〈居酒屋 真さか〉の“から揚げ”
2012年までシェフを務めた〈サーモン&トラウト〉、監修を手掛けた〈オープンブック〉や〈マルタ〉で、新しい食のシーンを次々と生み出してきた森枝 幹シェフ。今、注目するのは“まさか”のスタイルでヴィーガン料理を提供する、あの店だ。
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- 注目シェフが教える感動の「名店メニュー」 vol.21
唐揚げ 南蛮タルタル(600円・税込み)
噛んだときの“じゅわっ”という食感は、鶏肉を使った唐揚げにしか思えないほど。南蛮タルタルソースは、かぼちゃを使用したマイルドでコクのある味。大ぶりのサイズが4個盛りで、お腹も満足。サワーレモンは650円
〈チョンプー〉森枝 幹シェフ
現地の食の今を伝える新感覚タイ料理店
森枝 幹シェフ監修の最新店は、タイ料理レストラン。「日本人がタイ料理に抱くステレオタイプを払拭したい」と、洗練されたモダンなスタイルに発展を続けるタイの食シーンの今を伝える。フレッシュハーブや発酵食品を効かせた軽やかかつ深い味は、ワインとも好相性。
住所:東京都渋谷区宇田川町15-1 渋谷パルコ4F 営業時間:11:30~22:00(ランチ15:00L.O、ディナー20:30L.O) 定休日:月曜 TEL:03-6455-0396
■森枝シェフ
楽しくてクールな美味しさ
コロナ禍以前は、年に1、2回必ず海外に足を運んでいたという森枝シェフ。「食習慣は、土地の歴史や伝統と切り離せない文化」という考えのもと、ファインダイニングからストリートフードまで、食べ歩きをするのが目的だ。そんな中、世界的なニーズの高まりを感じていたのが、ヴィーガンだという。
「だから〈真さか〉ができたときは、その手があったか、と。なにを食べても美味しいのですが、特に唐揚げはよくできていて、ソースも全制覇したくなります」
しつらえやメニュー構成など、フォーマットは完全に昭和の町中華。そのギャップこそが、楽しさのキモだとも話す。
「“意識高い系”なんて言葉の裏をかくクールさ。僕は肉も食べますが、環境のことを考えたら、肉の消費量を減らしたほうがいいのは事実。それを“しなきゃいけない”という文脈ではなく、知らずに食べて旨かったものが、実はヴィーガンだった、というのが楽しいですよね」
■滑川店長
食べてみて美味しいのが一番大事
メニューには中華のつまみのほか、ぬか漬けやマカロニサラダなど、居酒屋の定番もちらほら。「うちは酒場ですから。唐揚げと餃子、レモンサワーが名物です」と、滑川店長。特に唐揚げは、大根おろしに四川麻辣、黒酢と計10種ものソースを揃える。
「選ぶ楽しさ、好みの味を探す楽しさがある店にしたい。ヴィーガンかどうか以前に、美味しくて楽しい場所でないと」
確かに、さっぱりなのかピリ辛なのかで、味の印象が全く異なる。ソースをかけても重くならない衣は、タピオカ粉を使用しているのだとか。もちろん、肉ではなく大豆ミートを使うが「なにを使っているかより、“どう美味しいか”が大事。スパイスでの香りづけや、酒に合う味の塩梅などを工夫しています」
開業から間もなく1年。最近はふらりと立ち寄る若い世代も増えているそう。渋谷の真ん中から、懐かしくて新しい東京の食のカルチャーを発信している。
Check1 タピオカ粉でからりと
衣には小麦粉や片栗粉ではなく、タピオカ粉を使用。下味を付けて成形したベジミートの表面に軽くまぶして、高温の油で揚げることで、カラッとした食感に仕上げている
Check2 10種の選べるソース
上左から時計まわりにテリマヨ、油淋、中国黒酢、四川麻辣、エスニック(スイートチリ)、バンバンゴマソース、南蛮タルタル、葱塩レモン、ジンジャー、大根おろし。全10種が揃う
居酒屋 真さか[いざかや まさか]
店構えもメニューも、昔ながらの気楽な町中華そのものだが、料理は“まさか”のヴィーガン。2019年11月にリニューアルオープンした〈渋谷パルコ〉地下の飲食店街“カオスキッチン”で話題を呼んでいるのが〈居酒屋 真さか〉だ。ヴィーガンとは、動物性の食材をいっさい使用しない完全菜食のこと。10種から好みのソースが選べるから揚げや、鉄板で焼くパリパリの焼き餃子など、どれも肉を使っていないことに気づかず食べてしまいそうな味の完成度。ビールやレモンサワーとともに、気取らずカジュアルに楽しみたい。店内の壁には写真付きのメニューが貼られている
皮はパリッ、餡はジューシーな餃子。6個500円~
暖簾に蝋サンプルが並ぶメニューまで、町の中華屋そのもの
滑川店長。メニューの企画なども行う
●居酒屋 真さか
住所:東京都渋谷区宇田川町15-1 渋谷パルコB1
営業時間:11:30~15:00、17:00~21:00L.O
不定休(渋谷パルコに準ずる)
TEL:03-5422-3020
雑誌『Safari』12月号 P246~247掲載
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photo : Jiro Otani text : Kei Sasaki