【セコイア&キングスキャニオン国立公園】地球上最大の生物セコイアの神秘とハイシエラの絶景!
樹齢3000年の巨木と、太古の自然が残るハイシエラ山脈が楽しめる国立公園。深い森と荒々しい山岳地帯のトレイルはまさに神秘的だ。
- SERIES:
- アメリカ ナショナルパークへの旅! vol.2
カリフォルニア州
セコイア&キングスキャニオン国立公園
クルマの侵入が許されないハイシエラでは、物資の運搬は馬が担う。ハイカーの目の前に山、湖、谷と手つかずの自然が次々と現れる
この世で一番大きな生き物。それが“シャーマン将軍の木”と呼ばれるセコイアの巨木だ。周囲約30mの幹が、高さ約83mの宙空に豪快に伸びる様子は圧巻。樹齢2100年以上、重さ1385tと推定される。
セコイアは巨大なカラダに反して、繊細な生態を持つ。カリフォルニア州東部に延びるシエラネバダ山脈の西斜面、それも標高1300~2300mの狭いエリアにしか生きることができない。高さだけならセコイアを凌ぐ近縁種のレッドウッドが広く生息するのとは対照的だ。
セコイア&キングスキャニオン国立公園の最大の特徴は、この貴重なセコイアの森が広がっていること。巨木に囲まれた静かなトレイルを歩いていると、悠久の時間に浸ることができる。
トレイルの途中に現れるメドウという自然の牧草地も美しい。太陽光が降り注ぎ草花が咲くメドウは、薄暗い森ときれいなコントラストを作って輝く。
パークの東側は様相が一変する。3000m級の尾根が連なるシエラネバダ山脈が横たわる。そのアイコンがアラスカを除くアメリカの最高峰、4418mのホイットニー山だ。鋭く聳え立つ白い岩のサミットに立つことは夢のまた夢、と考えがちだが、実は逆。なんとワンデイ・ハイクでの登頂が可能だ。短パンにTシャツ姿のハイカーも目立つ。
エントリーはパーク外のホイットニー・ポータルから。約17㎞、高低差約1800mの行程は、脚力にもよるが6~10時間。かなりハードな道のりだが、山頂から深い谷を見下ろす景色は特別だ。
ホイットニー山登頂トレイルは、ハイカー憧れのジョン・ミューア・トレイルの南のスタート地点でもある。ここからヨセミテ国立公園のハッピーアイルまで、シエラネバダを縦断する337㎞の道はめくるめく絶景の連続となる。
地球上最大の生物、シャーマン将軍の木。なにが最大かといえば体積。1486.6㎥と発表されている。あまりの大きさに思わず息を呑む
ヨセミテの谷に住んだ国立公園の父
19世紀後半、アメリカの西部開拓は西海岸に到達した。しかし、人間による国土開拓は自然破壊と同義だった。それに気づいたジョン・ミューアはヨセミテの谷に住んで自然保護を訴え、世界ではじめて国立公園法を成立させた。絶滅の恐れがあったセコイアは彼の活動のシンボルとなった。アメリカ国立公園のマークにはセコイアが描かれている。
アメリカ本土最高峰のホイットニー山
アメリカ合衆国の高い山のトップ10は、すべてアラスカにある。アラスカを除くアメリカ本土の最高峰がホイットニー山だ。ホイットニー山を含むシエラネバダ山脈には3000m級のハイシエラと呼ばれる高山地帯が広がり、ジョン・ミューアが歩いた当時そのままの完璧な自然が残っている。入山は厳しく管理され、パーミットは抽選。7~9月のベストシーズンにハイシエラに入るには幸運が必要だ。
ジャイアントセコイアの一部になれるトンネル!
トレイルの途中にセコイアの根元を潜るトンネルが現れる。セコイアの樹皮は自然発火による山火事に耐えられるように30㎝もの厚さがある。直径6mの樹木の内部は、入るとひんやりとする。トンネルを潜るときには、巨大なセコイアの内部もじっくり観察しよう。また、パーク内には1937年に自然に倒れた樹齢2000年の大木をくりぬいて、クルマが通れるようにした車道のトンネルもある。こちらは幅5m、高さ2.4m。普通車なら楽に通行できる。
ジャイアントセコイアの生態を学べる貴重な場所!
© nps
米粒より小さな種から3000年もの時間をかけて巨木に成長するセコイア。その生態をコンパクトにわかりやすく展示してあるジャイアント フォレスト博物館。マイナスのイメージのある山火事だが、実は発芽にかかせない。雨水を効率よく吸収するために根を浅く広く張るが、そのために自重によって崩落しやすい。また雷に打たれやすい。幹は脆く建築材には向かないため、マッチか牧場の杭にしかならないなど、セコイアの雑学が学べる。森の中にひっそりと佇む、歴史を感じられる建物も味わい深い。
貴重な野生動物の宝庫!
入山人数が管理されるハイシエラは、野生動物にとっては天国。特に小型のシカ、ミュールディアに会える確率は高い。また、クマにも遭遇する。カリフォルニアのグリズリーは絶滅しており、現在、生息するのはブラックベア。愛らしいマーモット、ロングホーンシープも個体数が多い。湖にはニジマスの原種、ゴールデントラウトがいる。
TEL:+1-559-565-3341
URL:www.nps.gov/seki
開園:基本的に、1年中24時間オープン(ただしミネラルキングエリアとシダー・グローブエリアは、春から秋のみオープン)
入場料:大人$10、自動車$30、歩行者・自転車$20(いずれも7日間有効)
国立公園指定:1890年9月25日(セコイア国立公園)、1940年3月4日(キングスキャニオン国立公園)
面積:3500km²
旅の準備
ホイットニー山への登頂やジョン・ミューア・トレイルはパーミット取得が必要。日本語対応OKのアウトドアツアーズUSA(https://outdoortoursusa.com)に。
旅のヒント
ヨセミテ国立公園とセットで訪れるのが◎。両公園の距離はおおよそ160㎞、2時間ほどのドライブとなる。有名ポイントに絞れば1泊2日で回ることも可能。
注意点
セコイアの森には絶好の写真スポットが多くある。ついトレイルから外れたくなるが、それは厳禁。セコイアの若芽をはじめ、繊細な植物に注目。
ベストシーズン
パークの西側は5~10月と比較的、快適な季節が長いが、東側のシエラは7~9月とシーズンが短い。パーミットの申請期限は数カ月前。早めに計画を立てよう。
行き方
ロサンゼルス、サンフランシスコからロッジポール・ビジターセンターまで、いずれもクルマで3~4時間。フレズノ・ヨセミテ空港を利用してレンタカーで回る手も。
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雑誌『Safari』7月号 P186~189掲載
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photo & text : Shintaro Makino photo by AFLO