ハリウッド ×『愛とセックスとセレブリティ』
“映画”と“旅”がテーマのこの連載。その目的が究極で一致する場所といえば、もちろん“映画の都”。つまりハリウッドではないか。ロサンゼルス観光の目玉のひとつでもあるハリウッドなので、訪れた人も多いことだろう。そんなメジャーな観光スポットも、映画が新たな魅力を発見できることを教えてくれる。『愛とセックスとセレブリティ』はハリウッドとその周辺が、ドラマにぴったり溶け込んだ隠れた必見作だ。
- SERIES:
- 映画を巡る旅に出よう! vol.37
『愛とセックスとセレブリティ』(2009年/アメリカ映画)
ハリウッド(カリフォルニア州/アメリカ)
● 原題:Spread
● 監督:デヴィッド・マッケンジー
● 出演:アシュトン・カッチャー、アン・ヘッシュ、マルガリータ・レヴィエヴァ
Story
外見に自信をもち、愛のテクニックも完璧なニッキは、クラブで出会った金持ちの女性サマンサの家に転がり込み、彼女のあらゆる欲望に応えていた。そんなニッキが、ダイナーで働くヘザーに軽い気持ちで声をかけたことで、2人は急接近。ニッキの“浮気”にサマンサは怒り、彼も家を出ていくことになるが、家も金もないニッキとヘザーとの関係は二転三転する。
ジゴロとして生きる男
裕福な女性を見つけては、その相手の家で生活。食事を作ったり、一緒に買い物に行ったりしながら、ベッドでは最高の喜びを与える。女性のあらゆる欲望を満たすことを仕事にするには、もちろんニッキのような顔と肉体が必要。“ジゴロ”といえばカッコいいが“ヒモ”と呼んだほうがふさわしい!?
登場人物
右:顔だけが取り柄の青年
ニッキ(アシュトン・カッチャー)
まっとうな仕事に就く気はなく、外見を武器に女性に貢いでもらう生活を続けている。これまで多くの女性と関係をもってきたが、ダイナーで出会ったヘザーに心ときめき、真剣に恋におちる。
左:ウエイトレス
ヘザー(マルガリータ・レヴィエヴァ)
働いているダイナーでニッキに口説かれる。最初は彼に呆れていたが、どこか憎めず、ニッキとのデートも楽しむようになる。ニッキが予想しない行動もとり、なにか秘密を抱えているらしい。
今年も間もなく(日本時間、3月28日)、映画界最大の祭典、アカデミー賞授賞式が行われる。今年で94回めという長い歴史を誇るアカデミー賞だが、2002年の第75回から授賞式の会場になっているのが、ドルビー・シアター(昨年はコロナの影響で一時的にユニオン駅で開催)。このシアターが位置するのは、ロサンゼルスでも“映画のメッカ”として知られるハリウッド地区、その中央部だ。
LAへ観光で訪れた人の多くが足を運ぶのが、ハリウッド・ブールバード(大通り)。路上はスターたちの名前が星に刻まれ、“ウォーク・オブ・フェイム”と呼ばれ、マーベルのヒーローなどのコスプレや、俳優のそっくりさんが多数出没し、観光客と記念写真を撮る(もちろん有料ですよ!)など、映画マニアではなくてもテンションが上がる。LAのお土産を買いたければ、このあたりがベストスポットなのはいうまでもない。
それだけ賑やかで、絵になる地区なので、ハリウッド・ブールバードで撮影された映画も数多い。『プリティ・ウーマン』『ラッシュアワー』など懐かしい作品もあるが、最近の雰囲気がよくわかるのが『愛とセックスとセレブリティ』だ。この地区で金持ち女性の相手をして生活しているイケメン男が主人公の本作。
彼が歩くネオン煌めくストリートは、ハリウッドならではの華やかさだし、ヴィンテージものであふれる古着ショップや、意外にカジュアルな料金で宿泊できるモーテルなど、ハリウッド界隈の穴場スポットもロケ地として使われ、観光地の知られざるスポットを発見できるのだ。少し足を延ばしてウエスト・ハリウッドのおしゃれなカフェや、高級セレクトショップも出てくるので、旅の予定の参考にもなるはず。“ハリウッドなんてツアーで行くところ”と思ってる人も、この映画で純粋な観光客気分を高めてみては?
Place 01(家)
7869 Fareholm Drive
ニッキが住み着いたサマンサの豪邸は、ハリウッド・ブールバードにほど近い高台に位置し、ご覧のとおりLAを一望できる絶好のロケーション。プールからの眺めも最高で、インテリアもおしゃれ。現在の時価は日本円で7億くらいだとか。ハリウッドが舞台の映画には、こうした街を見下ろす邸宅がよく登場する。車で移動するチャンスがあれば、巡ってほしい。
住所:7869 Fareholm Dr., Los Angeles, CA 90046
Place 02(通り)
6757 Hollywood Blvd.
ニッキとサマンサが出会ったのはクラブ“Marbella”。2人はパーティ会場の裏手から外へ出ていきキスをする。このクラブは映画の後半にも登場。2022年の現在、この住所は、デジタルアートの“Media Art EXPO”の会場になっている。蝋人形で知られる“ハリウッド・ワックス・ミュージアム”に隣接しているので、ロケーションはわかりやすい。
住所:6757 Hollywood Blvd., Hollywood, CA 90028
ここはハリウッド・ブールバードとノース・ハイランド・アベニューの交差点、つまりハリウッドで最も賑わう場所。ギフトショップが並び、アカデミー賞会場であるドルビー・シアター、スターの手形・足形で有名なチャイニーズ・シアター、ハリウッド博物館などが目と鼻の先。
Place 03(ダイナー)
Fred62
ヘザーが働いているダイナーがここ。ハリウッドの中心地から3~4㎞東へ向かったロスフェリッツという地区にある。ストリートアートや美術学校も目につき、レストランやカフェも多いので、LAの中でも散策にぴったりな地域だ。メニューはハンバーガー、フレンチフライなどいかにもアメリカンなものから、ベジタリアン用のラーメン、テリヤキチキン、春巻きといったアジアンフュージョンまでバラエティ豊か。屋外のテーブルで食事をすればLA気分を満喫できる。店の看板がわかりづらいので、グリーンの建物を探してみて!
住所:1850 N Vermont Ave., Los Angeles, CA 90027
Place 04(ホテル)
センチュリー プラザ
ビバリーヒルズからサンタモニカへ向かう途中にある巨大ショッピングモールが“センチュリーシティ”。その横に立つこのホテルは1966年創業で、400の客室に85ものスイートルームも備える。『スピード』や『ダイ・ハード』などLAを舞台にした数々の大作にも登場した。映画業界のパーティが行われることも多いので、セレブと遭遇できる可能性もあったりして!? 映画ではニッキが“新たな金づる”の女性を探すために、このホテルのプールサイドをうろついている。
●The Century Plaza
住所:2025 Avenue of Stars, Los Angeles, CA 90067
本作のほかにも、キャメロン・ディアス共演の『ベガスの恋に勝つルール』など10年ちょっと前はラブコメで人気者だったアシュトン・カッチャー。かつて16歳上のデミ・ムーアと結婚し、本作のように年上キラーといわれた彼も44歳。現在はベンチャー企業を設立し、投資家として有名だ。
雑誌『Safari』4月号 P172~173掲載
“映画”の記事をもっと読みたい人はコチラ!