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CULTURE カルチャー

2019.06.24


『ブルージャスミン』

旅行気分でテンションが上がりつつ、なんとなく家に帰ったようなリラックス感も味わえる。アメリカでそんな大都市といえば、サンフランシスコかもしれない。突然の人生のトラブルに見舞われた、映画『ブルージャスミン』の主人公は、サンフランシスコで新たなスタートを試みるのだが、この街には人種やセクシュアリティなど多様性を受け入れる気質もあって、映画からは居心地のよさが伝わってくる。観光ではなく、街にとけこむ感覚で訪れたい場所であると実感してしまう!

NYの元セレブが人生をリスタート
『ブルージャスミン』(2013年/アメリカ映画)



穏やかな気候と美しい街並み
サンフランシスコ( カリフォルニア州/アメリカ)





● 原題:Blue Jasmine
● 監督・脚本:ウディ・アレン
● 出演:ケイト・ブランシェット、サリー・ホーキンス、アレック・ボールドウィン、ピーター・サースガード、ルイスC.K.


Story
実業家の夫が詐欺罪で逮捕され、全財産を失ったジャスミンは、サンフランシスコで暮らす妹、ジンジャーの家に身を寄せる。ジャスミンを早く自立させようとするジンジャーだが、「インテリアデザイナーになる」という非現実的な夢を語るジャスミンに振り回されてしまう。やがてジャスミンはパーティで出会った外交官と交際を開始。過去を偽って婚約にこぎつけるが……。


NY派のウディ・アレンが撮るサンフランシスコ
ウディ・アレン監督といえば拠点とするNYの映画が多いが、近年はヨーロッパやアメリカの他の都市でも撮影。『ブルージャスミン』はNYも登場するが、サンフランシスコの場面は街の撮り方やキャラ設定もどこかゆったり。そのコントラストが絶妙。



登場人物


ジャネット・“ジャスミン”・フランシス(ケイト・ブランシェット)〈右〉
実業家の妻としてのセレブな生活から無一文へと転落。サンフランシスコの妹を頼るが、社会人としての経験もないので、第2の人生がなかなか見つからない。過去を嘘で塗り固めて、新たな恋人をゲットしようとするが……。

ジンジャー(サリー・ホーキンス)〈左〉
ジャスミンとは異母姉妹。宝くじで当てた大金を、ジャスミンの夫に使いこまれた過去アリ。離婚を経験し、新たなパートナーとの生活をはじめようとした矢先にジャスミンが転がりこみ、悩みの種は増えるばかり。





広大なアメリカを旅すると、ひとつの国なのに、これほど都市によって印象が異なるのか……と感じる人も多いはず。特に顕著なのは、東海岸と西海岸の違いだ。東の代表・ニューヨークと、西の代表・ロサンゼルスをイメージは、人が行き交う摩天楼と、限りなく広がる青空やビーチという両極端の世界なのは明らか。しかし西海岸でも、ニューヨーク的なアーバンな雰囲気を満喫できるのが、サンフランシスコだ。ロサンゼルスのようなクルマ社会ではなく、旅行者にとっても移動がラク。それでいて西海岸らしい開放的空気が漂い、シーフードがメインの“食文化”も充実。アメリカの中でも日本人には過ごしやすい都市だろう。

そんなサンフランシスコは、訪れた人をどう変えるのか? ウディ・アレン監督の『ブルージャスミン』の主人公は、人生で最悪の状態でサンフランシスコにやって来る複雑な状況。ニューヨークで最上級の生活をしていた彼女が一文無しとなり、プライドだけは保ちながら、再スタートをもくろむ、やや自虐的部分もあるストーリーだ。旅行者ではない主人公に合わせるように、サンフランシスコの名所であるゴールデンゲートブリッジや、有名な坂道を行くケーブルカーが、これみよがしに出てくるわけではない。要するに、生活している人目線の街が描かれるのだ。街のリアルな空気を伝えるのが、ウディ・アレン監督作品らしい。

主演のケイト・ブランシェットが本作でアカデミー賞主演女優賞に輝いただけあり、とことん嫌なキャラになぜか同情してしまうから不思議! そんな彼女のニューヨークでは持ちこたえられなかった心を、同じような大都市のサンフランシスコが少しだけ軌道修正。移民社会で多様性も受け入れるこの都市は、旅行で訪れた人にも、なにか新しいスタートのきっかけを与えてくれる土地柄なのだ。


Place01 ザ・ランプ

ジンジャーが新しい恋人をジャスミンに紹介するのは、かつての造船所のムードも残す地区にある、オールドファッションな造りのレストラン。シーフード中心のメニューで、地元の常連も多い。店の裏側で海に面したパティオの席は、対岸のオークランドの夜景に酔えるディナータイムがオススメ。近くにはノーベル賞受賞の山中教授がいた研究施設もある。

●The Ramp
住所:855 Terry A Francois Blvd,San Francisco, CA 94158


Place02 チャイナタウン

多くの都市にあるチャイナタウン。サンフランシスコは約8万の中国系の人が暮らしており、アメリカでも1、2の大きさを誇る。街の中心地であるユニオンスクエアのすぐ近くなので、なにかのついでに立ち寄れるし、リーズナブルで美味しいレストランもひしめき合う。ザ・ランプで飲んだ後のシーンで、ジャスミンやジンジャーがそぞろ歩く姿も楽しそう。

●Chinatown
住所:Bush St, Grant Ave,San Francisco, CA 94108

バーキンと〈シャネル〉のJKはNYセレブの証
金はなくてもプライドは保ちたい!? 最後の最後までジャスミンは〈シャネル〉のジャケットと〈エルメス〉のバーキンだけは手放さず、元セレブであることを“完全武装”。あまりにもわかりやすい。


Place03 ガスパーズ・ピザハウス&イタリアンレストラン

ジャスミンがジンジャーの子供たちと食事をして、思わず本音をもらすこのレストランは、その名のとおりピザが有名。北西部のメインストリート、ギアリー・ブールバード沿いに位置し、ローカルな雰囲気も漂う店。地元の新聞でベストピッツァ賞に選ばれたこともある、薄いクラストのサクサク生地のピザは、一度食べたら病みつきになるはず。外観のネオンも美しい。

●Gaspare’s Pizza House & Italian Restaurant
住所:2209, 5546 Geary Blvd, San Francisco, CA 94121


Place04 パラダイス・ケイ

1960年代に開発された地区で、サンフランシスコ湾を望む高台に豪華な家々が点在する。ゴールデンゲートブリッジが見える絶好スポットもあり、沿岸には住人がヨットを係留しているなど高級住宅地らしい趣。街の中心部とは違って観光客も少なく、住民にとってはあこがれの地区。ジャスミンがパーティで出会ったドワイトは、ここに新居を買ったばかり。案内された彼女は新たなセレブ生活に期待感アップ!?

●Paradise Cay
住所:79 St Thomas Way, Belvedere Tiburon, CA 94920


NYアッパーイーストサイドも登場

ジャスミンのNY生活も描かれるので、〈フェンディ〉などアッパーイーストサイドの最高級ブランドショップでの買い物シーンでは、NYセレブライフの一面を楽しめる。そのほかマンハッタンの名所では、川沿いのサウスストリートシーポートが改修前の懐かしい状態で登場している。

Information

雑誌『Safari』7月号 P214・215掲載

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