〈ビストロ フェーヴ〉の“熟成牛のロースト”
〈焼鳥今井〉で、新しい世代の焼き鳥の楽しさを広げ、〈とんかつ七井戸〉で、とんかつ界にも風穴を開ける。自他ともに認める“旨いもの好きな料理人”の筆頭である今井充史シェフが、今、最も注目する一軒とは⁉
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- 注目シェフが教える感動の「名店メニュー」 vol.23
熟成牛のサーロイン(3800円)レストラン卸専門の有名精肉店〈東京宝山〉から仕入れる熟成肉を使用。しっかり休ませながら段階的に火を入れ、旨みを閉じこめる。写真は、熊本県の井信行さんのあか牛のサーロイン(約150g)。赤ワインのソースと相性抜群
〈焼鳥今井〉今井充史シェフ正当派の焼き鳥に加えワイン、高級食材も
高級フランス料理にもひけを取らないフランス産の鴨や鳩を扱うなど、焼き鳥界を革新してきた今井シェフ。要の串は、素材のよさと職人仕事が光る確かな味。さらに王道からナチュラルまで、選び抜かれたワインも充実。2018年、店の隣に〈とんかつ七井戸〉も開業。
住所:東京都渋谷区神宮前3-42-11 ローザビアンカ1F 営業時間:12:00~13:30L.O、17:30~21:00L.O 定休日:土・日曜、月曜の昼 TEL:03-6447-1710
■今井シェフ
確かな技術と素材選びで作る洋食の進化版
若い頃と比べると頻度は減ったけれど、今も、ここぞと思った店があれば必ず足を運ぶという今井シェフ。
ずっと行きたいと思っていた〈ビストロ フェーヴ〉。実は馬場シェフが〈焼鳥今井〉の古い常連客で、一度はその料理を食べてみたかったのだという。が、「なにもかもが美味しくて、感動した」と、感想を語る様子はかなり満足気だ。
「熟成牛のサーロインが特に素晴らしい。繊細な火入れで肉汁をしっかり閉じこめ、切り方も独特。脂がなく、食べ応えがあって噛むほどに旨みが増す」
それぞれ適切に火を通した季節の野菜に、香り高い赤ワインのソースと、つけ合わせや仕立てはクラシック。
「洋食的な美味しさを洗練させ、難しいこと抜きに楽しめるビストロ料理。技術の基礎がしっかりとされていて、かつ食材は今の目で選び抜かれている。マダムのきりっとした接客と、彼女が作るデザートの美味しさも抜群です」
■馬場シェフ
素材を見極め無駄なく使い味を引き出す
絶大な信頼を置く精肉卸〈東京宝山〉。扱う牛肉はレストラン業界でも引っ張りだこで、馬場シェフが話す口ぶりから、その肉を扱えることが嬉しくて仕方がない様子が伝わってくる。
「枝肉の状態で水分を飛ばし、旨みを凝縮させる“枯らし”の技術が素晴らしい。素材自体の保水性が高く、きちんと火を入れれば、肉汁がほとんど出ない」
火入れに関しては、「実は今井シェフから学んだところも多くある」そう。
「今井さんの焼く肉は、フレンチに通じるところがある。炭火とオーブンで熱源は違っても、素材にアプローチする視点や手法が。つい肉の話ばかりしています」
一頭買いの牛を解体するところから、一皿の料理に仕上げるまで。大量の肉を毎日扱うことで体で覚えた職人仕事に、新しい食材や料理人から得た刺激をフィードバックさせ、王道だが“今を感じさせる”一皿に。派手さはなくとも食通に支持される味の所以はここに。
Check1 休ませながら火を入れる常温に戻し、塩をふっておいてから焼く。低温のコンベクションオーブンで約20分焼いてから、15分間休ませ、次はやや高温で……と、休ませながら段階的に火を入れていく
Check2 噛み応えのある切り方サーロインをスライスするのではなく、繊維を断つ方向でブロック状に切り出す。余分な脂はなく、緻密な肉質を存分に味わえる独自のカット。盛り付け時は深紅の断面を見せて
bistro fève [ビストロ フェーヴ]
名店での修業経験を経ずとも、有名洋食チェーンの厨房やセントラルキッチンで、フォンドヴォーの作り方から一頭買いした牛の解体、調理まで、がっつり学んできた馬場将吾シェフ。素材選びに火入れ、切り方など、細部までこだわって味を完成させる肉料理を筆頭に、王道のビストロ料理が楽しめる。長野県小諸市の農家直送の野菜、果物を使った季節感あふれるメニューも、もうひとつの看板。飲み頃を揃えるナチュラルワイン、妻の望パティシエールが作る伝統的なデザートと、小さな店にユニークな魅力が詰まっている。カウンター、テーブルで計18席。オープンは2013年
デザートも絶品。看板メニューは、ファーブルトンバニラジェラート添え750円
グラスワインは850円~。ボトルもいろいろ
厨房で奮闘する馬場シェフ
●ビストロ フェーヴ
住所:東京都千代田区神田神保町1-44-5 フィオーレ神保町1F
営業時間:12:00~13:00L.O、18:00~22:00L.O
定休日:日曜・祝日
TEL:03-5577-6040
雑誌『Safari』2月号 P182~183掲載
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photo : Jiro Otani text : Kei Sasaki