパークへの旅! vol.6
アリゾナ州
サワロ国立公園
サワロの成長は遅い。最初の10年で20㎝、2mに成長するのに約50年かかる。次の25年で腕を伸ばし、この姿になる。寿命は約200年
アメリカ西部の砂漠を象徴する風景。誰もが幹から太い腕を伸ばす巨大なサボテンを思い描くだろう。西部劇でもお馴染みのサワロ・サボテンだ。
あの大きなサボテンを一度、自分の目で見てみたい、と思う人も多いだろう。しかし、サワロに会うのは容易ではない。いくらカリフォルニアの砂漠を走りまわってもサワロを見ることはできない。
その理由は明快だ。北アメリカには4つの砂漠があり、北西から南東にかけてグレート・ベースン、モハべ、ソノラ、チワワと並ぶ。サワロが生息するのは、このうちのソノラ砂漠だけだ。
ソノラ砂漠はアリゾナ州南部からメキシコに広がる。その中心にあるのが、その名もズバリ、サワロ国立公園だ。サワロ国立公園は、ツーソンの街を挟んで東西に分かれて広がる。西のツーソン・マウンテン地区は標高が低く、暑く、より乾燥している。
一方、東のリンコン・マウンテン地区は高地で、涼しく、雨も西地区に比べれば多い。最も高いリンコン山のピークは2500mもあり、寒冷地に多い松やモミの木も見られる。今回の主役、サワロが生息するのは、より乾燥して暑い西地区だ。
サワロはいうまでもなく世界最大のサボテン。大きい個体は高さ15m、重さ10tに達する。対峙して、まず驚くのは分厚い樹皮だ。リブ状の堅牢な組織がしっかりと乾燥から内部を守っている。そして、貴重な雨が降るとリブが大きく膨らんで一気に雨水を吸収する。吸い上げる水は800リットルにも及ぶという。
この水分と日陰を有効に利用しているのが、砂漠に住む生き物たち。彼らはサワロの硬い樹皮に穴を開け、その中をすみかにする。小さな虫からトカゲ、フクロウまで、一緒に生きる仲間は多い。巨大なサボテンは厳しい砂漠地帯でエコシステムの中枢を担っているのだ。
サワロが生きるエリアに入ると小さな個体が徐々に現れ、次第に巨大サボテンに囲まれる異次元世界となる。手前の岩には先住民が描いたペトログリフが見える
砂漠に暮らす動物の生態を学ぶ!
多種多様なビッグサボテン!
古代の神秘! “ペトログリフ”
ペトログリフとは岩石や洞窟に刻まれた文字や彫刻のこと。一般的には古代文明の遺跡から発見されるが、文字を持たないネイティブ・アメリカンが残したペトログリフがアリゾナに存在する。これらは比較的新しく、数百年前くらいのものと考えられている。サワロ国立公園内で見られるのは、シグナルヒル・ピクニックエリア。この地で栄えた文化にちなんでホホカム・ペトログリフと呼ばれている。
砂漠に建つビジターセンター!
ツーソン・マウンテン地区への玄関がレッドヒルズ・ビジターセンターだ。景観にマッチした建築もさることながら、背後のデッキから見る景色が素晴らしい。また、砂漠に暮らすネイティブ・アメリカンの文化を伝える“砂漠の声”と題された15分間のビデオも必見。なお、ツーソンからビジターセンターへの途中にあるアリゾナ・ソノラ砂漠博物館は豊富な展示を誇る。是非、立ち寄りたい。
青い空に映える美しい野鳥!
TEL:+1-520-733-5153
URL:https://www.nps.gov/sagu
開園:年中無休
入場料:自動車1台$25、バイク1台$20、歩行者・自転車$15 ※7日間有効
国立公園指定:1994年10月14日
面積:約370㎢
旅の準備
砂漠の気候は季節によって大きく異なるが、たっぷりの水とサングラス、帽子は常に必携。宿はツーソン市内のホテルかモーテルになる。ハイシーズンは予約が必要。
旅のヒント
東のリンコン・マウンテン地区はアクセスが悪く、観光には長距離のハイクが求められる。日程に余裕がなければ、西のツーソン・マウンテン地区に絞るのがいい。
注意点
7~9月は40度を超える猛暑に加えて、サンダーストームが頻発する。砂漠の雷、豪雨は避難する場所もなくとても危険だ。この時期の旅行は避けるのがベスト。
ベストシーズン
おすすめはサワロの花が咲く5~6月。2~4月は春で、丘の麓が花で覆われる。アフターサマーと呼ばれる10~11月は、まだ暑さは残るが観光は可能だ。
行き方
サンフランシスコなどを経由してアリゾナ州ツーソンへ。ツーソン市内からレッドヒルズ・ビジターセンターまではレンタカーでのアクセスとなる。スピードウエイ・ブルバードを経由して約40分。
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雑誌『Safari』11月号 P242~245掲載
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text : Shintaro Makino photo by AFLO