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2022.04.14


ラグナ育ちの感性が人を想うアートを生む! マシュー・ロス

ラグナビーチでサーフィンを覚え、現在はLAのヒップな街、エコーパークでアートスタジオを構えるマシュー。アーティストとしての独特な個性や感性は、ペインターである母親の影響も大きいそう。今回は有名ギャラリーも注目する、“人間”をテーマにクリエイトする次世代サーフアーティストをご紹介。


今月のサーファー
マシュー・ロス
[MATTHEW ROSS]

ラグナ育ちの感性が人を想うアートを生む! マシュー・ロス

多様な文化が育つ、ラグナビーチで


ヴィンテージ好きのロガー(ロングボード好き)たちが集まるサン・オノフレ。ここに集うサーファーは、クラシックスタイルが好きでこだわりが強い。今回紹介するマシューも、そんなひとり。出身はラグナビーチの、エキスパートサーファーだ。その腕は、幼い頃から毎日のように海に通い、磨かれたものだそう。

「はじめてボードの上に立ったのは、7歳の頃。バジー・カーボックスというハワイのビッグウェーバーからマウイでレクチャーを受けたときだったよ」

波の上をスライドしていく不思議な感覚は、彼を一気にサーフィンの虜に。マウイからラグナに戻ると、毎日の海通いがはじまった。高校に入るとサーフチームに所属し、ラグナのスポットでストーク、という青春時代を送る。放課後は波があれば海にパドルアウトし、仲間同士競うように波を奪い合うのが習慣だったそう。

彼が育ったラグナビーチは、’70年代にムーブメントを起こしたヒッピー思想を今も持ち続ける富裕層が多く、古きと新しきがほどよく混ざるビーチタウン。そのバランスはサーフィンシーンにも反映されていて、ローカルシェイパーであるハップ・ジェイコブスのようなレジェンドを輩出した一方、スポンジボードをお洒落かつ斬新に格上げした〈キャッチサーフ〉という革新的な存在まで、幅広いカルチャーを生んでいる。

そんな、多様なサーフスタイルが育つ街でめきめきと腕を上げていったマシュー。実は、過去に〈リップカール〉のコンテストに出場し5位にランクインしたことも。しかし、結局それが最初で最後のコンテストとなったのだそう。多くのアーティストサーファーがそうであるように、マシュー自身もまた、競い合うことに全く興味がなかったのだ。それ以降は、トリップに出かけたり、リラックスして入れるスポットでファンサーフを楽しむスタイルに。

高校卒業後は、カナダのバンクーバーにある大学に進学したために、サーフィンとは一時期縁遠くなってしまう。

「ホリデーでラグナに戻ってきたときは海に入っていたんだけど、そのときは感覚を取り戻すのに大変だったかな」

ラグナ育ちの感性が人を想うアートを生む! マシュー・ロス暴力に対するメッセージがこめられた、彼の代表的な作品のひとつ。座席部分はベビーカーのシート、脚はベースボールバットでできている

ラグナ育ちの感性が人を想うアートを生む! マシュー・ロスミッドセンチュリーな空間は人生に対して、見る人に対して哲学的な投げかけをする

サーフィンで気づいたアートの道


今ではアーティストとして活躍するマシューだが、バンクーバーの大学で学んでいたのは経営学。けれど、すでに心の中には創作意欲が芽生えていた。そもそも彼の母はペインター。さらに育ったラグナビーチにはアーティストが大勢いた。その感覚を生かすべく、NYに拠点を移し、ホテル・店舗の内装やショーウィンドウのデコレーションを行う会社に就職。

「アートにも携われるし、ビジネスも学ぶことができたよ。さらに溶接やペイントなどの技術的なものから仕事への姿勢や段取りの大切さまでを、経験しながら学べたんだ」

5年間も生活していたNYでは、いかに効率よく生きるかが問われ、そんな都会暮らしは彼の考え方にも影響を与えた。

「世の中の見方が変わったことに自分でもびっくりしたよ。大都会にいるからこそ、より人間らしいテーマが気になりだしたんだ」

それは社会のちょっとした隙間から見えるほっとする光景や瞬間のこと。彼の敏感なセンサーは、いつしかこういった事象を拾い上げ、それらをテーマにアート制作を本格的にはじめた。NYでの華やかな仕事や生活にも慣れ、本当に自分がやりたいことを模索していた時期でもあった。そんな中、西海岸に戻りラグナの海で久々にサーフィンをすると、明確にビジョンが見えてきたという。

「海に入ると本能が研ぎ澄まされて、いろんなインスピレーションがキャッチしやすくなるんだ」

その“気づき”にしたがって、マシューはカリフォルニアに戻り名門、カリフォルニア芸術大学に入学。絵画やスカルプチュアなどアートの基礎だけでなく、パフォーマンスアートなども学んでいる。また、カリフォルニアに戻ったことで海に通う機会が増え、自然から受ける影響も大きくなった。作品や色使いにも変化が生まれ、’80年代のカラーパレット、サンセット、コーストラインはいまや彼のアートに外せない要素だ。本格的にアートの道を歩みはじめた彼は、現在LAのエコーパークにスタジオを構えて活動している。いずれはここをギャラリーにするのが夢なのだそう。

ラグナ育ちの感性が人を想うアートを生む! マシュー・ロス道具はなるべく整理しているが、1日の終わりには散らかり気味に。ということで朝の片づけが日課

ラグナ育ちの感性が人を想うアートを生む! マシュー・ロス美術書から哲学書まで幅広く読む。これは特におすすめの4冊!

LAで見えたピースな目標


LAの中でもファッションや音楽業界のヒップな人種が集まるのがエコーパーク。ここにスタジオを構えるマシューはアートカレッジに通う美大生ながらにして、すでに多くのクライアントを抱える新進気鋭のアーティストでもある。

そんな彼の1日のはじまりは、ほかのサーファー同様に早い。朝、波があれば近場のトパンガやマリブなどで入り、波がなければジョギングを小一時間ほど行う。自作のスムージーを飲み干したら、スタジオにある制作中のものを仕上げる。昼前からオンラインクラスを受け、午後からは課題などをこなし学業に励む。早めの夕食を軽く済ませると、スタジオで再び制作物に取り掛かるのだそう。個展や課題が迫っているときは、深夜まで行うことも。けれど、休みの日はサン・オノフレで終日サーフィンに明け暮れることもしばしばだという。都会に暮らす彼だからこそ、オンとオフの切り替えを楽しんでいるのかもしれない。最近は卒業制作とクライアントから直接発注を受けたものを並行して制作中。忙しい日々を送っているが、今後のプロジェクトもしっかりと見据えていた。

「このエリアに一軒家を購入しようと思っているんだ。そこをオーガナイズしてアーティストやサーファーが気軽に立ち寄れるコミュニティを作ろうかと計画していてね。まだアイディア段階だから想像がつかない部分もあるけど、お互いにサポートし合える信頼関係を築けるような場所にしていきたいんだ」

多忙なNYから西海岸に戻り、心に従いながら暮らすマシュー。そんな彼だからこそのピースなビジョンは、実現するのが楽しみだ。

ラグナ育ちの感性が人を想うアートを生む! マシュー・ロスラグナのローカルサーフショップ〈タリアサーフショップ〉のオリジナルウェットスーツや、ブーツなどのサーフギア。普段は車に積んである

ラグナ育ちの感性が人を想うアートを生む! マシュー・ロス’80年代パンクに影響を受けたというマシュー。髪型や服装もその影響。とてもお洒落!

●ホームポイントはココ!
タリアストリート[THALIA STREET]
ラグナ育ちの感性が人を想うアートを生む! マシュー・ロス“ロングボードが気持ちよく乗れる”と、このエリアでは知られているスポット。お洒落なオルタナ系サーフショップ〈タリアサーフショップ〉があることでも有名。ビーチブレイクだがロングからミドルレングスまで楽しめる。

Information

雑誌『Safari』5月号 P234~235掲載

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写真=ジェームス・クロスニアック 文=高橋百々 photo : James Chrosniak text : Momo Takahashi(Volition & Hope)
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