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2022.05.19


内陸出身だからこそ得られた海への情熱! アンドリュー・マックレディー

LAの注目サーフボードブランドのライダーとして活躍する傍ら、シルクスクリーンアーティストとして引っ張りだこのアンドリュー。環境や時代に合わせ、自分の興味関心に対して素直かつ柔軟に生きるソウルサーファーだ。カリフォルニア出身ながら、海から離れた地域に育ち、サーフィンへの憧れを抱き続けた幼い頃の経験が、現在の情熱に繋がっているようだ。


今月のサーファー
アンドリュー・マックレディー
[ANDREW MACCREADY]

内陸出身だからこそ得られた海への情熱! アンドリュー・マックレディー

海に近づきたい青春時代


今回紹介するアンドリューはセントラルカリフォルニアの郊外育ち。ワイルドな大自然に囲まれた実家は海まで車で1時間と、お世辞にも波乗りに適した立地ではなかった。にもかかわらず、アウトドア好きな両親は子供たちを頻繁にビーチキャンプへ連れて行っていたそう。

「毎年北カリフォルニアの海沿いでキャンプを楽しんでいてね。そのときの思い出が忘れられず、海への憧れが強くなっていったんだと思う」

海で過ごした時間は彼にとってかけがえのない思い出。目を閉じても波に反射する太陽が浮かぶようになり、ビーチへの思いが募るばかりだった。小学1年生のクリスマスにスケートボードを贈られた際は、道路を波の上と想像し、スキルを磨いた。そんなある年、サンタクルーズにある祖父の家に滞在中、念願の初サーフィンを経験することになる。

「ガイドはついていなかったけど、ぎこちないパドルでようやく沖に。何度か挑戦しているうちに偶然にも乗ることができたんだ」

ブレイク後のスープに乗っただけなのに、波の表面をスムースにスライドしたとき、不思議な高揚感を覚えたそう。その高揚感は彼を波乗りの虜に。高校に入るとアンドリューはすぐライフガードのバイトに就き、〈GMC〉のピックアップトラックを購入。ビーチまで1時間の道のりを通った。週末にはさらにサンタクルーズまで足を延ばし本格的にサーフィンを楽しむように。しばらくすると一緒に波を追う仲間も増えていった。気がつけば6時間も休憩なしで海に入っていたこともあったそう。

そんな生活を重ね、スキルを磨いた高校時代だったが、進学した大学は海から4時間もかかる場所にあった。しばらくサーフィンができない環境になった彼は、近くの雪山でスノーボードに専念することに。これも、いつか再開するサーフィンの感覚を忘れないための彼なりの作戦だった。

振り返れば、サーフィンを本格的に開始する前も、水泳をはじめたり、サーフ雑誌を熟読したり、海から離れた場所でできる限りの波乗りの準備をしていた。そんな生活を続けていたからこそ、海に入る喜びは人一倍。いざ海に入るとまさに水を得た魚のように波と一体化していった。

内陸出身だからこそ得られた海への情熱! アンドリュー・マックレディーシルクスクリーンにインクをつけてプリント中。平均的に圧力をかけてしっかりインクをならすのがコツ。足元にも力がかかるから、専用スニーカーも厳選

内陸出身だからこそ得られた海への情熱! アンドリュー・マックレディーインクの温度を微調整。経験がものをいう

シルクスクリーンとビーチライフ


大学を卒業後、アンドリューは地元に戻り、スケートボードに専念する。もちろん、これもいつかサーフィンを再開させるためのプランだった。コンクリートを波に置き換え、想像の中でスライドしていくのは、もはや彼にとっては当たり前のことになっていた。

そんな中、スケボーを一緒に楽しんでいたのが、実の兄。いつしか、2人は自分たちでなにかクリエイティブなことがしたいと思いはじめ、兄弟でスケートブランドを設立することに。そこで販売するためのTシャツを自らプリントすることに決め、はじめてシルクスクリーンの機械を購入。プリントに挑むことに。もとより才能があったのか、アンドリューが機械の扱いに慣れるのにたいして時間はかからなかった。

デザインの魅力にもハマり、グラフィックも積極的に学ぶように。その経験を生かし、シルクスクリーンプリントに特化したビジネスを行おうと自らの会社〈プリントマスター〉を設立。2013年にLAに拠点を移した。そう、アンドリューはここではじめてビーチライフを経験する。

ビジネスを軌道に乗せるために時間もエネルギーも必要だったが、息抜きで行うサーフィンは自分へのご褒美に。いい波に乗れば乗るほど、仕事への活力も湧いたという。人生も仕事も波に乗るアンドリューのもとには、多くのブランドからTシャツ、フーディー、バンダナなどのプリントの依頼が舞い込むように。

メキシコのメスカル(50種以上のアガベからなる蒸留酒)ブランドもスタートした。その噂を聞きつけた波乗り仲間からLAのサーフボードブランド〈VVシェイプス〉のオーナー、マックスを紹介され、ブランドTのプリントも担うように。

さらに嬉しいことに、アンドリューはこのボードブランドのライダーとしても採用されたのだ。レジェンド、スキップ・フライなどからも称賛される注目ブランドのライダーなだけに、アンドリューは海で多くのサーファーから声をかけられる存在に。海での社交が深まるにつれ、シルクスクリーンプリントを依頼するサーファーも増加。さらに口コミ人気も広がっていった。

内陸出身だからこそ得られた海への情熱! アンドリュー・マックレディー自身がライダーを務める〈VVシェイプス〉のデザイン。シンプルなデザインこそ気を遣うそう

内陸出身だからこそ得られた海への情熱! アンドリュー・マックレディーインクをならす瞬間は一番集中。ゴムベラはダメージがないか毎回チェックするのだとか

自分で生き方を工夫する


ダウンタウンにあるアンドリューのプリントカンパニー〈プリントマスター〉のオフィスは、アートディストリクトに近いということもあり、ファッション関係者も多く出入りするヒップなスポットに。プリントの発注がどんどん舞い込み、ビジネスも好調だったさなか、コロナの影響で予期せぬ停滞期に入ってしまう。

そんなタイミングで彼は借りていたアパートを潔く手放し、バンライフを開始。もともと所有していた大型のバンから小まわりのきく〈フォード〉の小型バンに乗り換え、自らの手でDIY。後部座席部分を快適なリビング兼ベッドルーム、そしてミニキッチンに改造した。その様子をシェアするべく、YouTubeチャンネル“”DUDE DOES WORLD”を開設。動画をアップロードしはじめた。

それ以外にも、バンでメキシコへサーフトリップに行った際にその風景を中継したり、自身のシルクスクリーンプリントのコンテンツもシェアしたりするなど精力的に動画を投稿。するとじわじわと反響が出はじめ、今ではバンライフの達人として初心者からアドバイスを求められるほどに成長したという。

時代や自らの状況に合わせて、柔軟に伸び伸びと人生を謳歌しているように見えるアンドリュー。その裏には、かつて海に通えない時代に、スケボーやスノーボードで波乗りのトレーニングをしながら身につけた機転やポジティブさが影響しているに違いない。そんな彼、次は、中古のセールボートを自分で修理して、ボート暮らしにスイッチすることを目論んでいるのだそう。彼の冒険は、まだまだ続きそうだ。

内陸出身だからこそ得られた海への情熱! アンドリュー・マックレディープリントに使用したスクリーン画はすべて保存! サンプルとしてクライアントと相談するときにも重宝

内陸出身だからこそ得られた海への情熱! アンドリュー・マックレディープリント完成! こちらも〈VVシェイプス〉用だ。アーティストが描いた原画どおりか、ダブルチェックも欠かさない

●ホームポイントはココ!
サン・オノフレ[SAN ONOFRE]
内陸出身だからこそ得られた海への情熱! アンドリュー・マックレディーオレンジカウンティとの境、北サンディエゴに位置。リーフブレイクでロングライドが楽しめるので、ロガー(ロングボード愛好家)の聖地とも言われている。ヴィンテージカーで訪れるレジェンドも多く、一年中安定して波が立つ。

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Information

雑誌『Safari』6月号 P210~211掲載

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写真=宮崎良将 文=高橋百々 photo : Yoshimasa Miyazaki(Seven Bros. Pictures) text : Momo Takahashi(Volition & Hope)

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